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”ツンデ・レデン・刹ッ”の第17幕

うんっ。小説書くのはやっぱり楽しいやっ♪
話が頭の中を高速で飛び交う~w

では、

「ツンデ・レデン・刹ッ」の第17幕 スタート!



第17幕  いろんな報告



「今日のニュースです…」

――――――モグモグモグ…

朝の音が聞こえてくるこの場所は、俺とレデンが一応同居という形で暮らしている「イイ・マンション」の第803号室。そしてその隣の部屋の第802号室には俺の妹の美鈴が一人暮らしをしている。
「美鈴さん、今日はご飯食べに来ないのかニャ?」
「寝坊だろ?」
いつも通りの朝の食卓。俺とレデンはお互いがテーブル越しに向かい合うといったポジションで各自朝食を取っている。
「はぁ~、朝はやっぱり味噌汁だな」
食欲をそそる味噌汁の香りと香ばしく焼けたシャケの蒸気が化学反応を起こし、疲れが残っていた俺の体を癒してくれる。
「しかし…、昨日はいろいろと大変だったぜ」
「そうかニャ? レデンはとってもとっても楽しかったニャっ♪」
「そうかよ…」
ズズズーと味噌汁を啜ると、昨日美鈴に殴られて少し切れた唇がちょっぴり染みた。
「全く…、あんなに殴ることはないだろうが…」
体中の所々が痛い。
「ご主人様が悪いのニャっ」
ご飯を食べ終えたレデンはそう言うと、最近やっと使えるようになった箸をお茶碗の上に置いて、それらを台所まで持っていった。
「はいはい…、食べ終わったんなら歯ぁ磨いて学校に行く準備でもしていろ」
「言われなくてもそうするニャッ」
不機嫌そうに洗面台に向かったレデンだったが、すぐに「ニャ~♪、ニャ~♪」という鼻唄が向こうから聞こえてきた。学校に行くのがよっぽど嬉しいのだろう。
「さて、俺も着替えるか」
慣れないスーツを着るのには一苦労だったが、それさえ済めば、後は歯を磨いて茶碗を洗うといういつもしてきたことをするだけだった。

「よし、じゃあ行くぜっ」
「了解ニャ~♪」
朝飯食った、歯ぁ磨いた、スーツもバシっと決めた、今日も俺様絶好調っ。
今日を乗り切る気力を十分に補充したぜっ。よしっ、行くぞ!

――――――ガチャ

少し重たい玄関のドアを開けると、そこには清々しい朝の風景が…、

――――――ダッ! 

…広がっていなかった。
「ぢょっと待っだッッ~!」

――――――ガシッ!

逃げ出そうとしていた俺の肩を掴んだのは、ご飯を口に含んだままの美鈴だった。
「おぅ、我が妹よ。どうした?」

――――――モグモグッゴクンッ!

髪がボサボサ状態の美鈴の口が高速に動くと、口の中に入っていたものがノドを通って消えた。
「今日こそは、ちゃんと説明してよねっ!」
「…何をだ? あと、眠そうな目で見つめるな。それにお前はまだパジャマ姿…」
「そんなのはどうだっていいのよッ! 大事なのは、なっ・んっ・でっ、バカ兄貴が教師になんてモノになったかって言う話よっ!」
ドコォッと美鈴が俺の肩をどつく。
「あぁ…、その事か」
朝からうるさいヤツだ…。俺はゆっくりと美鈴の方に振り返り、
「帰ってきてからなぁ~!」
そのままの勢いで高速回転!
美鈴の手を振り解いた。

「レデン、行くぞっ!」
「了解ニャっ、美鈴さん行ってきますニャ~♪」
突如吹く涼しい風。俺とレデンはその風を真正面で受けながら走り出した。
「あぁっ、逃げられた!」
パジャマ姿のままその場を動けずにいる美鈴。
ふふっ…、その状態では追っ手は来れまい。世間体を気にする悲しい乙女のサガだな。
「何で寝坊したのよ、私ぃ…」
背中の方向から美鈴の悲しそうな声がシクシクと聞こえてきた。
「美鈴さんも学校に来ればいいのにニャ…」
横を走るレデンがボソッと呟いた。
「恐ろしいことを言わないでくれ」
寒気がした。もしレデンの言うとおりになったら、俺の学園パラダイスが崩壊することは間違いないだろうな。
「早く行くぞ。遅刻しちまうぜ」
「ダッシュニャ~!」
二人は走り出した。朝の少し熱い日光を全身で浴びながら…。

―――――――――☆

ジョギング気味のスピードで走っていると、昨日よりも早い時間で萩原学園に着くことができた。食後の良い運動にもなったぜ。
校門の周りには、通学してきた生徒の話し声やら笑い声が聞こえてくる。こういう風景を見て、ずいぶん懐かしく思う俺がそこに居た。
「どうしたニャ?」
ぼ~っとしていたらしい。レデンが俺の顔を覗きこんでいた。
「いや、何でもない。ほらっ、早く行くぞ」
俺はレデンの手首を掴み、そのまま駆け足で校門を通り過ぎ…、
「あっ、新谷先生おはよ…」

――――――タッタッタッタッタッ…

…た。
「何でそのまま通り過ぎるんですかぁ~ッ!?」
何か変な声が聞こえたような気がするが、気にしないことにしよう。うむっ、それがいいな。
「和也さん、待ってくださいぃ~」
後ろからこっちに誰かが走ってくる音が聞こえてくる。はぁ~、しょうがないからその音が聞こえてくる方向に顔を向けたよ。
「おっ、時雨先生じゃないか。奇遇だな、こんな所で会うなんて」
そこには慌てた様子の時雨が息を乱して立ち尽くしていた。
「あぐぅ…、奇遇じゃないですよっ。和也さんたちを校門でちゃんと待っていたんですよっ」
時雨のメガネは少し曇っていた。そう言えば、今日の湿度は高いって、お天気お姉さんが言っていたような気がするな。
「泣いているのかニャ?」
レデンは手を後ろに組みながら、可愛いい仕草で時雨のメガネに付いた雫を観察していた。
「泣いてなんか…ないですよぅっ」
そう言うとプイっとそっぽ向いてしまった時雨。拗ねてしまったのだろうか?
「ほら…、カツオ節あげるニャ」
どこから取り出したのだろうか…。レデンは手に持ったカツオ節を時雨の口に押し込んでいた。
「ムグムグ…、あぐぅ…、レデンさん、ありがとうございます」
どっちが年上か分からない状況だった。

「…はやく行くぞ」
時間ギリギリだぜ。
「ひゃい…」
カツオ節を口に残したまま、時雨はこっちに視線を戻した。
「あっ、レデンさん。私たち先生は少し用事があるので先に教室に行っておいてください」
「了解ニャっ♪」

――――――ドシュンッ!

「速っ!?」
レデンはあっという間に見えなくなってしまった。
「レデンさん、よっぽど早く教室に行きたかったんですね」
「その様だな…」
決断が早かったレデンに少し寂しさを感じた。

「…で、用事って何なんだ?」
「はい。教頭先生からお話があるそうです」
「あぁ…、あのおじさんか」
「教頭先生って呼んで下さいっ」
「はいはい…、じゃあ時間もないし行くか」
「はいっ」
秋の雲が空を漂う下で、時雨がにっこりと笑った。

――――――――――☆

待合室が見える角を曲がると、そこには教頭が佇んでいた。教頭は俺たちの姿を確認すると、「おぉ…」と言いながらこっちに近づいてきた。そして、俺たちの前まで来ると、
「良かった…。本当に良かった…」
目に涙を浮かべながら、俺の手を両手でギュッと握った。
「どうかしたんですか?」
男に手を握られるのはかなりイヤだが、相手が教頭なので振りほどけないぜ…。
「いえ…、ありがとうございます…。二日続けて来てくださいまして、本当にありがとうございます…」
ポロポロと涙がこぼれ続けている。あのクラスの事で今までどれだけ苦労してきたのかが伝わってくるようだ。
「本当に…」
ラチが開かないので、とりあえず、
「教頭先生…。話ってこれだけですか?」
「あっ、いえ…」
俺の言葉を聞いて、ようやく手を離してくれた。
「すいません、つい感動してしまって我を忘れていましたよ。新谷先生たちに聞いてほしい話は違う内容です」
涙を左手で拭いながら右手で待合室のドア開けると、教頭は中に入ってくれと俺たちを手招いた。
「どうぞ座ってください」
昨日と同じソファー。
「話というのはですね…」
待合室に先生3人。俺と時雨と教頭がソファーに座っている。
教頭はソファーに深く腰掛けていたが、前にゆっくり体重を移動して膝に両肘を置くと、自分の顔の前で両手を合わせてから深くため息をついた。
「…来週から始まる学園祭の事なんです…」
まるでため息と一緒に声が聞こえてきたみたいだった。そうか…、学園祭か…。
「学園祭ですか…」
時雨は教頭が言ったことをそのまま口に出して、その言葉の意味を確かめるように目を閉じた。
「それは楽しみですねっ」
そして嬉しそうに手をぐっと握った。
「私、学園祭っていうモノに憧れていたんですよね~」
時雨は両手を胸の前で合わせながら、キラキラした目で上を向いて「エヘヘ~」とニヤけ始めた。全く…、いい気なもんだぜ。まぁ、しかし…。
「急な話ですけど、やりましょう」
その俺の言葉に「パァァッッ…」と顔色がすげぇ明るくなった時雨の笑顔が眩しい。
「楽しみですぅ~」
「あぁ、そうだな…」
学園祭か…、懐かしいぜ。
ふっ、やるには徹底的にやるのが俺様のポリシーだからな。何をやろうかな。む~、悩むぜっ。

「あのぉ…、すみませんが…」
思いを募らせている俺たちをよそに、深くため息をする教頭。
「えっ? 何ですか?」
時雨が妄想の旅から帰ってきて教頭に質問していた。
「実は…、学園祭にはモウマンタイ組を参加させてほしくないという話なのです」

…えっ?

「えぇぇッッ~~~!?」
時雨がびっくりして飛び上がった。
「どっどっ、どうしてですかっ!?」
「うぐぐぅ…、苦しいです時雨先生」
いつのまにか時雨が教頭の胸元を引っ張っていた。
「あぁっ、すいませんっ!」
急いで手を離した時雨は、ソファーに座りなおしたが、すぐにまた立ち上がった。
「どうして参加したらダメなんですかッ!?」
今度は普通に聞いていた。落ち着いてくれて何よりだ。
「それは…、モウマンタイ組が学園祭に参加すると、毎年必ず何かの事件が起こってしまうからです…」
「なるほどっ!」
俺は頷いてしまった。何故なら、妙に説得力がある回答だったからだ。
「私は納得できませんッ!」
時雨1人だけが不機嫌街道一直線だった。
「どうしてそう決め付けちゃうんですかっ。あの子達はとっても良い子ですよっ。あの子たちがそんな事件を起こすとは私には到底思えませんッ。そうですよね、新谷先生っ?」
「へっ?」
俺に話を振るなよな。まぁ、どう考えても100%事件は起こると思うが、そんなことを言ったら時雨に射殺されそうな雰囲気だしな…。しょうがない。
「あぁ…、俺もそう思うよ」
懐に手を忍ばせていた時雨はすぐにその手を取り出して、
「わぁ~っ、良かったです!」
パチパチパチっと嬉しそうに手を叩いていた。しかし、
「えっ…、新谷先生も同意してくれませんか…」
もともと覇気が無い教頭の顔色がさらに青くなっていた。悪いとは思ったが、
「はい、学園祭にはあいつ等も参加するべきだと俺も思いますから。それが、あいつ等のためにもなると思いますよ」
と、自分の心内を伝えた。
「そうですか…」
教頭は俺たちの説得を諦めたのだろう。ソファーに深く座りなおして、上を向きながら大きな大きなため息をついた。だがすぐに立ち上がると、窓の側まで歩いて行き、窓の外を遠い目で見つめながら、
「新谷先生や時雨先生がそう言うのなら、私はもう何も言いません。それが正しいのでしょう…。全てお任せします」
と呟いた。
「大丈夫です。任せてくださいっ」
自信満々で言った時雨だったが、俺はそんな自信満々のお前を信頼できない。
「逃げているだけじゃあ、俺は何も解決しないと思っていますから」
そう…、俺は決めたんだ。もう逃げないと。
「はい…、私もそう思います。モウマンタイ組のこと…宜しくお願いします…」
待合室から出た俺たちを見送る教頭は、それはそれは悲しさに満ちていた風貌をしていたとさ…。

――――――――――☆

「学園祭楽しみですねっ」
モウマンタイ組に向かう途中、時雨はこのセリフを何度も何度も繰り返していた。俺はそのたびに「あぁ…」と相槌を打っていた。普通に疲れた。
「あっ、そういえば…」
モウマンタイ組がある旧校舎に一歩踏み出そうとしたとき、時雨が違う内容の話を切り出してきた。
「昨日の家庭訪問どうでしたか?」
「ぐわぁっ」
嫌な思い出が一瞬で俺の脳内を横切った。
「どうかしましたかっ? 変な声が聞こえたような気がしましたけど」
「いや…、なんでもない」
昨日のことを思い出しただけで背中が急に痛くなってきたぜ。
「昨日はだな…、その…、いろいろと楽しかった…」
「何がですか?」
「いろいろだよ」
「いろいろですか…」
ジロジロと俺を凝視してくる。目障りだッ!
「時雨はどうだったんだよ?」
「…どうとは?」
「昨日、俺たちと別行動してこの学園についていろいろ調べていたんだろ?」
横を歩いていた時雨の足が止まった。
「昨日はモウマンタイ組について調べました…」
気のせいだろうか?
時雨の口調が僅かながら重いような気がする。
「…それで何か分かったのか?」
「いえ、何も…」
「何だよ。何も分からなかったのかよ」
とんだ期待はずれだったな。

「本当に何も分からなかったんです…」
「…はっ?」
「分からなかったんですよッ!!」
大きな…、大きな声だった。声が校舎中に響いた。時雨のこんな大きな声を初めて聞いたような気がする。
「おいおい、そんなに大きな声を出さなくても…」
「あぐぅ…、すいません…」
下を向いてしまう時雨。
「どうしたんだ一体?」
いつもの感じと違うぞ、お前。
「昨日、私はモウマンタイ組について調べていたんです」
「それはさっき聞いた」
「今から続きを言うんですっ」
「はいはい…、で。何が分かったんだ?」
「だから何も分からなかったんですよッ!」
「さっきからお前は一体なにが言いたいんだよッ!」
やばい…、マジでキレそうだ…。時雨は何が言いたいんだ?
「お前いい加減にしないと…」
一発殴ってやろうかなと、拳に息を吹きかけた。それと同時に、時雨も息を大きく吸い込み、目に涙を溜めながらこう言った。

――――――「彼女たちの住所も、どんな家族構成なのかも、身長も体重も、何もかもが分からなかったんですよ…」

今度は小さく…小さく呟いた。まるで、もうすでに“モウマンタイ”のプレートが見える教室内にいるあいつらに聞こえないようにするためのように。
「え…」
言葉が出なかった。どういう意味だ?
「私は昨日、最初はこの学園について調べようとしました。だけど、調べていくうちに奇妙な点に気が付いたんです」
時雨は近くの壁に体を押しかけて、両手を組みながら話を始めた。
「この学園に存在するはずの“モウマンタイ”組に関する資料がどこにも無いという事に」
「…つまり、学園がモウマンタイ組の存在を隠しているという事だな?」
「はい、その通りです。どう考えても怪しいです」
メガネがキラリと光る。
「他のクラスの資料は簡単に見つかりました。でも、モウマンタイ組の資料だけはどこを探しても見つかりませんでした。どう考えても、学園側の意図で資料を隠しているとしか考えられません」
「時雨は…、この事に“萌え忍”が関与していると思うか?」
「はい、間違いなく」
自信に満ちた表情だった。それを見て、俺もそう思うことにした。

「だったら、モウマンタイ組を調べていけば、自ずと答えは見つかるはずだな」
「はいっ♪」
俺と時雨の目的が決定した瞬間だった。モウマンタイ組を調べていけば、自然に萌え忍に関する何かを知ることができる。それまでは、俺たちは立ち止まることはできない。立ち止まってはいけない。
「よしっ、じゃあ急ぐぞ。完璧に遅刻だ」
「あぐぅ…、本当ですぅ」
授業開始時間を20分もオーバーしていた。急ぎすぎて、昨日みたいに床を踏み抜かないように気をつけながら、何故か新品のドアが設置されていた教室の扉を開けた。そして、

――――――「きりつ」

昨日と同じような号令が聞こえてきた。この声の主は、このクラスの委員長である“シュパプール・テリャ・マドフェフカ”という意味もなく長い名前の女の子。昨日は気づかなかったが、真面目そうでしっかりした子に見える。

――――――「れい」

35の頭が一斉にこっちを向いた。

――――――「ちゃくせき」

ガタガタガタァ~と着席する音が、昨日よりも少し綺麗な教室に轟いた。
「悪い悪い、急な話があってな」
急いで教卓に立った俺は教室を見渡してみた。
「んっ、全員いるな。よしっ、話があるからちょっと聞いてくれ」
学園祭のことについて話そうとした時、
「おっ、何だ? さっき響いた時雨先生の叫び声に関してか? もう破局かよ、早いね~」
九尾 紺の声が耳に入った。教室の窓際に視線を移すと、そこには紺とレデンがニヤニヤと子悪魔的な笑みを浮かべてこっちを見ていた。
「あんまり女の泣かすなよ~♪」
さらに聞こえてきた。
「そんなことないですよっ! 決してそんなことではないですよッ!」
ブンブンッ! と大げさに手を振って否定している時雨だったが、顔を真っ赤にして慌てふためく様に言ったら、コイツの思う壺だっていう事が何故分からない?
「はははっ、照れんなってっ」
「照れてないですよぉ~」
ゆでタコ状態の時雨を無理やりパイプ椅子に座らせ、俺は呼吸を整えてから再び教卓に立った。

「とりあえず、皆おはよう」

――――――「…おはようございます」

…俺は正直驚いた。昨日は誰も答えてくれなかったが、今日は少し違った。ほんの少しだったが、挨拶を返してくれる女子がいた。その事が普通に嬉しかった。
「あぁ…、おはよう…」
外見上は平静を装っていたが、今すぐにでも服を脱ぎだして、裸祭りに参加したい衝動を心の中で抑えることに必死だったぜ。
「え~、さっきも言ったとおり、皆に話があるんだ」
先ほどはチョッカイを言ってきた紺も、今は黙って聞いている。
「実は今度、学園祭があるんだが…」
「知っていますわ」
その声の方向。教室の前のドアから一番近い席に座っている少女。
長い金髪に透き通るような白い肌。真面目で御しとやかな風貌を持つその子は、先ほど号令をかけてくれたこのクラスの学級委員をしている “マドフェフカ”だった。
「でも…」
まだ話は終わらないようだ。
「私たちは…、参加できないのでしょう?」
そう呟いた後、マドフェフカは下を向いて悔しそうに唇を噛んでいた。だから、

「いや、参加できるぞ」
「…えっ?」
俺の言葉に目をパチクリさせて、口を情けなく開けたマドフェフカを見て、俺はなんて滑稽な驚き方をするんだよ、と少し笑ってしまった。
「…本当ですか…?」
「あぁ…、参加するに決まっているじゃないか。だって、お前たちは学生なんだからなっ。当然の義務だ」
「そうですよっ。当たり前のことですよっ」
時雨がマドフェフカの手を握って話しかけていた。
「皆さん、ちょっとっ…」
マドフェフカの声が開始の合図だった。

――――――ザワザワザワ…

急に忙しなくなったクラスの会話。皆が皆、それぞれ言いたいことを話し合っているようだ。
「あぁ~、みんな悪いがまだ俺の話には続きがあるんだ」

――――――…ピタッ

一瞬で静かになった。何を言われるか気になるのだろう…、興味津々のオーラが伝わってくるようだ。
「おっほん…、実はだな、学園祭で一体何をするか、さっき俺的に少し考えてみたんだ」
「何ニャっ? 何ニャっ?」
レデンの耳がコレまで見たことが無いようなスピードでピョコピョコ動いている。
「へぇ~、新谷先生はちゃんと考えていたんですねぇ~…」
マドフェフカ達と一緒に学園祭について話し合っていた時雨が、少しだけ尊敬の念を含んだコメントを返してくれた。
「あぁ…、多分…、いや絶対に、コレをやることによってお前たちは凄い力を発揮すると俺は確信している」

――――――「お~」(一同)

期待と関心が入り交ざった声が皆から聞こえてきた。今このとき、このクラスは一つになれたんだなと思ったよ。
「何ニャッ!? 何ニャッ!?」
超高速回転するレデンのシッポ。そのまま飛んでいってしまいそうな勢いだぜ。
「それはだなレデン…」
「うんうん…」

――――――ゴクリ…

ノドを唾が通る音が所々から聞こえてきたようだ。
よしっ、期待に応えてやるよッ! さぁ、言うんだ俺様ッ!
「それはだな…」
コブシを高々と上に掲げ、その神がかり的な力を持つ神秘の言葉を俺は力強く宣言した。

――――――「メイド喫茶だッッ!!!」

ん~っ決まったッ。これ以上ないグッドアイディアだぜッ。ひゃほ~いっ!
あれっ、みんなの様子がおかしいのは俺様の気のせいか?
プルプルと振動するこいつらのせいで、教室が震度5強の強さで揺れているじゃないかっ。いい迷惑だぜっ。
「おいおい…、皆どうし…」

――――――ガタンッ

「んっ?」
荒々しく椅子から立ち上がったのは、このクラスの学級委員であるマドフェフカだった。
「皆さン…」
目が三日月みたいに鋭くなったマドフェフカは、ユラリとこっちに向きなおしたと思ったら、
「やっちゃっいましょウ」

悪魔の号令を発した。はぁ…、コレが原因で、

――――――ガタンッガタンッガタガタンッ!

殺気だっている皆が立ち上がってしまったではないかッ!
しかし、そこは交渉人“和也ネゴシエーター”。持ち前の話術と今まで乗り越えてきた経験で、こんな危機なんて軽やかに回避してやるぜっ。

「まぁ…、みんな落ち着けよ。話し合おう。だってさ、良く考えてみようぜ? お前たちすげぇよ。うん、本当にそう思うよ。ぶっちゃけ…、みんなカワイイぜ? だからさっ、こんなところでこんな逸材が埋もれるなんて耐えられないんだよ。分かる? 分かるよな? な? だからな、みんなでやろう。メイド喫…」

――――――ポキポキボキ…

「言いたいことは、それだけニャ?」
至る所でコブシの骨を鳴らす音や「クククッ」という笑い声が聞こえてくる。死への音かな?
ふっ…、俺の経験が告げているぜ。
「(逃げろ)」
とな。
はぁ…、どうやら今回の交渉は失敗のようだぜっ。だから俺は早くこの場所から逃げようとしたぜっ。だけどな、周りを囲まれてしまったので逃げようが無いんだな。はっはっはっ…。笑うしかないぜ。はっはっはっ、無念だ…。

――――――ズチャッ、ズコズコズコッ、ブシュァッ、ザシュザシュシュッ、ドスッボコォッ、ドゴォォォッッ~~~ンッッ!!!

学園の隅っこにひっそりと佇んでいる旧校舎には、いつまでもいつまでも不協和音が鳴り響いていたとさ…。



(次回予告)

和也がどうにかしてモウマンタイ組に「メイド喫茶」をやらせようと策を練る第18幕ですっ♪

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この記事に対するコメント

>――――――「メイド喫茶だッッ!!!」

和也の迷言に全米が泣いたw

【2006/05/17 20:57】URL | きつねこ #-[ 編集]

和也ほどの「漢」は滅多にいませんよっw

【2006/05/17 23:23】URL | シミコン #-[ 編集]

萌忍のことすっかり忘れてたっwヽ(°▽、°)ノ
そーいえばそんな理由で学園に入り込んだんだったなぁ~。。。
前回の印象が強すぎて・・・いったい学園祭ではどんな事態が起こってしまうのやら。
和也の漢っぷりに期待しませうっ!

【2006/05/18 01:09】URL | ふぉくしーすらい #GWMyNl/.[ 編集]

シナリオは大事ですよぅ!www

さて、次回は和也ネゴシエーターが本領発揮しますっ♪

【2006/05/18 07:13】URL | シミコン #-[ 編集]

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