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”自分に厳しく、地球に優しく” 第13幕

第13幕  冷たい水の中で



びっくりしました。
何故かというと、体育館の外側の壁から突然「シュパ~ン!」と変なケーブルが飛び出て、またそれが「シュルン!」と出てきた穴に吸い込まれたからです。しかし、この光景には身に覚えがありました。
「おはようさん~。いや~、昨日は大変だったですなぁ~。なぁ~っはっはっはっ~~!」
どこからともなく変な大阪弁の声が聞こえてきます。僕は神経を集中させ、どこに本体がいるか探ります。
「(ピキーン) そこだぁッ~~~!」
僕が蹴った場所は体育館の外壁のある一部。するとどうでしょうか。その場所が微妙にへこみました。
「アイタァ~!!! いつの間にそんな能力を身につけたんや、あんさん!?」
僕の目が赤く光り。
「我の、ち、カラ、の、源、は、憎し、ミ」
「怖いわぁ! もう怒らんといてぇなぁ~! ホンマすいませんでしたぁ~~~!!!」
優しい僕は、これぐらいで勘弁してあげます。
「ところで、何しに“ソム”へ行くんや?」
「さっきも言ったでしょ。…BDMを和也君にやらせようと思ってね」
「なんやてぇぇぇッッッ~~~!!!」
わざとらしい驚き方が僕をムカムカさせます。それにしても、

「BDMって何?」
その言葉に立花さん達は“ピクッ”と動揺しましたが、僕の問いに別に答える様子もなく、何故か、遠くを見ながらわざとらしく口笛を吹き始めました。
「えっ、なに!? みんな急にどうしたのッ!?」
「BDMって言うのわな」
「シパン!!」
説明しかけていたシパンを、立花さんの大きな声が遮りました。
「ケーブルを引きちぎるわよ?」
「ひぃぃぃッ~~~!! なんでもあらへんよ、あんさん!!!」
とっても怪しすぎるので、僕はこの場から速攻で逃げようと思いました。外に置いておいた鞄を手に持ち、いざダッシュで逃げようとした時、
「ワイは悪くないでなぁ~~~! 怒らんといてぇなぁ~、あんさん~~~!」
先ほど出現した穴から、ケーブルが“ニュルンッ”と出てきて、逃げようとしていた僕に向かって襲い掛かって来ました! シパンの仕業です!!

「ふっ、シパン…。今の僕にはコレぐらい難なくかわせる!」
このぐらいの攻撃は簡単にかわせると思いました。しかし、
「ふっ、甘いぞ和也! 惑わすバリティー! シシルチエ(木の葉牢獄)!!」
エシナの体が虹色に光ったかと思ったら、エシナの口から落ち葉が“ドバーッ”と出てきて、僕の周りを囲みました。
「うわぁッッ~~! 何も見えない~~~!」
「エシナはん、ナイスサポートやで!!」
「さっさとヤレ!!!」
「おおきに!!」
僕の微かな抵抗も虚しく、何気にタッグを組んだエシナとシパンには敵いませんでした。
ソムへの入り口であるケーブルに無抵抗で吸い込まれていく僕。薄れていく意識。そして、眩いばかりの光。

――――――シュッポ~ン!!

「うわあぁぁああぁぁッッ~~~!!」
「ええぇぇええぇぇぇッッ~~~!?」

――――――ドカッ!…ドスッ!

前にもあったようなこの展開。
痛みに苦しんでいる僕の体の下で、僕と同じように悶絶していたのは、立花さんのお父上である“まもるさん”でした。
「いたたた…、おぉッ! 君は和也君じゃないか! おはよう!!」
「おはようございます、まもるさん! 今日も元気ですね!」
はっ! 僕は気が付いちゃいました。今の状態は僕がまもるさんを芝生に押し倒しているということに! そして、僕と同じ様なことを感じ取ったのか、まもるさんの顔も赤くなっていきました。
とってもいいムードで見つめ合う僕とまもるさん。そして、二人の瞳は潤んで行き、
「キモイんだよボケェがぁッ!(ドゴッ!)」
「ゲフゥッッッ~~~!!!」
いつの間にか、僕の横にいたエシナに横からアッパーを食らった僕は、血反吐を吐きながら空に向かって飛んで行きました。僕は、かろうじて目を見開いて僕の着陸予定地を見ました。でもそこは、
「プール!?」

――――――バッシャァ~~~ン!

「ばんばぶぅーぶばっ!?(なんでプールが!?)」
でも、そんなことを考えている場合ではありません! 
「ぶはぁ! さぶっ! 寒すぎるぅ!!!」
あまりの寒さにガチガチと体を震わせてしまいます!
不運にもプールの底はとても深く、足を動かさなければ沈んでしまいます! あまりの寒さに体が急速に痺れてきたので、僕の体は溺れるまでの、ワン! ツー! スリー! っと、カウントダウンを開始してしまいました! 
プールのそばでは、そんな僕をせせら笑うエシナがいます。そして、その隣で興奮しているまもるさん。さらにその横で、いつの間にかこっちに来ていた立花さんが、何故かプールの反対側を向いてヴェス君と遊んでいます!!
「みんな助けてよぉ! 凍えて動けない!!」

僕が叫んだその時です。
「てりゃ~~~っ」
突然現れた可愛い声。変ですね、僕の気のせいじゃなければ、今の声は僕の頭の上の方から聞こえたような気がします。僕はその声の主を確かめようと顔を上げ、

――――――ドッバシャァ~~~ン!!!

「うわあぁぁぁッッ~~~!!」
すぐ横で突如発生した大波に、飲み込まれてしまいました。状況がつかめない僕は、そのままプールの岸に“ドッパ~ン”と打ち上げられました。
「た、助かった…」
少し飲んでしまったプールの水で気持ち悪くなったけど、僕は大丈夫です。たくましく生きていますよ。プールに全てのエネルギーを奪われ、よぼよぼのおじいちゃんみたいになったけど、僕を死の境地から救ってくれた波が発生した場所を恐る恐る見ました。

「大丈夫ですかぁ~?」
プールのほぼ真ん中にいたのは、僕に向かって大きく手を振っているとても小さくて可愛らしい女の子でした。僕は何が起こったのかわからず“ポカーン”としていると、その子は茶色のショートへアーをかきあげ、それからこっちに向かってバタ足で泳いできました。

「汐(うしお)ちゃ~ん、いい飛込みだったよ~~~!」
まもるさんは嬉しそうにその女の子に手を振りながら、プールの傍までやってきました。
「ぷはぁっ、ねぇ、パパッ!」
その女の子はプールの端まで泳いでくると、顔を水面から上げました。見た感じ、まだ小学5年生ぐらいでしょうか。
「僕、この人の命を救ったのよっ! すごいっ? すごいっ?」
「うん、でも今の場合は助けなかったほうがウケルけどねっ」
「もうっ、パパったら!」
まもるさんが手を差し出すと、その女の子はその手を掴みプールから上がりました。
「えっ? まもるさんがパパって…」
全く状況を掴めていない僕の顔を覗き込んだその女の子は、
「初めまして! 僕の名前は、立花 汐(うしお)って言います! 渚お姉ちゃんの妹ですっ! 今日はいい天気ですねっ!」

清々しい挨拶をしました。その時の、汐ちゃんの満面の笑顔といったら、世界中のどんな悪党の心をも癒してしまうことこと間違い無しです!
「こちらこそ初めまして! 僕は立花さんのクラスメートで新谷 和也って言うんだよ! 汐ちゃんっ! 僕のことは“和也お兄ちゃん”って呼んでねっ!」

――――――殺気ッ!?

気が付いた時には、僕は立花さんとエシナによる合体攻撃“局部一点集中攻撃”を受け、まるで人間大砲で発射されたかのような凄まじい勢いで空中へ飛んでいきました!
「和也君。死んでぇっ~!」(立花さん)
「わぁっ、和也お兄ちゃんが飛んでる~っ!」(汐ちゃん)
「飛べない和也はただの和也だ」(エシナ)
「エシナさんって本当に面白いですよねっ!」(汐ちゃん)
「汐ちゃ~ん! 和也お兄ちゃんって呼んでくれてアリガトォ~!? って、またプールだぁ!!」(僕)

――――――ドッバッシャァ~~~ン!

「だぁぶはぁっ! たっ、助けてぇっ~! 汐ちゃ~ん! プリーズゥ!!」
また、先ほど味わった凍え死にそうな寒さに襲われました。
「サブイよ~! 何で汐ちゃんは平気だったの!?」
こんな南極の極寒の海のようなところで、汐ちゃんは何故ケロッとしていられるのでしょうか!? 鈍いんでしょうか!?
「だって、僕は“人命保護執行人”になるために、あらゆる状況でも人命を救うことが出来るように修行したんだもんっ! すごいでしょっ?」
「こらっ、汐! まだ汐は“人命保護執行人”になるための修行中でしょ! まだ見習いよ、あなたは」
立花さんがちょっと怒ったような、ちょっとお姉さんみたいな、そんな感じで汐ちゃんの柔らかそうなほっぺたを軽くつまみました。
「はぅぅぅ…、ごめんなさい渚お姉ちゃん」
汐ちゃんが「えへっ」と自分のおでこに、丸めたコブシをコツンと当てました。

「“人命保護執行人”!? それはたいしたもんだよ汐ちゃん! だから、さっさと僕を助けに来てもらえないかなっ!?」
そろそろ僕は限界です。もうプールの底に沈みそうですよ! 死んじゃいますよ!!
「ごめん和也お兄ちゃん…、僕もう疲れちゃった…」
「えぇっ!?」
汐ちゃんはその場にペタリと座り込んでしまい、突然泣き崩れてしまいました。
「うっうぅ…、体が動かないよぉ…! もう誰も…、死んでほしくないのにぃ…! そう、アレは…、まだ僕が6歳のとき…」
「ちょっと待って! 何で今この緊急事態に回想シーンに突入するの!? 僕がもうすぐで汐ちゃんの回想シーンの1場面に追加されちゃうってのにッ!?」
「和也お兄ちゃんって面白い人ですねっ!!」
元気良く飛び跳ねる汐ちゃん。
「うん、ありがとっ! って、早く助けて!! 汐ちゃん元気じゃんっ!」
「和也~、助けてやろうか~?」
「えッ!?」
エシナが、にこやか~な笑顔でこちら見ています! くそっ!
「本当に!? 本当に助けてくれるのッ!?」
もう助けてくれるなら誰だっていいです!
「条件があるがな」
「わぁ~、エシナさんが悪人の顔になってるぅ~」
汐ちゃんが「キャッ、キャッ」と嬉しそうに騒いでいます。

「でもエシナさん…」
あれ? 急に真剣な口調になる汐ちゃん。
「和也お兄ちゃんは僕が助けるから大丈夫だよっ」
汐ちゃんはそう言うと、プールの中に飛び込みました。あっという間に僕のところまで泳いで来た汐ちゃんは、僕の腕を自分の肩にまわしました。
「遅れてごめんねっ、和也お兄ちゃん」
「汐ちゃん~…」
僕は汐ちゃんの優しさに涙してしまいました。
「余計なことをっ!」
向こうでエシナの悔しそうな声が聞こえました。

「エシナ」
「ん? どうした渚?」
立花さんは何故かエシナを抱きかかえました。
「上」
「上?」
僕もその言葉に顔を上げ、上を見ました。
目に映ったもの…、それは、とっても高い飛び込み台…。なるほど、さっき汐ちゃんはあんなに高いところから飛び込んだのですか。
「ん? アレは…」
良く見ると、その飛び込み台には黒い影が。
「あぁ…!」
突然、震えだす汐ちゃん。
「汐ちゃん、どうしたの!?」
「怒られる…」
「えっ!?」
そして、

――――――「何をやっているのですかっ!!!」(?)

遙か上空で轟く轟音。僕と汐ちゃんは同時にビクッと肩を震わせました。

――――――「今、そちらへ参ります!!」

黒い影が空中へ身を投げ出し、こっちに落下してきました!
「また新キャラかッ!? いいキャラでありますように!!」
僕は心の中の神様に心から祈りました。

――――――ドッバッシャァ~~~ン!

「うわあぁぁぁあああぁぁぁ~~~」
「きゃあぁぁぁあああぁぁぁ~~~」

落下してきたソレは、僕達の横に墜落し、その衝撃によって発生した波に、今度は僕と共に汐ちゃんもプールの岸に、「ばっしゃぁ~~~ん」と打ち上げられてしまいました。
「ごほっ、ごほっ、一体何が?」
プールの中央を見てみました。
「あぁっ! あれはっ」
なんと! プールの中央にはエシナとは違う、白い色のぬいぐるみが水面の上に立っていました!

「汐さんッ!」
その声は汐ちゃんに向けられたものでした。
「はいぃ…」
自信なさげに返事をする汐ちゃん。
「自分が今、何故怒られているか分かりますかッ?」
そう言いながら、水面を歩いてこっちに向かってくる白いぬいぐるみ。
「それは…、僕がすぐに和也お兄ちゃんを助けなかったから…」
「その通り!!」

そのぬいぐるみは倒れている僕達の前に来ると、じっと僕を見ました。
「見なさい! この一般市民がこんなにも衰弱しているのを! もう一歩遅かったら凍死していたかもしれないのですよッ!」
「だって、和也お兄ちゃんが助けなくてもいいって…」
「いや、言ってないから! 突然何を言い出すのッ!?」
「と・も・か・く、減点1点です!」
「えぇ~~~」
がっくりとうなだれる汐ちゃん。
「汐さん…、あなたは“人命保護執行人”になるのでしょう? だから、この私が貴女を立派な“人命保護執行人”にするために、厳しい修行を受けさせているのですよっ」
「まぁまぁ“ドトロちゃん”…」
まもるさんが会話の中に入ってきました! 
そして、僕はふと気が付きました。今、まもるさんが言った“ドトロ”というある有名なキャラクターのことを! 良く見てみると、このぬいぐるみはそのキャラクターにそっくりです! 色は違いますが…。

「汐だって真面目にドトロちゃんのキツイ修行を受けているんだろう? だったら、もうちょっと汐のことを信じてやってもいいじゃないか。それに汐は、ちゃんと和也君を助けようと頑張ったじゃないか」
まもるさんがまともな事を言っているッ!? ありえないぃッ!!
「それもそうですが…」
まもるさんの言葉にそのぬいぐるみは言葉を詰まらせました。

「汐ちゃん、僕は期待して待っているからね。頑張って立派な“人命保護執行人”になってね」
汐ちゃんの頭を撫でるまもるさん。そして、まもるさんの胸に抱きつく汐ちゃん。なんて微笑ましい家族の光景なのでしょう! 僕は感動して胸がときめいています!
「さて…、私はこの一般市民を治すとしますか」
ドトロと呼ばれるそのぬいぐるみは、凍えて動けない僕の体の上に両手をかざしました。
「えっ、何をするの!?」
「大丈夫だよ、和也お兄ちゃん。じっとしていて」
その汐ちゃんの言葉に安心した僕は、何が起こってもこの場を動かない決意をしました!

パアァァッッっと微かに虹色に光っていく僕にかざされた両手。
「暖かな光と共に…。治療するバリティー“アータート(癒しの光)”!!」
かざされた手から、虹色の光が僕に向かって照射され、僕の体を虹色の光が包み込みました。
「うわぁぁぁ…、なんだかとってもいい気持ち…」
温かい湯船に浮かんでいるような感覚に包み込まれました。僕の体と心が徐々に温かく癒されていくことを感じます。
「いいなぁ、和也君…」
立花さんが何故かぼやいています。
「そろそろいいでしょう」
ドトロさんは僕にかざしていた両手を引っ込めて、僕の顔を覗き込みました。
「気分はどうですか?」
まるでお医者さんに診断されているようです。
「はい、大丈夫だと思います…」
ゆっくりと立ち上がり、そして自分の体を軽く動かしてみました。
「全然だるくない…、むしろ体が軽いくらいだよっ! こんな気分は初めてだッ~!」
服も乾いています! 僕は「あはは~」とその場でクルクルと回転してしまいました。
「ありがとうございます、ドトロさん!」
「礼には及びません。当然のことをしたまでです」
なんてドトロさんはクールなのでしょうか! 惚れてしまいそうです!

「おい、ドトロ」
「その声は…、エシナさんですか」
エシナがドトロさんに話しかけています。
「相変わらず、そのお節介な性格は治っていないんだな」
「大きなお世話です」
エシナの言葉に少しムッとなるドトロさん。何だか仲が悪そうです。
「それにしても、何故、一般市民が“ソム”にいるのですか?」
「えっ!?」
僕は、今ドトロさんが言った言葉があまりよく理解できませんでした。
「ここが“ソム”だって? でもここ、空だってあるし…」
そうなのです。ここが“ソム”な訳がないです。ソムと言うのはあの研究所のことではなかったのですか?
「和也君。あの空はただ天井にモニターが貼り付けられていて、そこから空の映像を流しているだけなのよ」
僕は立花さんのその話が信じられなくて…、
「じゃあ、ここはどこなの!?」
まもるさんに答えを求めました。
「ここは間違いなく“ソム”だよ。“ソム”と言うのはだね和也君…。萩原山の内部にある“町”のことを言うのだよ」
「えぇぇぇッッ~~~! ここって、山の中なの!?」
仰天びっくり摩訶不思議です! ここが山の中だとはッ!
「びっくりした? すごいでしょ」
立花さんが「にこっ」と微笑みました。
「うん、すごいよ。本当にすごいっ」
僕はたび重なるすごい出来事に驚きっぱなしです! 

「じゃあ、あの大きなの家は立花さんの家?」
「そうよ」
今、気が付きましたが、僕達がいるこの場所はとても大きな庭だったのです! 大きなプールがあり、しかもきれいな芝生に覆われていて、さらにパラソル付きの寝られる長い椅子まであります。そして、向こうに見えるのは、真っ白な大きな家。
「まもるさんってお金持ちだったんだぁ…」
「いや、違うよ和也君」
まもるさんが僕の肩を掴みました。
「これは全部…、タダだ!」
「タダッ!?」
この、誰もが憧れるような凄い家がタダですと!?

「全部、“創造”担当の“カリス”に作ってもらったんだよ、えっへん!」
また新キャラ登場ですか!?
「“アート”って何でもありですね!」
「僕が天才だから成せる業だよ! はっはっはっ」
「その“カリス”って言う“アート”も誰かのパートナーなんですか?」
「そうよ」
立花さんが僕の前に歩み寄り、
「和也君が無断で借りていたその白衣の持ち主がカリスのパートナーよ。名前は石川 勇人(いしかわ はやと)さんと言って、私は「いしかっちょ」って呼んでいるわっ。ちなみに、いしかっちょは“文明開発執行人”でもあるんだからっ!」
何故か立花さんは誇らしげです。
「えっ、そうなの! すごい偶然!? それに文明開発執行人っていうのもスゴそう!」
僕は、今持っている袋を空け、中に入っている白衣を見てみました。そして思いました。
…ということは、ここにいる人たちはみんな“アート”のパートナーがいるってことですか!? いいなぁ~! 羨ましいよッ! 僕もほしいですっ!!

「汐さん、そろそろ学校に行く時間ですよ」
ドトロさんが腕に付けている腕時計を見て言いました。
「あっ、いっけな~い! もうそんな時間なんだ!」
汐ちゃんは駆け出し、
「じゃあね~、和也お兄ちゃん。またね~」
「それでは失礼します」
ドトロさんと一緒に向こうの家まで走って行ってしまいました。
「汐ちゃんって、何年生なの?」
「小学5年生よ」
「和也君、汐ちゃんには手を出したらダメだからねっ」
その意味ありげなまもるさんのお言葉に、
「大丈夫ですよ、まもるさん。汐ちゃんには絶対に手を出しません! 任せてください!」
はっきりと自分の意思を示しました。
「期待しているからねっ」
ぎゅっと握手を交わす僕とまもるさん。
「二人とも…、変なことを考えているんじゃないでしょうね?」
立花さんが僕とまもるさんの肩をガシッと掴みました!
「ん? 何も考えていないよ渚ちゃん。それよりも、ほらっ」
立花さんの握力から“スルッ”と抜け出したまもるさんは、自分の腕時計を立花さんに見せ、
「そろそろ渚ちゃん達も学校に行く時間じゃないのかな?」
と、僕達にとって重要な情報を提示してくれました。
「そうだよっ、早く学校に行かないと!」
僕はシパンが恐れた“BDM”という意味のわからないモノから逃れるために、立花さんの説得を試みます。
「でも、和也君の修行が…」
立花さんは何だか悲しそうです。
「学校が終わってからでもできるぞ、渚」
オイッ! なんて事を言ってんだよツ! このぬいぐるみがぁ!!(心の叫び)
「ん? 何か言いたそうだな、和也」
さすがエシナです。僕の訴えを第6感で感じ取ったのでしょう。
「そうよね。学校が終わってからでも、修行なんていつでも出来るわねっ。そうと決まったら、早く学校に行くわよ!」
「よかった! 僕の寿命が少しだけ延びた!!」
気合いを入れなおした立花さんは、ポケットから携帯を取り出すと、

――――――ピッ、ポッ、パッ、トゥル~、トゥル~、ガチャッ

「もしもし、シパン? えっと…、さっき繋いだゲートの学校側の出口をちょっとズラしてもらえないかな? うん…、学生に見つからないようなところにね。じゃあ、よろしく!えっ? 和也君? いるわよ…、話したい? 分かったわ。和也君、はいっ」
僕に手渡される立花さんの女の子らしいピンク色の携帯。
「もしもし…?」
僕は恐る恐る携帯に耳をつけました。
「おおぉぉッッ~~~! 生きとったかぁ~、あんさん! いや~、すごいで~、ホンマにすごいでぇ~。まさか生きとるとは夢にも思わなかったで! さすがワイの相方や!!…えっ? まだ“BDM”をしていない!?……………」

――――――ガチャっ…、ツーッ、ツーッ…

「ちょっと待てや! 何で切るんだよっ! せめて“BDM”が何の事かだけでも言えよ! 不安で死にそうぅ~~~!」
ちょっぴり涙で視界が見えづらくなりましたが、僕はちゃんと立花さんに携帯を返しました。
「さぁ、学業学業~」
「渚…、もう自分の力で答えろよ」
「わっ、分かっているわよ! ふんだっ」
そう言うと、立花さんはさっき僕達が出てきた穴に飛び込んでいってしまいました。
「まっテ、まっテ~」
その後を追うヴェス君。
「エシナ…、何のこと?」
僕は立花さんの様子がおかしくなったので、何かあるなぁと思いエシナに尋ねました。
「ん? 秘密だ♪」
そして、エシナも穴に飛び込んでいってしまいました。
「もう! 秘密が多すぎるよっ!」
僕もみんなの後を追いかけようとしましたが、
「あっ、まもるさん」
「なんだい、和也君?」
そういえば、洗濯した白衣を持ってきているのを忘れていました。
「コレを“石川さん”に返しておいてもらえないですか? それと、“勝手にお借りして申し訳ございません”と」
「わかったよ。絶対にコレも言葉も届けるよ」
「ありがとうございます。では」
ペコリとお辞儀をして、僕も学校へと繋がっている穴へ飛び込みました。



――――――「礼を言うのは僕の方だよ…」(まもるさん)

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