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撲殺天使ドクロちゃん by シミコン

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 ”撲殺天使ドクロちゃんです”のトリビュート作品を書いてみました。
 
 (タイトル)

 もしもドクロちゃんが……シミコンだったら


 では、どうぞっ♪
 

☆☆はじめはおかゆさんの執筆です!☆☆

~前略~

 背中で宮本の声を聞きながら、僕は二年A組に辿りつき、扉を<がらり>と開け放ちます。
「え……?」
 そこにあったモノに言葉を失います。
 なぜなら教室内では、パジャマを脱いで、スカートの前にくつしたをはこうと片足をイスに乗せたドクロちゃんが → ☆☆ここより先、おかゆさんに代わってシミコンがお送りします☆☆ → が立っていたからです。

「やぁ、こんばんは桜クン――」
 ……あれ? 
 殴られるッ!? と思って目を閉じていましたが、ドクロちゃんの落ち着いた雰囲気に僕は目を開けます。 
なんとっ、ドクロちゃんは何事も無かったかのようにくつしたをはく動作を再開し、スカートも「これでいいのかな?」と言いながら不器用にはいているのです。そして突如、風が何処からともなく吹き込んできて、そのイタズラな風さんはドクロちゃんのスカートを巻くり上げたので、僕はすかさず、
「うわーッ、僕は何も見てませんッ。見てないから撲殺だけはどうか勘弁して下さいっ」
 水色と白色のしま模様のパンツなんて見ていません。本当です。信じてください。
「――あっ」
 ヒィーッ、パンツを見られたとドクロちゃんが勘違いしたに違いないッ。いつものパターンなら今から僕は撲殺され……、
「いや……、違うね。“初めまして”だね。桜クン」
「……はい?」
 ませんでした。
 見ると、ドクロちゃんは僕を見て「フフフッ」と笑いかけているのですが、ドクロちゃんのこんなお上品な笑い方を今まで見たことがありません。唖然としました。それに、
「初めまして桜クン。会えて嬉しいです」
 ワケの分からないことを言いながら、僕に握手を求めてきたのです。
「何を言っているんだよドクロちゃん。“初めまして”って何? コレは新しい遊びなのかな? 僕は何の役?」
 そこで今度は<アハハハハッ>とお腹を抱えてドクロちゃんは笑い出してしまいました。何の冗談でしょうか? ワケが分かりません。
 ドクロちゃんはボクが困っていると感じ取ったのか、
「アハハハハッ、ごめんごめん。ちょっと堪えきれなかったよ。いや~さすが桜クンだね。良いツッコミをしてくるっ」
 そして<バンバンッ>と僕の肩を叩いてきました。
「うぎゃぁぁぁ~~~ッッ!!! 肩がぁあああああぁぁぁあぁあぁぁ……!!」
「アレ?」
 ここで僕の全体骨がレントゲンで上映開始。
 綺麗な骨をしていた僕の肩の骨は、ドクロちゃんが叩いたことによって<ビシビシッ>と亀裂が川の流れのように走り複雑骨折ッ。重症です。
「ほわぁ~、ドクロちゃんって本当にすごい力なんだね。軽く肩を叩いたつもりだったのに」
「これのどこが軽いんだよッ。ハンマーで叩かれたのかと思ったよッ! 早く治してよドクロちゃんッ!」
「え……困ったな」
「何で困っちゃうんだよ? 困っているのは僕なのッ。いつも通りの天使のミラクルパワー(エスカリボルグで僕を撲殺してから魔法の呪文“ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪”を唱えるとあら不思議、外見上はケガしていないけど心に重傷を負った僕が生成される”)を使えば、こんな肉体的なケガは簡単に治るはずでしょ?」
「う~ん、そうなんだけど……」
 いつものドクロちゃんなら、「うんっ、分かったっ♪<ボクシュルシャァッッ!!>」と間髪いれずにエスカリボルグを無拍子で振るうはずなのに、今日のドクロちゃんはどうも変です。
「どうしたのドクロちゃん? 今日のドクロちゃん、ちょっと変だよ?」
 するとドクロちゃんはポリポリと頬を掻きながら、
「えっ、う~~~ん、あっ、とっ、とりあえず今はそんなことよりも、桜クンのケガを治すほうが先決だね。詳しい話はその後でも出来るよね」
「まぁそうだけど……」
「ボク……がんばるから……」
 そして何処からともなく取り出したるは、地獄の禍々しい鋼鉄の金属を惜しみもなく使用した、撲殺用バット“エスカリボルグ”。乱杭歯がキラリと光ります。
「じゃあ……桜クン……行くよ?」
「うん。僕はいつでもいいよ」
 もう何回撲殺されてきたかは記憶に残っていません。途中までは撲殺回数を数えていたのですが、その数が百を越えた時点でもう憂鬱……。数えるのを止めました。自分が殺される回数ほど数えたくないモノは無いと思います。(あっ、泣きたくなってきた)
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ドクロちゃん?」
 様子がおかしいです。目の前でエスカリボルグを構えている天使の少女の額からは、汗が<ポタポタ……>と滴り落ち、呼吸音は荒れ、緊張しまくっている感じがとても伝わってきました。
「だっ、大丈夫? すごい汗だよ?」
 ドクロちゃんは汗を拭こうともせず、
「うん……。いざ人を殺すのってさ……やっぱり覚悟がいるってことが理解できたよ……。ボクには荷が重いけど、やらないといけないんだね」
「イっ、イヤなら別にやらなくていいよっ。そんな気分に陥っちゃうこともたまにはあるよね? 僕なら大丈夫。今から病院に行って適切な処理を受けさせてもらって全治三ヶ月の診断結果をもらってくるからッ」
「大丈夫だよ。ボクに任せて?」
「普段頼りないドクロちゃんがさらに頼りないことになっているのに、任せていいワケがないでしょう?」
「ボクはやるときはちゃんとやる男だよ?」
「意味が分から」

――――――ドグシャッ!!

「ギャアアアアァァアアァアアァ~~~ッッ!!!」
「あっ、ズレた」
 ドクロちゃんが振り下ろしたエスカリボルグは脳天をはずれ、僕の負傷していない方の肩を切り落としました。ナニヤッテンノアンタ?
「汗で滑っちゃったよ。テヘッ」
「“テヘッ”じゃないよッ。」
「じゃあ、デヘッ?」
「“デヘッ”でもない! あぁっ、痛みだけが倍増した。早く僕を殺してッ。そしてこの痛みから僕を解放してくれよっ」
「頭? それとも鳩尾?」
「頭っ頭っ! 脳天からズバッとやっ」

――――――ドグチュアァァァッッ!!!

 異物が脳天から股間までの一直線を通過しました。するとその割れ目からは血の噴水が<シャァァァ>と噴出して地獄絵図の完成。僕はこのとき泣きませんでした。ただ痛いのから逃げたくて死にたかっただけなのです。
「うわぁ……、脳みそってこんな色しているんだ……、グロッ」
 ちょっとドクロちゃんッ? エスカリボルグで大事な脳みそを突付かないでッ。
「はっ!? どこからともなく桜クンの声がッ!? よしっ、今すぐキミを蘇らせてあげるからねっ」 
 よろしくっ。
「え~っと、確か……」
 まるでダンスの本番前に振り付けの練習をするかのように、ドクロちゃんは血でコーティングされているエスカリボルグを数回振ると、「よしっ」と威勢よく殺人バットを振ってその言葉を放ちました。

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪

 するとどうでしょうか。魔法のバットから放たれた光子が、辺りに散らばっていたタンパク質に注がれます。そしてそれらの栄養素は、なにも無くなった空間へとビデオの逆再生みたいに集まって、元通りの美しいボクに再構築。生命って素晴らしいですね。
「治ったッ。僕が治したかったものは……コレで全部!」
「良かったね、桜クン」
「一応言っておくよ。ありがとう、ドクロちゃんッ!」
「ありがとっ。だけど、ボクはドクロちゃんじゃないよ?」

――――――へ?

「いや~、さっきの呪文を使える日が来るなんて、まるで夢のようだよ。こっちが感謝したいぐらいだよ? アハハッ」
 何を言っているのでしょうか?
「“ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪”をちゃんと言えるか心配だったよ。静希ちゃんがこの呪文を間違えたとき、桜クンはテレビと合体しちゃったでしょ? いや~、アレは爆笑モノだったよ。ボクも、桜クンの思い出メモリアルを鑑賞したかったなぁ」
「ちょ、ちょっと待って!? さっきからドクロちゃんは何を言っているの? ドクロちゃんはドクロちゃんでしょ?」
「いや、違う」
 そこで一気に雰囲気が変わった。
「落ち着いて聞いて欲しい。実はボクもパニックに陥っていて、何故こうなってしまったのかは上手く説明は出来ないんだ。だけど、これだけは言える。ボクはドクロちゃんじゃない。ボクは――」
 時間が止まったような気がした。
「――この世界じゃない。別の世界から来た……あだ名で悪いけど、“シミコン”と言います。大学生です。男です。改めて挨拶するよ。初めまして、草壁桜クン」
「………………」
「いや~、目が覚めたら何故かこっちの世界に居てね、しかも鏡を見てさらにビックリ! なんと自分がドクロちゃんの体になっていたんだよ。もう何が何だかワケが分からないよね? 一体なんで……」
「あの……ちょっと待って……」
 言葉を手で制します。
「えっと……」
 混乱しちゃいます。目の前に居るのは僕の知っているドクロちゃんなのに、このドクロちゃんはそうじゃないと言うのです。違う世界からきたと言うのです。しかも大学生で男だとも言うのです。
「あの……何処までが冗談で何処までが本気なのかな? その……シミコンさん?」
「全部だよ」
「これは何? 想像上の人物“シミコン”になりきって遊ぶ新しいゲームなの?……ドクロちゃん?」
 すると目の前の天使は、少し怒ったように、
「だから違うって。ボクはシミコン。ドクロちゃんの体にいつの間にか入っていた違う世界の人間なんだよ。どうやったら信じてくれるのかな? 桜クンが本当に好きなのは静希ちゃ」
「あー! あー! あー!! 分かったよ、シミコンさん! 貴方がドクロちゃんじゃないってことがよ~~~っく分かりました」
「そう? なら良かったよ」
 危なかったです。そんなことをもし仮に誰かに聞かれでもしたら、光の速度で全校舎に通信完了。二秒後にはクラスの男どもが「桜―ッ!(吉田)」、「お前ってヤツは……!(木村)」、「ウキーッ!(松永)」「ドクロちゃんがいながらー!(増田)」、「僕がいながらー!(西田)」<ズカボコボコガンッ>となっていましたよ。
 それにしても、本当のドクロちゃんなら僕にこんなことを言うはずがありません。冗談でも決して言わないと思います。……ということは、本当にこの人はシミコンさんで、別の世界の人なんですかッ!?
「突然こんなことになってボクも困惑しているんだよ。なぜこんな状況になってしまったか知りたいだろ?」
 とろける様なくりくりヴォイスなのに、少し大人な感じです。だからボクは敬語で話すことにしました。
「はいっ。僕が納得できる説明を是非ともしてお願いしますッ」
「よしっ、最後まで口を挟まず聞いてくれ」
 シミコンさんはエスカリボルグを床に<ズシッ>と重量感タップリに置くと、垂れているリボンに指をクルクルしながら語り始めた。
「ボクは桜クンたちの世界とは違う世界。現実の世界から来たんだよ。酷なような話だけど、コレは本当のことなんだ。この世界は小説の世界。“おかゆまさき”と言う小説家の脳内で創造された架空の世界なんだ。桜クンの性格も、桜クンが好きになった女の子も、この世界は全て“彼”によって作られたんだ」
 ……シミコンさんはいったい何を言っているのでしょうか? 理解できません。胸が苦しくなってきました。
「そしてボクは、桜クンたちが存在するこの世界、“撲殺天使ドクロちゃん”のファンの一人。高校生のときにこの本に出会って本当に嬉しかったよ。ありがとう、桜クン」
 何でお礼を言うんですか?
「で、ある日、ボクは“撲殺天使ドクロちゃんです”と言う、いろんな小説家がドクロちゃんを描いた本を買ったんだ。で、いざ本を広げてみると、そこに」

『――→☆☆ここより先、おかゆさんに代わってシミコンがお送りします☆☆→――』

「そんな感じの文章が書いてあったんだ。そして気が付いたら」
「こっちの世界に居たってワケですか……?」
 シミコンさんは、指を<ビシッ>と立たせて、
「そうっ、気が付いたら桜クン家の押入れの中だったというわけさ。ドクロちゃんの部屋と言ったほうが正しいかな? びっくりだよねっ?」
「……はい」
 僕の方がびっくりですよ。というか、そんな話を信じることなんかできません。この世界が小説の話? どこの小説の話ですか? 僕にはちゃんと幼稚園からの記憶があります。それすらも作り物だって言うんですか? そんなの……! そんなの……!
「そしてコレがその本だ」
 無情にも、僕の願いは何処かへと跳んで行ってしまいました。
シミコンさんは胸からある一冊の本を手にとって差し出しました。
 その本のタイトルは……確かに……“撲殺天使ドクロちゃんです”と表記されていました。そこには、乱杭歯が多数付いている鋼鉄のバットを持ったドクロちゃんと、血を口から垂らして青くなっている僕と、愛しの女の子である静希ちゃんが可愛く描かれていました。それは写真じゃない。ただの絵でした。
「ほらっ。ここに、“ここからはシミコ”……」
「嘘だッッッ!!!」

――――――ドンッ!!

 本を広げて中身を見せてきたシミコンさんを、力いっぱい突き飛ばしました。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!」
「……桜クン? 落ち着いてくれ。深呼吸するんだ」
「そんなの……嘘だ……!」
 苦しい。胸が張り裂けそうです。このまま死んじゃうのでしょうか? だっ、誰か助けて……!
「桜クン。ボクの目を見ろ」
 シミコンさんが、僕の頬を両手で掴んで自分に引き寄せます。真剣な眼差し。ドクロちゃんは決してこんなに強みの在る目をしません。ドクロちゃんの瞳はいつもキラキラ。見ていると何だか怒りが蒸発していくような瞳なのです。だけど……、いま目の前に居る天使の瞳はそれとは別物。僕を貫くような強い眼なのです。
「落ち着いたかい?」
「……はい」
 本当に……この人はドクロちゃんじゃないんだ。別の世界の人、シミコンさんなんだ。そう思えざるを得ませんでした。
「よかった……。済まないね。いきなりこんな話をして」
「……いいえ。話してくださいまして、ありがとうございました……」
 悲しいとか、泣きたいとか、そんな気持ちにはなりませんでした。ただ、僕のこの世界が否定された気持ちになりました。僕はここにちゃんと存在しているのに……、それが誰かの想像で作られていたなんて……、じゃあ……この世界は……作り物……。
だったら、こんな世界なんて……ウ、
「もし……」
 シミコンさんがまた僕を見つめてきました。今度は優しく。
哀れみでじゃないです。慈愛の思いが伝わってきます。
「“この世界が本当はウソなんじゃないか?” な~んて思っているのなら、それは勘違いだよ?」
……え?
「桜クン。ドクロちゃん。静希ちゃん。サバトちゃん、ザクロちゃん。南さん。田辺さん。西田クン。お猿さんになってしまった松永クン。キミの親友の宮本クン。……ついでにザンス。ほらっ、たくさんだ。まだまだいっぱい居るよね。数え切れないくらいに。すごいよ。この世界は満たされている。この世界はボクたち、読者の心の中に永遠に存在しているんだ。忘れられない。すごい世界だ。例えボクがいなくなったとしても、この世界は消えない。永遠なんだ。語り継がれていくんだ。この世界はウソなんかじゃない。ちゃんとここに在る。ボクたちの心の中にちゃんと在るんだよ。ボクはキミ達が羨ましいよ」
 そしてシミコンさんはニコッと笑いました。つられて僕も、
「アハハハハっ、アハハハハハハっ」
 泣きながら笑いました。
「じゃあ僕達は、いつまでも貴方たちの心の中に存在しているんですねっ?」
「あぁっ、それは絶対だ。任せとけっ」
 シミコンさんは<ドンッ>と胸を叩きました。だけど、実際は、

――――――ポヨンッ

「うわっ、ビックリした!」
 体はドクロちゃんのまんまなので、その体格に似合わない発育しまくったナイスバディが手を弾きました。
「っひゃ~、それにしてもすごい体だね。足元が見れないや」
 そう言ってシミコンさんは、顎を胸の上に置いて上目遣いでこっちを見つめてきました。
「ちょっと、シミコンさんっ!? ドクロちゃんの体に変なことはしないで下さいねッ!」
「はははっ、ごめんごめんっ」
 良かった。女の子には優しいイイ人みたいです。
 と、思ったのも束の間でした。
「……桜クン? このドクロちゃんの胸を……触ってみたくわないかい?」
「……はい?」
 ドクロちゃんの声で言われたので、それが、シミコンさんが言ったことだと理解するのに多少のタイムラグが掛かりました。
「いつも苦しくて痛い思いをしているだろ? だからさ、たまにはいい思いもしないとね。桜クンがんばっているんだからさ。ほらっ、今のボクはドクロちゃんじゃなくてシミコンだ。中身は男だよ。触られてもドクロちゃんみたいに桜クンを撲殺なんてしないって」
<ゴクリッ>とノドが鳴りました。
おおおおおお落ち着けボク。動揺するな。クールに成れ。クゥゥゥ~~~~ルゥゥゥに成れ。僕がドクロちゃんの胸に触れる? 触っても撲殺されない? 夢にまで見たシチュエーションが今まさに目の前に!? そんなワケがあるはずないです。ほらっ、目を開けろ、草壁桜。きっとそこには綺麗な世界が広がっているはずさっ。
「お~い。何で目をつぶっているんだい?」
「はひっ?」
 目を開けるとそこには、手を後ろに組んでボクを見上げているドクロちゃ……じゃなかったシミコンさんがいました。
「どうしたんだい? 触りたくないのかい? ほらほらっ」
 なんてこったいッ! シミコンさんが両腕で胸を寄せあげてこっちに近づいてくるじゃないですかッ。あぁっ、何ですかその殺人的な谷間はッ? 吸い込まれそうな魔の隙間。手を伸ばせば触れる距離。だけどっ、僕は……!
「あっ、あのっ! ボクはそんなことでドクロちゃんの」

――――――ガッ

「あっ」
 足を引っ掛けたのか、シミコンさんはゆっくりと僕の方に体を傾けてきて、

――――――ポニュンッ

 その先にあった僕の手に、ドクロちゃんの胸が不時着。僕の意識もギリギリ不時着状態です。あぁっ、もう少しで爆発しそうッ。
「いやあああぁぁぁあぁぁぁーーーッッ!!」

――――――ジュギュルシュチャーーーッッ!

「……へ?」
 何が起こったのか……、分かりません。
 大切な臓器たちが飛んでいきます。天井にぶつかる心臓。窓ガラスにへばりつく腸。暑い日に水をまくように教室にまかれる鮮血。そして、 

――――――ドゴンッ!

 トドメ。僕の意識は体を引き裂かれる過程に比例して薄くなり消えていきました。
 そう、何が起こったのかと言いますと。シミコンさんが何処からともなく取り出した惨殺バット“エスカリボルグ”で僕の横腹をなぎ払い、返す刀で脳天を叩き割ったのです。
「あぁぁっ!? 何でッ? 体が勝手にッ!?」
 シミコンさんも動揺しているようです。足元に散らばった僕の髪の毛を<グチャグチャ>と踏みまくって慌てています。 
 あの……シミコンさん? とりあえず早くボクの体を元に戻してくれませんか?
「はっ? また桜クンの声が何処からともなく聞こえて来るッ。分かったよ桜クン。今すぐ……」
 さすがに二回目となるとスムーズに完了しました。シミコンさんは軽々と魔法のバットを回し、その復活の呪文を口にします。

ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪

 するとどうでしょう。放出された光の粒子が飛び散った肉塊に照射されると、そこから一本の光の糸が飛び出て、空中で編み物開始。そうやって繊維化した肉塊たちが形を成したのは、小さな勇気が一箇所に集まった地上の勇者の姿。つまり僕になったのでした。
「わぉっ、また成功したっ」
「……あの、シミコンさん?」
「ん、なんだい?」
「何で僕を撲殺したんですか?」
「う~ん、それがね。体が勝手に動いてしまったんだよ。ボクの意思とは無関係にね。これは恐らく、ドクロちゃんの体に刻まれた条件反射。日常的反射と言ってもいいね。つまり、ドクロちゃんは桜クンに胸を触られると、本人の意思に関係なく桜クンを撲殺してしまうんだよ。分かって良かったね」
「良くないわーーッ!!!」
 堪忍袋の緒が切れました。<プチッ>っとね。
「わっ、急にどうしたんだい?」
 僕はもう本当に怒りましたよ。何故なら、
「中身が入れ替わってもこのドクロちゃんというバカ天使は僕を撲殺したいのかッ!? もうイヤだッ。耐えられないッ。ドクロちゃんなんて……、大嫌いだッ」
「……え……」
 言いたいことが言えたので、僕はスッキリしました。ずっとそう思っていたのです。そうです。ドクロちゃんなんて、僕の勉強の邪魔はするし、楽しみに取っておいたプリンは必ず先に食べちゃうし、……撲殺するしで、僕にとってマイナスになることしかしない役立たずですッ。そんなヤツ、いなくなっちゃえばいいんです。現に……、
「じゃあさ」
 寒気がしました。なぜならシミコンさんが、全くといっていいほどの無表情でこっちを見ていたからです。
「このままボクがドクロちゃんの中に居たらさ、桜クンは幸せになるのかな?」
「……どういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ。もし仮にボクがずっとこのままだったら、別に桜クンの側にずっと居るつもりは無いよ。この世界のことをもっとよく知りたいからね。この世界の未来の世界にも行ってみたいし、まだ見ぬキャラ達にも会いたいよ。だから、ボクは桜クンの側には居ない。ドクロちゃんという存在はキミの前から消えるんだよ。分かる?」
「だったら……なんだって言うんですか?」
「だからぁ……」
 シミコンさんは目を細めてこっちを睨んできました。
 ドクロちゃんは……こんな風に怒ったりは絶対にしません。絶対です。
 そして続きがこれでした。
「桜クンのお望みのままに、ドクロちゃんはキミの前から消えるってワケ」
「そんなこと言ってないじゃないですかッ!!!」
 気が付くと怒鳴っていました。学校全体に響いているとかそんなのはもうどうでも良かったんです。ただ、大声を出したかっただけなのかもしれません。
「言っていなくても、今そう思っていただろう?」
「……え?」
 僕が……そんなことを思っていた?
 ドクロちゃんがこの世界から消えてしまえと?
 そんなこと、僕が思うわけ……。
「ほらっ、何とか言ってみろよ」
 ドクロちゃんは絶対にこんなことは言わない。この人はドクロちゃんじゃない。別の人だ。だからこの人は嫌いだ。さっきの「大嫌い」はこの人に向けて言った事だったんだ。“あのドクロちゃん”は居て欲しい。だけど“このドクロちゃん”はいらない。ボクの側に居て欲しいのはボクのドクロちゃんだけだ。悪戯っ子で寂しがり屋で無茶なことばっかり要求してくる撲殺天使。それがドクロちゃん。ボクの好きなドクロちゃんだ。やっと気が付いた。
「……シミコンさん?」
「あん? 何だよ?」
 キツイ口調になっているシミコンさんは怖いけど、僕は勇気を振り絞って言いました。
「僕はドクロちゃんが好きです」
「……で?」
 ここで怯みそうになりましたけど、それでもノドの奥に力を込めました。
「ずっとドクロちゃんにはボクの側に居て欲しいです」
「………………」
「無邪気でカワイくて、僕を自然体で撲殺するドクロちゃんが好きなんです」
「………………」
「あなたが邪魔です」
「………………」
「僕のドクロちゃんを返せっ!!!」
 何かがブチキレました。シミコンさんの胸倉を掴み上げると、そのまま殴ろうと、
「バカ。また撲殺されるぞ」
 その言葉に手が止まりました。
「学習しないんだね、キミは」
「だけどッ! 僕は……!」
 貴方を許さないと言うつもりでしたが、
「ボクもドクロちゃんが好きだ。それにキミも好きだ」
 ……え?
 急に力が入らなくなり、<スルッ>と手から服が離れていきました。シミコンさんは「けほけほっ」と軽く咳払いをすると、すぐに顔を上げてこっちを見上げてきました。
「ボクはこの世界が大好きだよ」
「……それはどうも」
「ちなみに静希ちゃんが大好きだ」
「……それは許しません」
「ハハハッ。分かっているってっ。友人的な良い意味での“好き”って意味だよ」
「本当ですか?」
「本当、本当っ。ぶっちゃけると、この“撲殺天使ドクロちゃん”の世界に出てくる全ての住人が好きなんだよ」
「それはどうもっ」
「アハハハッ、本当だよ。この世界は素晴らしい。みんながみんなを思いやり、愛しみ合い、慰め合い、助け合い、励ましあう、まるで大きな家族だよ。最高の家族だよ」
「………………」
 そんな風に思われていたなんて……、ちょっと驚きです。
「だけどね、こんな世界でも一つだけキライなことができたよ」
 シミコンさんは困った様子で腕を組み、そして言いました。
「それは“コレ”。ボクになってしまった“このドクロちゃんだよ”。こんなのドクロちゃんじゃないよね。元のドクロちゃんの方がずっと可愛いし面白いし見ていても飽きないよね。まったく……困ったものだよ。“このドクロちゃん”は最低だ」
 そしてシミコンさんはお手上げといった感じで手のひらを上げると
「そう思うだろ? 桜クンも?」
 軽く笑顔で僕に意見を求めてきました。
 何だかこっちまで笑ってしまいそうになりましたが、なんとか堪えて僕は決まりきった答えを言うことにしました。
「はい。まったくです。貴方は最低です。早く元の世界に帰って、僕のドクロちゃんを帰してください」
「アハハッ、きっついね~、桜クンは」
「はい。僕はきついんです」
「ア~ッハッハッハッハッ~ッ! キミは最高だよ! 笑いが止まらないね。ア~ッハッハッハッハッ~ッ!」
「……アハハッ」
 何だかつられて、
『ア~ッハッハッハッハッ~ッ!』
 二人で大声を出して笑ってしまいました。お腹が痛くなるほど笑うとスッキリするらしく、さっきまでのモヤモヤした気分が何処かへと吹き飛んで行きました。
「はぁ、はぁ、笑いすぎて死にそうだ」
「それはこっちのセリフですよ、シミコンさん」
「はははっ……さてとっ、今からするべきことは分かっているね?」
 当然です。
「はい。貴方を元の世界へと帰して、ドクロちゃんを元に戻します」
「そのとおり。じゃあそのためにどうすればいいのかというと」
「……二人で一緒に言いましょうか?」
「アハハッ、そうだね。一緒に言おう」
 すでに二人の心はシンクロ率百パーセントオーバー。お互いが何を考えているかなんて赤子の手をひねるが如く簡単に分かります。僕とシミコンさんは親友になったのです。
『せ~のっ』
 そして二人の声は重なりました。

―――――――『ザンスを探して解決法を聞き出すッ』

「その時ザンスッ。ミィが窓ガラスを突き破って華麗に登場してきたのは~ッ!<パリーン>」

『いきなり登場するなーッ!!』
 二人の声がハモると、ザンスの顔面にダブルカウンターパンチが直撃しました。
「アイターッ! いきなり何するザンスかー!?」
 少しヒビが入ったサングラスを摩りながら、ザンスは訴えます。
「それはこっちのセリフですよ、ザンスさんッ。窓ガラスはちゃんと弁償してくださいよね!」
「そんな事はどうでもいいザンス! 今はもっと大事なことが……」
「“そんな事”とは何だッ。この変質者めッ!」
「ギャーーースッ! ミィのモヒカンを引っ張るのは止めてくれザンスッ! 最近いつも桜クンに引っ張られているので、心なしか薄くなってきた気がするザンスよッ」
「あぁっそれは良かったね。そのまま薄くなって存在までもが消え失せればいいのにッ」
「ギャースッ!」
「……おい、桜クン?」
 <ピタリ>とザンスのモヒカンを引っ張っていた僕の手が止まりました。
「いまからザンスにボクが元の世界に戻れるような方法を聞こうとしているのに、そんなことをしていたら教えてくれなくなってしまうよ?」
「そうザンスッ! ベロベロバ~」
『キモイんじゃーッ!!!』

――――――バキッ!

「はっ、しまったッ!? 体が勝手に反応してしまった。これも日常的反射か……。恐ろしい」
「ひどいザンスッ。あんまりザンスッ。ミィがぁ……! ミィがぁ……! いったい何をしたって言うんですかッ!?」
 目から透明な液体を噴射しながら、ザンスは地面にへばりつき泣き始めました。すると、
「その首から提げているバズーカーみたいなカメラで、さっきボクの着替えを撮影していたよね?」
 シミコンさんが、とても興味深いことを仰いました。
「へぇ……、そうなんだ? ザンスさん?」
<ギクゥゥゥ!?>と実際は聞こえない驚き音が、ザンスの胸から飛び出てきました。
「さ、さぁ……? ミィには何のことやらさっぱりザ……」
「やれ」
 シミコンさんは、まるで戦場にいる冷酷無欠で殺戮を好む上官のように、僕に向かって命令しました。
「ラジャー」
 そしてその命令を忠実に実行するのが、現場で活躍する兵隊なのです。つまり僕。
「ニギヤァァァ~~~ッッ!? ミィのモヒカンが<ブチブチッ>とぉおおぉぉっ!? 降参ザンスッ。確かにミィは、教室で着替えていたドクロちゃんの下着姿をこのキャメラに納めたザンスッ。だけどッ、この写真のドクロちゃんはドクロちゃんだけどドクロちゃんじゃないザンスよね? 別の世界から来た、シミコンという人物の精神が入り込んだドクロちゃんッ。これはルルティエに報告しなければいけないと思い、ミィは証拠の資料用に写真を撮っていたわけザンス」
「その写真を撮っているときは、まだボクは桜クンに自分の正体を明かしていないから、ザンスもボクの正体を知るはずがないんだけどな」
「しっ、しまったザンスーーーッッ!!!」
「墓穴を掘りましたねッ。このモヒカン野郎がーーーッッ!!!」
「ギャースッ!」
 そしてついに力尽きたのか、ザンスはピクリとも動かなくなりました。
「盗撮に続いて今度は盗聴もやり始めたのか。ボクと桜クンの話も聞こえていたらしいね。何処に盗聴器が仕込んであるか分からないから、これからも気をつけるんだよ?」
「はい。ご忠告ありがとうございます」
 僕とシミコンさんは友情の証である握手を固く交わしました。
「さてと、元の世界に戻れる道具をザンスの所持品から探してみようか」
 シミコンさんはそう言いながら、気絶したザンスの服をゴソゴソと探り始めました。
「確かボクの記憶に間違いがなければ、精神が入れ替わってしまった二者の頭部を連続で叩くことにより、そのココロの在りかを元に戻す魔法のアイテム、精神入れ替えハリセン“ピエルガトワール”ってのが、なかったっけ?」
 言われてみれば、確かにそんなモノがあったような気がします。……おわぁっ、突然おぞましい過去が蘇ってきました。僕とザンスの精神が入れ替わって大変なことになったのを思い出しました。あのときは、本当にこの世の終わりだと痛感しましたよ。
「その魔法のアイテムで、ボクとこの“撲殺天使ドクロちゃんです”を叩けば、元に戻れると思うんだよね~」
「なるほどっ、さすがこの世界のファンッ。僕でも気が付かなかったのにっ」
「そんなっ。褒めんなって♪」
 めちゃくちゃ照れくさそうです。
「おっ、あったあったっ」
 ザンスの四次元胸ポケットから出てきたのは、昔の漫才には欠かせなかった大きなハリセン。コレで叩かれたら痛そうです。でも、実際はあまり痛くないんだよね~。
 シミコンさんはそのハリセンを見つめて、少し寂しそうに顔を緩ませましたがすぐに目をパチクリさせて、
「よしっ、じゃあ桜クンッ。スパ~~ンッと手っ取り早くやっちゃってよっ!」
「えっ!? 僕がですか?」
「他に誰がいるんだよ?」
 教室内を見渡してみます。確かに誰もいません。ザンスは気絶していますしね。
「桜クンの好きなドクロちゃんが早く帰ってきて欲しいだろ? さっ、早くするんだ」
「でっ、でもっ」
 差し出されたハリセンを軽く押し返しました。
「もう少しこの世界を堪能してもいいですよ? 僕が許可しますから」
「ダメだよ」
 <サァーーー>と、ザンスが割ったガラス窓から風が吹き込んできました。
「ボクはこの世界の人間じゃない。この世界に居てはいけない人間なんだよ。この体はドクロちゃんのモノ。早く持ち主に返さないとね。……まぁ確かに? そりゃぁまだこっちの世界を見てみたいさ、だけどさ、そうすると他のキャラにも会っちゃうよね? 静希ちゃんやサバトちゃんに、“この世界は小説の中の世界だったんだよ”なんて言ったら泣いちゃうよね? 絶対に。だから、ボクはもう“ボクの世界”に帰るよ」
 そして春の女神が降臨したみたいに、シミコンさんは見るもの全てを魅了するような笑顔で微笑みました。ドクロちゃんの顔ですけど、何だかシミコンさん自身の笑顔が見えたような気がしました。
「それにね……」
 なぜかシミコンさんの表情が青くなっていきます。
「思ったんだけど、この世界に“ドクロちゃんになったボク”が居るのなら。ボクの世界には“ボクになったドクロちゃん”が居ると考えるのが妥当だとは思わないかいぃ?」
 後半に行くほど、シミコンさんの口調は震えていきました。
「た……確かにっ」
 僕も同意見です。
 恐ろしいことですが、考えられなくは無い推理です。もし仮にそんなことになっていたのなら、
「あちらの世界では、シミコンさんは何処に居たんですか?」
 「う~ん……」と悩んでから、
「確か、家のベッドで寝っ転がってこの本を読んでいたんだよ。で、気が付いたらここに居たから……」
「ドクロちゃんも気が付いたら、シミコンさんの家のベッドに寝っ転がっていたと考えるのが妥当ですね」
「だろ?」
 すでにシミコンさんの顔は真っ青です。
「だとしたら――」
 冷や汗まで出てきています。
「――“ボクになったドクロちゃん”はパニックになって、何かを仕出かすに違いないんだよ」
 目が覚めたら男の子になっていた。それにここが何処か分からない。
 ドクロちゃんがそんな状況に陥ったのなら……、あぁっ、想像するのも恐ろしいッ!
 二人して、滝のような汗が滴り出てきました。<ザー>
 シミコンさんは僕も動揺しているのに気が付いたのか、
「だから早くボクは元の世界に帰らないといけないんだよ。本当はもっとここに居たいけど、元の世界に返ったときに犯罪者には成っていたくは無いからね」 
「分かりましたッ。それ貸してくださいッ」
 魔法のアイテム“ピエルガトワール”を渡してもらいました。少し重く感じました。前に持ったときは、こんなに重いとは感じなかったはずなんですけど。
「桜クン……、キミで出会えて……本当に嬉しかった」
「はい、僕もです。シミコンさん、会えて嬉しかったです」
「これからも、ドクロちゃんと楽しく過ごして、読者のボク達を盛大に笑わせてくれよな?」
「はははっ、努力はします……」
「健闘を祈るッ」
「了解でありますッ」
二人で敬礼し合いました。
そしてシミコンさんは、机の上に本を置くと、その机のすぐ横に立って目を閉じました。
「もしこの本がこの世界に残ってしまったときは、あまり宜しくないから燃やしてくれよ」
「はいっ、僕もそう思います」
「任せた」
 ニコッと綺麗な歯を見せて、シミコンさんは微笑みました。僕も負けじと微笑み返します。
「じゃあ……、やってくれ……」
 固く目を閉ざしたシミコンさんは、それからは何も喋りませんでした。
 僕は草壁桜。この“撲殺天使ドクロちゃん”の世界の住人で、成績優秀眉目秀麗。完全無欠で将来有望な中学二年生です。
さぁ、僕を殴って!<もっと!>
この世界で生きている志高い一人の人間なのです。決してこの存在は嘘じゃないんです。シミコンさんは、この世界のこと……、そしてこの世界が嘘じゃないことを教えてくれました。この話を読んでくださる皆さんのココロの中に、僕達は確かに存在しているんですよね? ね? そうじゃなかったら、うりゃああぁぁ~。潜り込んでやるぅぅ~~。何処までも~~。
 そうやって僕達は永遠に遊びます。この世界で。
「ありがとうございました。シミコンさん……」
 いろんな思いが交差する中、僕は魔法のハリセンを振り下ろしました。

――――――スパーンッ! スパーンッ!

 叩かれたシミコンさんと本は次の瞬間、まばゆい光に包まれてその光が大爆発ッ! 教室中に光が溢れて行き、僕の視界を遮りました。
「……え?」
 光が消えると、そこには……、
「ドクロちゃん……だよね?」
「さ……桜クンッ!?」
 涙目のドクロちゃんが体育座りでこっちを見上げていたのですッ!
「ふえぇぇ~~ん! 桜クンッ、桜クンだ~~ッ!!」
「ぐぇぇぇ……、苦しいよ……」
 飛び跳ねてそのまま僕の胸に飛び込んできたドクロちゃんは、その外見からは想像も付かないような怪力で<ギチギチッ>と僕の腰を砕くように腕をキツク締め付けてきたのです。
「出ちゃうッ。中身が出ちゃうッ」
「桜ク~~~ンッ! ふぇぇぇ~~~んっ」
 いっこうに泣き止まねぇ! このバカ天使ッ! 
「ドクロちゃん? いったい何があったのっ?」
「うっぐ……えっぐ……」
 まだ泣いてはいますけど、ドクロちゃんは落ち着いてくれたのか万力な様な力で締め付けていた僕を解放してくれました。そして涙目でこっちを見上げながら、
「桜クン……、聞いてくれる? ボクに起こった信じられないような出来事をッ」
「うんうん。聞いてあげるから話してごらん?」
「うん……あのね?」
 それは、僕とシミコンさんが恐れていたことそのものでした。
「目が覚めたらね、何だか知らない部屋にいたんだよ。しかもねっ、体がボクじゃなくて男の人になっていたんだよッ。しかも下半身ハダカッ! 見てないけどそう感じたのッ。で、ほんとにワケが分かんなくなって、近くに置いてあった金属バットを持って外に飛び出したんだよ。するとボクの姿を見た人たち皆が悲鳴をあげてね、ボクの話を聞こうともしてくれなかったのッ。だからボクはさらにワケが分かんなくなって、目に映るモノや人に襲い掛かったんだよ。そしてしばらくすると、変な格好をした人たちが集まってきて、数人がかりで押さえつけられて変なところに連れて行かれちゃったんだよッ。だからボク、そこで悲しくて泣いていたの。そしたら」
「いつのまにかココに居たって言うの?」
「その通りっ♪ 本当に怖い“夢”だったよ!」
 そしてまた抱きついてきました。今度はソフトに抱きついてきたので気持ちよかったです。それにしても、
「(夢か……。違う世界での出来事は、ドクロちゃんには夢だと解釈されたのか。まぁそっちの方がいいよね。それは僕にとっても同じこと。あれは全て夢だったんだ……)」
 僕は、先ほど本が置いてあった机の上を見ました。
 ……本は無かったです。
「(良かった……。本もあっちの世界に行ってくれたんだね。これでシミコンさんは、留置所の中にいても、本を読むことによってヒマを紛らわせることが出来るね)」
 シミコンさん、マジでご愁傷様です。貴方には深く同情します。出来ることなら、もう一度御逢いしたいと思います。それまで、僕達の世界を見ていてください。それぐらいの罪ならすぐに留置所から出てこれますよ。まぁ世間の目は冷たくなったでしょうけど……。
「でも、本当に怖い夢だったよ。桜クゥ~ン!」
「うわぁっ」
 また涙を流してこっちに飛んできました。僕はドクロちゃんを抱きとめようと、その手を伸ばし、

――――――ガラッ

『………………』
 世界が停止しました。
「桜―ッ!(吉田)」、「お前ってヤツは……!(木村)」、「ウキーッ!(松永)」「ドクロちゃんに何しやがったッ!?(増田)」、「僕がいながらー!(西田)」
 授業が終わったのか、我がクラスメートが帰ってきてしまいました。問題なのは、泣いているドクロちゃんと抱き合っている状態で帰ってきてしまったことです。案の定、バカなクラスメート達は勘違いをしています。
だけど、そこに一人、バカじゃない僕のクラスメート……じゃなくて、僕の幼馴染で大好きな静希ちゃんがいたのが痛恨の痛手でした。
「静希ちゃんッ!? これには深い深い深海よりも深い事情があって……」
「あっ、別に気にしないで?<スタスタ……>」
「あぁっ! 行かないで!」
「うっうぅ……、桜クゥ~ン」
「クソッ! 離れろこのバカ天使ッ!」
 <ピクン>とドクロちゃんの肩が震えました。
「……桜クンが、この大量のマヨネーズで、ボクの……」
 ナゼだッ!?
 気絶して床に倒れているザンスの胸ポケットの中から、いつの間にか大量のマヨネーズの容器が溢れ出てきていました。それを指差したドクロちゃんは、「よよよ……」とワザとらしく言いながら、床に泣き崩れてしまいました。
「桜―ッ!(吉田)」、「お前ってヤツは……!(木村)」、「ウキーッ!(松永)」「マヨネーズでいったい何をッ!?(増田)」、「僕もしてー!(西田)」
 “バカ天使”と言ったことに腹を立てたのか、ドクロちゃんは僕を見上げて<ニヤリ>と子悪魔的な笑みを浮かべました。こんなドクロちゃんが、僕は大嫌いです。だけど、大好きです。このギャップが……たまらないんだよね? ね? だから、またお逢いしましょう。それまでは、この残虐な音を聞いてお過ごし下さい。では……、

――――――ズカボコボコガンザシュザンッ!

――――――☆





☆☆ここからはおかゆさん、復帰して執筆再開です!☆☆

「よかったね桜くんっ!」
 いつもよりだいぶ早すぎる帰り道、アルカディア商店街。時刻は十二時を過ぎて間もない頃でしょうか。隣を歩く天使の少女はうきうきと両手いっぱいのマヨネーズを抱きしめています。
「よかないよこんなのは……!」
 僕はため息をついて肩を落とし、うなだれます。
 ――あの後、僕は逃げるようにして「ああッ! ドクロちゃんこんなにも熱が!! だから家で寝ててって言ったのにー!」叫んでから天使の少女のおでこをさわり、「今家には誰もいないんです! 僕、送っていきますから!!」と、早速手続き、こうして家路についているのです。若い二人はこのような手段でしか、あの場を収拾するコトができませんでした。
「ねぇねぇ桜くんっ。おなか、すかない?」
 てくてくとコチラに歩み寄る彼女は、お皿を空っぽにしてしまった子猫のように僕を見上げます。そういえば、僕らは給食を食べ損なっているのです。
「しかたないなぁ……じゃあ、補導されないように気をつけながら、どこか寄る?」

 END♪

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