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”自分に厳しく、地球に優しく” 第14幕

第14幕  学校って、いいところ♪



「えっ?」
シュポ~ンと飛び出たその先は、
「プ~ルゥ~~~!?」

――――――ガシッ

何とか踏み止まりました。危なかったです。もうちょっとでプールの飛び込み台に、足を引っ掛けて、ヘドロみたいな緑色のプールにダイブしちゃうところでしたっ!
「全く…、シパンめ! 確かに5月のこの時期には絶対に見つからない場所だけどさっ!」
そこは学校にある屋外のプール。そこは絶対に見つからない場所で…。

――――――「新谷君…?」

…この声は!?

「沢田さんッ!!?」
そんな! まさか! そんなわけがあり得るはずが無い! これは夢だ! 妄想だ!!
「こんなところで何をしているのですか?」
しかし、僕の目の前にいる沢田さんは現実で…。
「沢田さんこそ、こんなところで何をしているの?」
「私は水泳部ですから。ちょっとプールの様子を見に…」

そうだった! 可憐な沢田さんは水泳部に所属しているんだった! 
こんな時期にプールの様子を見に来るなんて、あなたは水泳部員の鏡だっ!
「そんなことよりも、なんで昨日はあのまま帰ってこなかったのですか? 心配したのですよ?」
ぐわぁ~、やめてくれ~。僕の心を揺らさないでくれ! 現在、震度6強です!
「それはね…」
僕は平静を装い、普段とは変わらない口調で話そうと努力しました。
「えっとねっ…、何であれから帰ってこられなかったのはね、…そう! 病院!!」
「病院?」
僕は必死で考えます!
「そう! 病院に立花さんが入っていったんだよっ! で、僕はその後を追って、病院の中まで入っていったんだよ」
「それで…、どうしたのですか?」
沢田さんはじわりじわりと僕に近づいてきます。
「それで、一緒にエレベータに乗ると尾行がバレると思ったから、立花さんがエレベータに乗った後に、立花さんが何階で降りたかを確認して、そしてその階に行ったんだよ!」
「新谷君にしては、なかなか思慮深いですね」
「ほめられたぁ!」
「早く続きを…」
「うん! でねっ! 僕は階段でその階まで行ってね。見たんだ…」
「何をですか?」

さて、何て言ったほうがいいでしょうか?
選択肢は3つです!
1:立花さんが患者を「キャハハハッッ!」と言いながら皆殺ししていた。
2:立花さんは実は看護士。緊急の事態で病院に行かなければならなかった。
3:立花さんのお父様は脳がイカれてしまうご病気で、お見舞いをなされていた。

まず、1について考えてみることにします!
立花さんが患者を皆殺ししていた…。これはある意味では、真実! 立花さんが昨日、大量虐殺をしたことは、紛れも無い真実! 僕には真実を報道する義務があります! しかしぃ! そんな事を沢田さんが知る必要はありません! 時に情報とは、それが真実でも人に信じてもらえない時があります。そんな真実を人々が受け入れるには、少し時間が必要なのです! よって、1は却下と…。

次に、2について考えてみます!
立花さんは実は看護士。…おぉ、コレならイケルのでは? 一般の中学生が看護士だったなんて、ざらにあることですよね? そうですよね? 何とか言えよッ!!
…すいません、取り乱してしまって…。最近、疲れているんですよ、僕は。   
ヒッ、ヒッ、フー! ヒッ、ヒッ、フー! 深呼吸、深呼吸!
よし! よって、2は却下と…。

…あぁッもう! 3でいいや!
そして、僕は考えるのがだるくなったので、3を選びました。
「どうしたのですか? ボケ~っとして」
「えッ? いや、思い出していたんだよ! 実は、立花さんにはね。あまり大きな声で言えないけど…」
「はい…」
「病気で入院しているお父さんがいるんだよ…」
こんな感じだったら、しんみりモードに突入できるでしょうか?
「まぁ…、お気の毒に…」
よし! このまま押し切ります!
「うん、可哀想だよねっ! 昨日は急にお父さんの容態が悪化したらしく、それで立花さんは急いで病院まで行ったんだよ」
「それで…」
沢田さんの表情がだんだん曇っていきます。
「はぁ~…、分かりました。私は立花さんを誤解していたようです。あとで謝らなければ!」

そして、沢田さんは立ち去ろうとしました。と思ったら、
「あと一つ質問したいのですが」
こっちに振り返って、僕を見ました。
「なに?」
何を聞かれるのか、ドキドキですね!
「先ほど…」
「うん」
「立花さんとすれ違ったのですが…」
「えッ!?」
嫌な予感がします。
「さっきまで立花さんはここにいたのですか?」
すかさず、
「うん。さっきまで立花さんと一緒にいろいろ話しをしながら学校案内をしていたんだよっ! まだ立花さんはまだこの学校に詳しくなかったみたいだからねっ」

…完璧だぁ! 自分が恐ろしい。

「そうだったのですか…。分かりました。では、私たちもそろそろ教室に行きましょうか。授業に遅れてしまいます」
「うんっ」
そして、憧れの沢田さんと一緒に2年4組の教室へと歩いていくことが出来て、僕は大満足でした。途中、沢田さんと一緒に歩いていた僕に突き刺さるような男子の視線なんて気にもしませんでしたよっ。

沢田さんは教室に着くと、真っ先に、あるクラスメートの席へと歩いていきました。
「立花さん…」
「はい?」
本を読んでいた立花さんは顔を上げ、沢田さんの方を見ました。僕は教室の入り口のドアに隠れながら、じっと様子を伺います!
「あの…、私、貴女の事を誤解していました。申し訳ございません…」
頭を下げる沢田さん。
「はぁ…」
さすがの立花さんも戸惑っています。
「でも、どんな事情がある以上、学校を早退する時は学級委員である私に一度声をかけてくれませんか?」
あぁっ、ここからじゃ沢田さんの顔が見えない! くそったれ!!
「…分かったわ。こちらこそ迷惑をかけたみたいでごめんなさいね」
立花さんは一応事情をつかめたのか、素直に謝っている様です。
「ありがとうございます」
立花さんの席から、自分の席に行こうとする沢田さん。
「あ、あと…」
沢田さんはまだ何かを言いたそうです。
「早く…、お父さんの病気が治るといいですね」
「はぁ…」
そして、沢田さんは自分の席へと行き、座りました。

「よかった、よかった」と、僕も自分の席に向かおうとしましたが、どこからか強力なプレッシャーを感じます! 
「カハッ…!」
それは立花さんから照射されていました。「あんた、なに言ったのよッ!?」という立花さんの怒りのメッセージが僕を包み込みます。僕は必死に“和也スマイル”で対抗しますが、立花さんの怒りを余計に買うだけでした。
必死に自分の席へと歩き出しましたが、僕の周りだけ他の場所とは重力が10倍違ったので、嫌な汗をかきながら何とか目的地に到着しました。

「はふぅ~…」
朝っぱらからいろいろとあり過ぎて、もう僕は疲れました。少し眠くなってしまったので机にゴローンと寝そべってしまいました。
「お疲れだな、どうした新谷?」
横の席には、一応友達の長谷川が。
「もう疲れたぁ~」
顔を長谷川の方に向けて、僕は愚痴りました。
「全く…、朝からナニをしていたんだ?」
長谷川がニヤニヤしています! 殺すぞ、ボケェッ!!
「お前には僕の苦しみは分からないよ…」
僕は顔を窓側に向け、春の日差しが当たる中、ゆっくりと眠りの海へと落ちていきました。

――――――ガンッ

「いっ…!?」
痛みで目覚める僕。
「なに?」
顔を上げ、自分が今置かれている状況を一生懸命に考えました。しかし、目覚めたばかりでまだ頭が回りません。僕の周りでは「くす、くす…」と笑い声が聞こえ、僕の右斜め前には、木村先生が数学の教科書を右手に持ったまま、何だか怒ったような顔をして突っ立っています。
「新谷」
「はいぃ…?」
その僕の反応に、周りのクラスメートからは「ププッ」とか「アハハッ」と、さっきよりも1ランク上の笑い声が聞こえてきました。
「お疲れのところ悪いんだが、教科書の27ページの問1をやってもらえると先生は助かっちゃうんだけどな~」
木村先生の口調は穏やかだったけど、顔は怖かったです。
「えッ? 分かりました…」
僕はやっと状況を掴めました。いわゆる、「居眠りしていたら、先生に教科書の硬い部分で叩かれて、突然の痛みに慌てて起きると、先生にこの問題をやってみろっと言われちゃったよっ」というベタな現象が発生してしまったということですね!? 
僕は机の中から数学の教科書を取り出し、立ち上がって黒板まで歩いていきました。ご親切なことに、問題はすでに黒板に書かれていました。あとは、僕が答えを書けば完成です。

「えぇっとぉ…」
僕はクールな眼差しで教科書を見ながら、かっこよくチョークを持ちました。そして、教科書を見ながら問題を解こうとしましたが…、どうしましょうか…、全く分かりませんよ!! 何だよこの“連立方程式”って! 連立するなよ! 分かんなくなっちゃったでしょうが!
チョークを構えたままの状態で固まっている僕の後ろからは、また「クスクス…」と嫌な笑い声が聞こえてきました。
「どうした新谷? できないのか?」
木村先生が何故か僕の席に座っています。
「もしできなかったら…」

…もしできなかったらッ!?

「俺は彼女にフラれると思えッ!!!」
「えぇっ!?」
「分かったな!」
「はいぃ!」
教室のみんなが「どっ」と笑いの渦を発生させました。

「新谷ッ、先生の貞操はお前の手にかかっているぞッ!(長谷川)」、「頼む! 俺を助けてくれぇ!(木村先生)」、「新谷君、任せましたよ(沢田さん)」
と、クラスメートからの声援を受ける僕。先生は何故か涙ぐんでいます。
「そんなぁ…」
どうしましょう。プレッシャーがかかリまくりですよ。僕が問題を解けなくても、先生が彼女にフラれることは全く関係が無いと思うのですがッ! 
とにかく、この目の前にある問題を解かないことには、僕の安泰した学生ライフを送るという理想の実現が厳しくなるでしょう! 
僕は黒板に向かい直し、再度チャレンジしてみます。でも…、分っかんないですよう! 
どうしましょかぁッッ~~~!
突如、

――――――ピキーン!

「ッ!? ぎゃっぴぃィッッ~~!!」
「どうした、新谷ッ!?」(木村先生)
何でしょうか!? 突然、僕の頭にものすごい電流が流れたような、そんな刺激が脳髄を駆け巡りました! 
その痺れるような刺激は、僕の後頭部の方から発生したような感じがしたので、後ろに急いで振り返りました。僕の目に映ったもの…、それは、教室の後ろの席で「全く、もう…」って顔をしながら、僕に向かって何故か本を開いている立花さんの姿でした。僕が“立花さんは何故そんな顔をしているの?”と考えるよりも速く、僕の脳に何かがなだれ込んできました! 

それは…、知識! ありとあらゆる数字が次々と僕のビジョンに浮かんでいきます! 
定義、定数、概念、公式…、それらの知識がどんどん僕の中に!
体に十分それらが溜まった時! 僕の体が勝手に動きだしました!
「うおおおぉぉぉッ~~~!」
みんなが僕の奇声に驚いている中、僕はチョークが粉砕するぐらいのスピードで黒板に問題の答えをあっという間に書き上げてしまいました! 何だかとっても良い気持ちです。
 
「先生…、どうですか!?」
僕の言葉にはっとした木村先生は、僕の後ろに書かれているその白い文字をじっと見つめ、
「…合格だ、新谷」
右手を突き出し、親指をグッと天井へ伸ばして“OK”のポーズを取る木村先生。
その木村先生の仕草の後には、教室中に先ほどとは意味が違う「どっ」と歓声が沸きあがりました。

「すごいじゃないか! 見直したぞ、新谷!!(長谷川)」,「これで俺はフラれないぞ! ヤホ~イ!!(木村先生)」、「お見事でしたよ、新谷君(沢田さん)」
どうしましょう。僕があっという間にクラスのヒーローになっちゃいましたよ! 沢田さんからもお褒めの言葉をいただいて、僕は感激です!
「よし、席に戻っていいぞ」
「はい!」
気分は有頂天です。その後の授業も気分はルンルンで過ごしました。こんなにも授業が楽しいと思ったことは、今までの僕の人生の中で初めてのことです。しかし、さっきの立花さんの行動は一体なんだったのでしょうか? まぁ、いいや!

そして、今は昼休み。
「なぁ、新谷…」
「んっ、なに?」
購買という戦場から戦利品(明太子入りおむすび&カレーパン)を勝ち得て、今は教室へ長谷川と一緒に帰っている場面です。
「聞きたいことがあるんだけど、…モグモグ…」
長谷川は教室まで空腹に耐えられなかったのか、モグモグと焼きそばパンを食べています。
「教室に戻ってから聞くよ」
歩きながら、食べるなんて…、長谷川はどんなしつけを受けてきたのでしょうか? 親の顔を見てみたいものです。

「いや…、教室でこの質問をすると新谷が困ると思うぞ」
「なんで?」
長谷川はパンを食べることを止めて、ジッと僕を見ました。気色悪くて身震いしました。
「今日の朝のことなんだけど…」
「ッ? 今日の朝が…、どうかした?」
嫌な予感がします。
「新谷さぁ…、今日の朝、何で立花さんと一緒に体育館にいたんだ?」
ぐはぁっ! やっぱりか! 嫌な予感が当たりました。コイツのことだから、絶対にこの事を聞いてくると思っていましたが、実際に聞かれるとどう対処していいか困ります。もし、聞かれたら長谷川を殺そうと考えていましたが、ここでは無理です。人目に付きます。

「分かった、言うよ。でも、ここでは人目に付くから屋上で話すよ」
そこがお前の死に場所だ…。ヒィ~ス、ヒィ~ス…!
「屋上? ちょっと寒いけど、まぁいっか」
僕は屋上へ向かう階段へ歩き出し、長谷川は何も疑わずに僕の後に着いてきました。階段を登りながら、僕は長谷川をどんなツボで殺すか考えていました。一番苦痛を与えられるツボとか、一番死に方が派手なツボとか…。
「っと、もう屋上か」
そんなことを考えながら屋上へのドアに着いてしまいました。
「この学校って、屋上が禁止されていないからいいよなぁ~」
長谷川は僕を追い越すと、ドアに手をかけました。

――――――ギィ…

長谷川にとって、死への扉が開かれました。長谷川は僕より先に屋上に出て、周りに誰かいないか、キョロキョロしています。
「誰もいないみたいだな~」
長谷川は僕に背を向けたまま、独り言のように言いました。
「そうか…、それは好都合だね…」
僕は手に力を込めて、無防備な長谷川に飛びかかりました!
「えっ?」
後ろを振り返る長谷川…。しかし! 遅い!! 死ねぇぇええぇぇッッ~~~!!!
「立花さん…?」
「えっ?」
キキィ~!!っと急停止する僕。
「新谷…、その手は何だ?」
「なんでもないよ!」
僕は人差し指を立てていた手を、急いで後ろに引っ込めました。しかし今は、長谷川のさっきの発言の方が気になります!
「何が立花さんなんだよ…」
長谷川が見ている方向を見るために、体を後ろに回転させました。そして、
「……立花さん……」
立花さんの姿を見ました…。何でこんなところにィッ!?

「あらっ、こんにちは」
立花さんは僕達が出てきたドアの上の、屋上の展望台みたいな場所で、足を空中にブラ~ンとする姿勢で座りながら、お弁当を食べていました。
「新谷さんたちも、ここで昼ごはんを食べるのですか?」
ニコニコしながら、僕たちに話しかける立花さん。しかし、この口調は絶対にネコを被っていますね!
「いや~、こんなところで立花さんとお食事をご一緒できるなんて光栄~」
いつの間にか長谷川は、立花さんのいる場所まで移動していました!
「はやっ! 僕も急がないと!」
上へと上がるハシゴを注意しながら登ると、長谷川は図々しく立花さんの横に座ってパンを食べていました! あぁっ…、蹴り落としたい!

「立花さん、こんにちは」
僕は長谷川とは反対方向の立花さんの横に座ろうとしましたが、そこには茶色のぬいぐるみが置いてあったので、危険を回避するために、しょうがなく長谷川の隣に座りました。
「こんにちは、新谷さん」
立花さんに“新谷さん”と言われると、何か気持ち悪いです。だから、僕は危険も承知のうえ、立花さんに言いました。
「立花さん。僕の事は“和也”って言ってほしいな。そっちの方が、気が楽でいいから」
「えっ」
立花さんはちょっと顔を赤くして…、
「じゃあ…、和也君…、こんにちは」
何でそんなに恥ずかしそうに言うんでしょうか? 今までずっと僕の事を“和也君”って呼んでいたのに。
「じゃあ! 俺のことは“悠太君”って呼んでくれよぉ!!」
ちょっと興奮気味の長谷川。
「いえ…、私は長谷川さんって呼んだほうが…、好きですね」
「えぇっ!」
その言葉に何故か急に立ち上がる長谷川。
「長谷川…、どうかしたか?」
僕の声が聞こえていないのか、隅っこのほうに歩いて行く長谷川。
「お~い、落ちても知らないからな~」
スゥ~っと長谷川が息を吸い込んだ音が聞こえました。そして、
「女の子に初めて“好き”って言われたぁぁぁ~~!!!」
その悲しい叫びは、どこまでも響いていきました…。
「はぁ~、すっきりした!」
また長谷川は立花さんの横に座りました。それにしても長谷川…、お前は今まで一度も女の子に“好き”と言われたことが無いのか…、かわいそうに。…ちょっと待って…、僕も言われたこと無いッ!

「そうだっ、立花さんにも聞きたいことがあったんだよっ」
僕が長谷川の横で自己嫌悪に陥っているっていうのに、長谷川は立花さんにもあの質問をするつもりなのでしょうか?
「私にですか? (チラッ)…なんでしょうか?」
微笑みながら長谷川を見ていた立花さんでしたが、その質問を聞いた瞬間、一瞬僕の方を向いて、ギラッとした眼光を僕に突きつけたのは気のせいでしょうか?

「今日の朝、体育館で二人は何していたの?」
あぁぁっ、長谷川…、立花さんにお前絶対に消されるよ。僕に殺されていた方がきっと幸せだったのに…。
「今日の朝は、ここにいる親切な和也君に学園案内をしてもらっていたんですよ」
「えっ!? そうなんだ?」
はっ!? この返答の内容は…、僕が今日の朝、沢田さんについた嘘と同じ内容だ。シンクロしたよっ!
「私、まだこの学校に慣れていませんので、朝早く学校を散歩していましたら、和也君と偶然お会いして…」
「へぇ~、新谷、そうなのか?」
立花さんの返答が合っているか、長谷川は僕に尋ねました。
「そうなんだよ長谷川。何だか立花さんが不安そうな顔をしていたから、僕が心配して一緒に学校内を案内していたんだよ」
「(ピキッ) 和也君、今日は本当にありがとうございました」
“てめぇ…、なんで私が不安がっているんだよッ!?”と、一瞬、立花さんの額に“怒りマーク”が浮かびましたが、長谷川が立花さんの方に振り向くと、すぐにそれは消えていました。

「そっかぁ…、俺が案内したかったなぁ…! そうだっ、今日の放課後は空いてる?」
「すいません、放課後はちょっと用事があって…」
「がっくし、俺も学校案内をしてあげたかったなぁ…。新谷はいいよなぁ」
ナンパを諦めた長谷川は、黙ってパンを食べ始めました。

「とっても大事な用事なんです、すいません」
そう言うと立花さんもお弁当を食べ始めました。しかし…、立花さんが言うその大事な用事とは、恐らくっていうか絶対に僕を特訓することでしょうね。そう思ったら、急に食欲がなくなってきました。
「長谷川、このカレーパンあげるよ」
「おぉ! サンキュー。食欲無いのか?」
「うん…、何か急にお腹のあたりが痛くなって」
「そうか…、体調には気をつけろよ」
僕からカレーパンを受け取った長谷川は、嬉しそうにカレーパンを食べ始めました。
「では、私はそろそろ教室に戻りますね」
お弁当を食べ終えた立花さんは、弁当箱を布で包んで、横に置いておいたエシナを肩に乗せました。
「え~、もうちょっと話そうよ~」
長谷川が駄々っ子みたいな口調で言いました。しかし、長谷川がこんなナンパ男だったとは夢にも思いませんでしたよ。
「いえ、男二人の世界を邪魔しては悪いので。ではっ」

――――――ピョンッ

「えっ、飛び降りた!?」(長谷川)

――――――スタッ

「おぉ~」
感心している長谷川。僕は昨日の出来事で慣れているので、全然気にしませんでしたけどねっ。
「ごゆっくり~」
そう言った立花さんは、こっちに手を振るとドアを開けて行ってしまいました。
「あ~あ~…、行っちゃったぁ…。残ったのはむさ苦しい男だけかぁ…、はぁ~…」
「女の子じゃなくて悪かったな。はぁ~…」
同時に二人はため息をつきました。長谷川は、立花さんが行ってしまったことによる残念感で。僕は長谷川に嘘がばれなかったことによる安堵感でため息をつきました。

「おい新谷!」
「ど…どうした?」
長谷川がイヤに真剣です。
「お前に先は越されたが、俺がすぐに追いついてやるからなぁ!」
“ビシッ”と、指を指されながら言われました。
「何の話だ…?」
「いや、気にするな! そっちの方が俺にとっては好都合だ!」
食事を終えた長谷川は、すくっと立ち上がり、
「とうっ」
その掛け声と共に、先ほど立花さんが飛び降りたようにジャンプしました。。

――――――ダンッ

「~~~~~~ッッ!」
普通に痛そうです。
「くぅ…! お前には負けないからなぁ~!」
その捨て台詞を残して、長谷川もドアを開けて行ってしまいました。
「何だって言うんだよ、全く…」

僕は背中を後ろに倒し、ゴロンと横になりました。
「いい天気だぁ…」
コンクリートの地面はひんやりと冷たく、頬に当たる風はほんのり暖かいです。しばらく横になっていると眠気がじわりじわりと忍び寄ってきましたが、妙な音で眠気が逃げていきました。
「何の音だろう…?」
耳をすましてみます。

――――――シュィ~ン…

「お~イ、かずヤ~!」
この声は…、
「ヴぇス君!?」
「そうだヨ~」

――――――シュィ~ン…

「どこ!? どこにいるの!?」
「わかんなイ~?」
ヴぇス君の声はするけど、肝心の姿がどこにも見当たりません。モーター音が聞こえるだけです。
「じゃア~、ヒント~」
「ヒント?」
「えイッ!」
刹那、
「ッ!? ギャァァ~~~!! 耳っ、耳が痛い!!!」
激痛です! 
「痛い! 痛すぎる!! いったい今のは何!?」
右手で自分の耳を急いで触ります! しかし、その痛みは外部からではなく、僕の耳の中、すなわち内部からの痛みでした!
「僕は今ネ~、かずやの耳の中にいるノ~」
「なっ、なんだってぇぇぇ~!?」
意味が良く分かりません!
「どういうこと!? ヴェス君、ちゃんと説明して!!」
「わかっタ~」
僕の耳の中では相変わらずモーター音が響いています。

「僕の“バリティー”の“チャラック”でモデルテェンジしたんだヨ~」
「え!? “チャラック”って、昨日みたいに飛行機やダンプカーに変形するアレ?」
「そうだヨ~」
「一体何に変形したの!?」
「聞いて驚くなヨ~」
「早く言ってよぉ!」
ヴェス君にジラされると、何だか興奮してしまいます!

「しょうがないナ~。僕は今ネ~、小さくなって体内に侵入できる“ナノマシン”に変形したんだヨ~」
「おぉ~、何だかカッコイイね!」
「そうでしョ~」
「あははっ」っと笑い合う僕達。穏やかな空気が場を包み込まれていきます…、がっ!

「ごめんネ~、かずヤ~」
「ん? どうしたの、急に謝ったりなんかして?」
ヴェス君の様子がおかしいです。
「先に謝っておくネ~」
「何が!? とっても嫌な予感がするんですけど!!」
空がどんどん黒ずんでいきます。
「僕は渚に命令…、頼まれただけだからネ~」
「やめて! よく分からないけど、とにかく止めてぇぇぇ~~~!! 僕とヴェス君の仲でしょ!?」
僕の右耳から、微かな虹色の光がこぼれ始めました。
「乗り物するだけじャ~、つまらなイ~。たまには乗り物に乗りたいナ~」
次の瞬間、僕の目、耳、鼻、口から虹色の光が放射されました。(ピカァァァ~~~っと)
「運転するバリティー“ルマニカル”!!!」
「うぎゃぁぁぁ~~…」

――――――バタッ!

(後日談)
痛みは無かったです。僕の体が温かい水の中に浸されているような…、そんな気持ちい感覚が僕を包み込みました。そして、子守唄を歌われて、安らかに眠りにつく赤ん坊のように、僕の意識はゆっくりと遙か彼方へと飛ばされちゃったんだよね~。

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【2006/03/30 10:53】URL | #-[ 編集]

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