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”ツンデ・レデン・刹ッ”改 第十五幕~第十八幕

 
 やっと18幕まで直し終わった……、あと60ページか……がはぁっ。
 かっ、必ずコレを投稿して、自分の力を試してやるんだぁ……だぁ……(エコー)

 ってなワケで始まります。



第15幕  家庭訪問



「はははっ、でもまぁさっきは大変な目にあったぞ」
 俺様は教卓に立ち、戻ってきた女の子達にさっきの出来事は「俺様にとっては軽いもんさ」的な雰囲気をかもし出しながら、立派な大人の代表として爽やかに言ってやった。まぁ、誰もこっちを見ていなかったがなッ!
「新谷先生、先ほどはすいませんでした……、そして大丈夫ですか?」
 すぐ前に座っている北条が、自分が原因で起こした騒動について申し訳なさそうに謝ってきた。
「はははっ、気にすること無いって。想定の範囲内さっ」
 時雨はさっきから意識をずっと失っている。しょうがないのでパイプ椅子に座らせておいている状態だ。
「ふぅ……」
 頭から滴り落ちてくる血を拭い、俺様は窓際の前から2番目の席に座っているレデンにチラリと目を向けた。
「全く……」
 レデンは後ろの席に居る“九尾 紺(きゅうび こん)”と楽しそうにしゃべっている。
「(良かったな、レデン)」
 次にレデンの前の席に座っているヤツに視線を移した。そこには奇妙な流線型未確認物体を頭に飼っている“銀杏 ソラ(ぎんきょう そら)”と言うアマが座っている。コイツは先ほど俺様を吹き飛ばしたヤツだ。
でだ、実は話が少し飛んでいる。ついさっきまたちょっとした騒動があったんだ。騒動のキッカケは、レデンが「この席がいいニャ~」とワガママをあげて、窓際の一番前の席に座っていた銀杏と関わってしまったことから始まる。

――――――(回想シーン・スタート)

「レデンはこの席がいいニャ~」
みんなが戻って来てすぐに、レデンの席を決めるための話し合いが行われた。
「レデン……、この席がいいニャ~~」
最初から空いていた窓際の一番後ろの席をレデンに薦めたのだが、レデンはどうしても一番前がイイと言う。しかしそこには、先ほど俺様を吹き飛ばした未確認線形物を頭に飼っているあのアマがいやがったッ!(後半ブチキレ)
レデンはその席に両肘を突いて、少し低い位置からそのアマを上目遣いで見つめていた。
「……………」
しかし、頭に付いているヤツがウネウネと伸縮運動しているだけで、そのアマは眉ひとつ動かさずに、窓の外の風景を眺めていた。
「(てめぇ、ウチのレデンを無視するたぁいい度胸じゃねぇかッ!)」
怒りに心が支配されるような現象に襲われて、俺様はいてもたってもいられなくなった。
「えっと……、確か、銀杏……、って言ったっけか?」
ポケットに手を突っ込みながら、まるでヤンキーがカツアゲでもするかの如く銀杏に歩み寄った。しかし、このアマは見向きもしなかった。まぁ……、だから俺様はちょっとだけキレちゃいました。
「ふっ……、済まないが、そこ……、ど・い・て・もらえないか? 邪魔なんだよ」
思いっきりイヤなヤツを演じてみたぜっ。って、べ……別にさっきのことを恨んでいるわけじゃないからなっ! か……勘違いしないでくれよなっ! 俺様はもう大人……、そんなハシタナイ事は思わないつもりだったがやっぱりさっきの恨みだぁ! へっへっへっ、俺様を“邪魔”扱いした報いを受けろ。ケッケッケェッッ!
「……ぷぷっ」
どこから聞こえてきたのかは明白だった。
人を小バカにした笑い声を漏らしたのは、銀杏の後ろの席に座っている赤髪ショートの女の子だ。ジッとこちらを睨んでいる。相手を見下して見ているかのようなイヤな目つきだ。しかもその瞳は紅蓮の如き真紅色。それを見た者を引き込む魔力も持っている。だが、それ以上に驚いたことがあった。それは、何故かレデンのオプション(ネコ耳+ネコ尻尾)よりもツンツンと尖った耳、俗に言うキツネ耳と、フサフサでモサモサな尻尾、俗に言うキツネ尻尾がそれぞれ頭とお尻に付いていたことだッ。うぉぉ~っ、触ってみて~~ッ!
生徒名簿で素早く調べてみた。
コイツの名前は九尾 紺(きゅうび こん)。
このクラスにいるってことは、北条と同じように危険な存在。油断してはいけない。
「アンタ……」
九尾の紅い紅い眼が俺様を貫くのかと思った。
「危ないぜ? ソラちゃんを怒らすと」
ニヤリと九尾が微笑んだ。これには正直ムカついた。
「危ない? へぇ~、どう危ないのか教えてもらいたいな」
「……だってさ、ソラちゃん?」
何の合図かは分からないが、九尾は銀杏の肩をポンと叩いた。だが、それがの何の合図かは身をもって知ることになった。

――――――グニュンッ!

銀杏の頭に寄生している未確認線形物が……、後ろにうねった。

――――――シュバァッ!

「うぉおぉっ!?」
反射的に顔を左に傾けた。それが幸いした。何故なら、さっきまで俺様の顔があった空間をその未確認線形物が貫いたからだ。
「ギギギギギィ……」
耳元から変な音が聞こえる。対抗して俺様も「ギギギ」と擬音語を出しながら、首を後ろに回転させて“それ”を見た。そして、“それ”もこっちを見つめていた。いや、目は無かったが、何かに睨まれているプレッシャーを感じると言った方が正しかったな。
「おい、銀杏……。これは一体何なんだ?」
この物体からは目が離せないので、俺様は銀杏に背を向けたまま答えを求めた。
「……“エリザベス”ちゃん……」
「どうでもいい答えありがとう」
「……どう致しまして……」
「褒めてねぇよっ!」

――――――シュビハッ!

目を一瞬“それ”から逸らしてしまった。その結果、俺様の見ている風景が横へムーンウォーク。俺様を見ていた皆の視線も横に水平移動。薙ぎ払われた体が宙を飛ぶ。
「ぐふぅッ! 油断したぁあぁぁ~!! ひぃぃぃッッ~~~!?」
迫り来る廊下の窓ガラス。とっ止まれねぇ!

――――――ガッシャ~ンッ!

「ぎゃぁぁぁ~~~…!」
悲痛な悲鳴は校舎の外へとフェーズアウトして行った。
「エリザベスって言うニャ? この子?」
「……うん」
「可愛いニャ~♪」
ナデナデ。
「ギギギィ♪」
「エリザベスちゃん……、嬉しそう?」
「ギギギッ!?」
「エリザベス、アンタ……、照れているな」
「ギギギッ!」
「きゃっきゃっ、照れるな照れるなっ」
「ギギギッ! ギ……?」

――――――ズルリ……

変な音にエリザベスが気づいた。
「ギギギィッ!」
「どうしたの、エリザベスちゃん?」
「ギギギィッ!」
エリザベスがある場所を示す。そこには…、

――――――ズルズル……

すでにガラスが粉々に飛び散ってしまった窓枠から……、なんとッ! 俺様が這いずり出てきていたのだったッ!
「はぁ……はぁ……ッ! しっ、死ぬかと思ったぜッ!」
ガラスの破片が全身に突き刺さっている状態ではあるが、
「フンムッ!」
あらん限りの力を解放し、体に突き刺さっていたガラスの破片達を吹き飛ばした。
「なるほど……、理解したぜ。こんな感じで校舎がボロボロになっていくんだな」
俺様たちが今日この場所に来てから、すでに窓ガラス2枚、教室の扉1つが大破している。しかも今日と言う日はまだまだ終わらない。思うに、今日でこの校舎は崩れ去るだろうな。
「(ふっ、上等……)」
だけど俺様は挫けない。だって男の子だもん。
「おいエリザベス」
「ギ?」
「なかなかやるじゃないか」
「ギギギッ♪」
嬉しそうな? 歯軋り音がエリザベスと言う物体から出てきた。エリザベスの先端は何故かリボンで縛られているが、その先っちょの小さな穴から音が出させるようだ。
「エリザベス、悔しいがお前の存在を認めてやるぜ。お前が何故存在しているのかなんて深く考えないことにした。って言うか、考えたくないっ」
「ギ……?」
首?を傾げるエリザベス。
「はははっ、でもこのリボンはちょっとダサいな。取ってやるよ」
「ギッ!?」
そのリボンはまるでエリザベスを封印しているかの様なオーラを放っていたが、格好悪いのでそのリボンを取ってやろうと手を伸ばした。
「ダメ……」
拒絶の反応に手が止まった。
「絶対にダメ……」
銀杏は強調して再度答えると、エリザベスをマフラーの代わりにでもするように首に巻きつけた。めっちゃ暖かそうだ。
「何でダメなんだ? ぶっちゃけダサイぞ?」
「……も……」
銀杏はしばらく黙ってしまったが、
「……漏れちゃうから……」
「ギギギィ……」
 漏れる? 漏れるって……、何が?
「まっ、まさか……」
「……………」
「言えよッ! 気になるだろうがッ!」
「……………」
「ウォォォォ~! 気になって今夜寝れねぇ~~!」
俺様を無視して、銀杏はまた窓の外をボンヤリと眺めていた。
「この席がいいニャ~…」
マイペースなのはレデンも同じだった。ずっと銀杏の席の前にしゃがみ込んで同じセリフを復唱していた。
「まだそんな事を言っているのか、早く一番後ろの席に行け」
「ヴゥゥゥ~~」
「そんな声を出してもダメだ」
「ニャゥゥゥ~~☆」
「萌え声とウルウルの目のコンボで攻めてもダメだ。諦めろ」
「ちっ、ニャ……」
やっと諦めてくれた。これで良いんだ。人生は自分の思う通りには行かないということも在ると、レデンは身をもって体感しなければならない。じゃないと、いつまで経っても自己中心的で猟奇的なネコミミ少女のままに成っちまう。だから俺様もこれからは厳しくしなければならない。それがお前のためになるんだ。人の痛みが分かる、立派なネコミミ少女に成れよ……。ってか、早く俺様の命令を忠実に守るネコミミメイドに成れ。
「ちょっと待てよ」
 九尾が動いた。
「ニャッ!?」 
意気消沈して今にも泣き出しそうなレデンの歩みを、九尾は腕を掴んで止めていた。
「レデン……ちゃんだったよな?」
 <ズズズー>とレデンが鼻を啜る。
「そうニャ……、でも今は傷心中のレデンだニャ……」
その証拠にネコ耳がペタリと萎れている。コレが元気の無い証拠だ。
「ぷぷっ、まぁせっかくオレたちのクラスに来たのに何もお祝いが無いのは引けるからな。よしっ、オレの席で良かったら譲ってやるよ」
「ほ、本当ニャッ!?」
レデンご自慢のネコ耳が天を向いた。
「あぁ、本当の本当だ。というワケで、“凪(なぎ)”ズレてくれ」
「御意」
九尾の後ろの席に座っていた武士風の女の子は、机に掛けていた日本刀を手に取り、
「すまぬが、皆ズレてくだされ」
そう言って、後ろの席の女子達に体を向けて頭を下げた。すると誰も文句の一つも言わずに立ち上がり、あっという間に窓際の前から2番目の席が空いた。
「ありがとうニャ、えっとぉ……」
「九尾 紺だ。“コン”でいい」
「ニャっ。じゃあコンっ、レデンもレデンでいいニャっ」
「ぷぷっ、レデンかぁ~、良い名前だな~。よっしゃっ、これからよろしくなっ」
「皆よろしくニャっ」 
さっきまでは悲しみで顔を曇らせていたのにもう晴れやがった。レデンにはやっぱり笑顔が似合うな。そんな笑顔で見つめられたら誰だって、

――――――『ようこそ、モウマンタイ組へっ!』

こんな風にレデンを受け入れてくれるさ。
「よ~しっ、じゃあ次は俺様にその歓迎の言葉を言ってみよ~。じゃあ行くぞ~、イチ、ニー、サン、はいっ……あれ? もしも~し? 聞こえないぞ~? みんな聞こえているか~? もしも~し? 無視ですか~?」

――――――(回想シーン・終わりっ)

 思い出したら怒りが湧き戻って来た。
「おい時雨先生っ! いいかげん起きろっ!」

――――――プニィィィ~!

思いっきり時雨の頬っぺたをつねってみた。
「あぐぐぅぅぅ~ッ!?」
目を覚ました。
「痛いですよ和也さん、じゃなくて新谷先生」
「やっと起きたか」
目をこすっている時雨はまだ眠そうだったが、俺様の姿を見て、
「ひゃっ? 新谷先生、そのケガは何ですか?」
「あぁ、ちょっとガラスの精霊が急に襲い掛かってきてな……。アレには流石にビビった」
「マジでッ!? それは大変でしたねっ」
誰でも冗談と分かるモノを真に受けるなよ。恐らくまだ寝ぼけているのだろう。脳が正常に働いていないようだ。いや、元から正常に働いていないような気がする。死んだ脳を持つ女……時雨……、おぉっ、ちょっとカッコイイ。
「じゃあ、私が代わりに授業をしますね」
「……できるのか?」
「はいっ」
 なぜこんなにも自信満々なのかは知らないが、ここは時雨に任せるしかなさそうだ。残存している俺様のライフゲージはレッドゾーンに突入中でもう動けない。
「あぁ……頼む。血も滴るイイ男である俺様はちょっと疲れた」
「はい、任せてくださいっ」
時雨がパイプ椅子から退いたので、今度は俺様がそこに座った。
「(し…死にそう…)」
休憩しないと体が待たねぇ……。うぅぅ……眠くなってきた。
「では皆さん~、授業を始めますね~。えっとぉ、まずは出席を取りますねっ。って、全員いますね~、てへっ」
時雨のアホな声が子守唄になってしまった。

――――――――――☆

 気づくとそこは深い、深い、夢の中。
 深すぎて上が見えない夢の中。
 深すぎて下も見えない夢の中。
 ただ浮いている。フワリフワリ。体が浮くのは夢の中だけじゃない。どこでも浮いていられる。ただそれに気づかないだけで、自分は浮いているんだ。
 でも、ここは夢の中だって分かる。何故なら何も無いから。自分しか居ない世界なのだからな。ふっ、独りは寂しいぞ。独りは寂しかったぞ。もうアレはイヤだな。騒がしいのがイイ。夢の中は独りだから殺風景。どんなに素晴らしい夢でも所詮は刹那の舞台。喜劇も悲劇も一瞬で終わる。だから早く皆のところに戻るぞ。終わらない舞台を演じるんだ。傍観者は待ってくれないぞ。……あぁ……誰だよ、俺様の体を揺するのは。
「……ず……先……」
「んぅぅっ…?」
「早く起きてください。ホームルームの時間ですよぉ」
 目覚ましには不適切なヴォイスの持ち主だな。余計に眠くなる。
「こうすれば起きるニャッ<ザクッ>」
「ノォォォォ~~~!?」
言葉では表現できない驚きと痛みが急に襲い掛かってきた。
あのなぁ~~、寝ているやつを起こすのは、普通はそいつの頬っぺたを指で軽く<プニッ>と突っつくぐらいだろ? だがな、レデンが俺様にやりやがったのはそんな優しいものじゃない。頬っぺたを爪で突き刺したんだ。
「殺す気かぁあぁあッ!?」
「殺す気ニャァアアッ!!」
「逆ギレなのかぁぁッ!!」
 そんな感じでしばらくレデンを追い回していたが、窓の外の様子が目に入ってきて足が止まってしまった。
「えっ?」
 オレンジ色の夕焼けが綺麗だった。アレ? おかしいぞ。でもまさか……、
「……いま何時だ?」
 少しの間だけ仮眠をとるつもりだったんだ。昼休みには起きて、レデンたちと一緒に楽しく昼飯を食べてみたかった。それがちょっとした楽しみだったんだ。だけど、
「何を言っているんですかっ、もう放課後ですっ」
時雨の怒り気味な様子を見て、レデンと九尾はお互いが顔を合わせながら失笑していた。俺様が寝ている間に、二人はすっかり仲良しになったようだ。萌え耳付き娘同士、何か通じるものがあるのだろう。ってそんなことよりも、
「マジでっ? 俺様ずっと寝ていたのか?」
「はい、ず~~っと寝ていましたっ」
こっちに人差し指を突きつけて、子供を躾けるように言いつけてきた時雨に殺意を覚えた。
 それにしても俺様は朝から夕方までずっと寝てしまっていたのか……、何だかもったいないことをしたような気分だ。朝、レデンや銀杏からダメージを喰らい過ぎてしまったので、回復にここまで時間が掛かってしまったのだろう。
だがほら見てくれよ、この傷跡一つない綺麗な体を。寝れば傷が治るなんて便利な世界だよな。
さて話を戻そう。えっとだな、もう放課後ってことは分かった。だが、そうなると、
「ってことは、時雨先生が一人でずっと授業をしていたってことか?」
 時雨の口が、上弦の月みたいにニンマリと輝いた。
「はいっ、新谷先生に“任せた”と言われましたからねっ。がんばりましたよ、私はっ」
「そうか……、“能あるBAKAは爪を隠す”とは、まさにこの事だったか」
「そんなっ、照れちゃいますよっ」
時雨は照れくさそうに両手を頬に当てて、「きゃっきゃっ」と騒ぎ出した。本当のバカがここにいた。
「時雨先生すごかったですよ」
むっ、この声は……貴様かぁーーッ!
「北条、何がすごかったんだ?」
フルートを吹くと、何故かタフなゴキブリが集まってきてしまう奇妙な体質の持ち主である北条は、時雨を尊敬の眼差しで見つめながら、
「時雨先生は教えるのがとてもお上手でしたし、私たちが何を質問してもちゃんと答えてくれました。時雨先生は立派な教師ですよ」
と、誇らしげに言った。
「北条さん……、ぐすっ……。あれ? 嬉しいのに……、涙が出てきます」
「それはやばいな。すぐに病院に行け。多分もう手遅れだろうがな」
「病気じゃないですっ。それよりも新谷先生っ、早くホームルームしてくださいっ。最後ぐらい担任らしくしてくださいよねっ」
「うっ……」
痛いところを突かれた。確かに、今日の俺様は一日中寝ていただけだ。痛たたぁぁ……。
「あぁ、分かったよ」
一日の締めくくりのホームルームぐらいは、担任の俺様がビシッと決めてやらないとな。
教卓に両手を置き、思いっきり深呼吸してから目の前に広がるカボチャみたいな連中に視線を送った。
「え~、今日は済まなかった。気が付いたら一日が終わっていたよ。俺様、結局今日は何もしていないな。はははははっ」
 何も反応が無いだろうなと思っていたら、
『そうですね~』
 嬉しいことに初めて二人以上の生徒から声が上がった。これはイイッ。最高の気分だ。ってか、レデンと九尾だけかよッ。
「俺様ってダメな教師かな?」
『そうですね~』
「悪りぃ……、それ止めてくれない? ちょっと落ち込むから」
『………………』
「無言もイヤだなぁ」
『そうですね~』
「もうどうでもいいや」
悲しくなってきた。こうやって先人の教師たちは辞めていったのだろうか? いや、これはさっきまでの状況に比べるとかなりマシな方だろう。返事が返ってくるだけでも嬉しい。さっきまでは無視百%だったしな。時雨のおかげでこのクラスの奴等も少しは心を溶かしてくれただろう。
だから決めた。
「だがなっ、今日一日何もしていないとなると、俺様の教師としてのプライドが許さないわけだ」
「ぷっ、今日から教師のくせに<ぼそっ>」
「何か言ったか、時雨先生ぃ!?」
「何でもないです~~」
このアマぁぁぁぁ……、まぁいい。今はこっちが大事だ。
「それでだッ。皆のことをまだ良く知りないことは今後の壁となることは必須。それを防ぐためにッ、今日からの放課後は毎日お前らの家を家庭訪問しようと思っている!」
『はぁぁぁぁぁ~~~!?』
 初めて全員から反応が返ってきた。やべっ、嬉しすぎて死にそうだ。
「どうした? 何か問題でもあるのか?」
「(新谷先生!)」
時雨が俺様の肩を引き寄せて、耳のすぐそばで話しかけてきた。
「(そんな暇は無いですよっ、私たちには大事な使命があります。今日から早速この学園の調査を……)」
「(まぁ待て、もしかしたらこの中に、“萌え忍”関係のやつがいるかもしれないだろう? だったら俺様とレデンでこのクラスを調査し、時雨は独自でこの学園を調べればいいじゃないか。そっちの方が効率はいいだろう?)」
「(あぐぅ……、確かにその可能性もありますが)」
「(だったらいいじゃねぇか。家庭訪問をすればこいつらのことを多少なりとも知ることができるし、萌え忍に関する情報も手に入るかもしれないぞ? 一石二鳥じゃないか)」
「(変な事したらダメですからねっ!)」
「しねぇよッ!」
つい大きな声を出してしまった。
「ぷぷっ、何だか訳アリなお二人さんだなっ」
「最近、二人の距離が大接近中ニャッ!」
「こらそこっ! 勝手に変な誤解を生むんじゃねぇよっ!」
「レデン、後で詳しい話を聞かせろよ」
「了解ニャッ!」
がっちりと手を合わせたレデンと九尾の姿が夕日に照らされた。端から見たら、それはとても綺麗な友情が芽生えた瞬間に見えるだろうが、俺様にはそれが悪魔同士の契約に見えた。
「九尾っ! 人の話は最後まで聞けよっ。俺様と時雨はただの」
「あん? ちゃんと聞いたぜ」
九尾の紅い瞳が<ギンッ>と睨みつけると、放射された視線が空気中の酸素や窒素を燃焼させながら俺様に直撃した。
「だから忠告しといてやるよ。家庭訪問なんて止めておきな」
「……何故だ?」
九尾の赤い髪の毛が、夕焼けの光に照らされてさらに赤くなっていく。
「どいつの家に行っても、必ず後悔するからだ」
「ふっ、残念だったな。俺様は後悔しない人間なんだ」
そう誓ったんだ。もう決して後悔しないと!
「ふ~ん……」
「何だよっ?」
バカにされているような気がして、ちょっとムカついてきた。
「だったら、オレんちに来てみるか?」
「……えっ?」
不意の申し出に困惑してしまったが、すぐにこれはチャンスだと気づいた。
「いいのか?」
「あぁ、来てもいいよ。だけど」
九尾が下を向いて「ぷぷっ」と笑い出した。
「必ず後悔させてやるぜ」
顔を上げて再び俺様を見つめた九尾は、とっても嫌な笑みを浮かべていた。





第16幕  九尾家



「コンコン~コンニャク畑で遊ぼうぜ~♪ コンコン~今夜は寝かさない~♪」
「ニャニャ~ニャんだか楽しそう~♪ ニャニャ~そんな声を出しても許さなねぇニャ~ッ♪」
「……………」
前を歩くレデンと九尾から、なにやら艶のあるメロディーが聞こえてくる。二人とも自分の尻尾を振り子のように揺らして完璧なリズムを刻んでいた。後ろから二人の尻尾の往復運動を見ていると催眠術に掛かる一歩手前まで引き込まれそうだ。だって二人して<フリフリ>とカワイイったらありゃしねぇ。
「ふぅ……」
どのくらい歩いただろうか。
火照ってきた体を冷やすために呼吸を整える。
「もうすっかり秋だなぁ」
徐々に赤色に染まっていく夕焼けにカラスが集団で飛んでいく。そして空を吹き抜ける風は、ときどき肩に木の葉を舞い降りさせる。
「木の葉か……、昔よく襲われたなぁ」
痛々しい記憶が蘇ってきたが、すぐに消し飛ばした。状況説明に入る。
俺様たちは今、萩原学園から歩いてニ十分ぐらいの距離の山中を歩いている。ちなみにアスファルトで補強もされていないような道だ。しかも結構急な斜面。ここまで登ってくるのにも一苦労だ。季節が夏だったら汗ダラダラで登山中だな。今が秋で助かった。
でもレデン達は余裕で登って行く。ちょ、早いってっ。
断じて俺様が運動不足でなまっているわけではないぞ。汗一つ掻かずに登っているレデン達がおかしいんだよ。
「おい、九尾っ」
「あん?」
レデンと変な歌を熱唱していた九尾だったが、不機嫌な口調に早代わりしてこっちに振り返った。
「一体いつまで歩かないといけないんだ?」
「もうすぐさ」
「それ五分前にも聞いたぞ」
「ゴチャゴチャ言ってないで黙ってついて来ぃや」
「来ぃやニャっ」
もう少しで唇と唇が当たるってぐらいの距離で、二人は「ニッシッシッ」と笑い合っていた。本当に仲がイイ。
「ほら、この階段の先さ」
ここからだとその階段とやらは見えないぞ。どれどれ……。
「げっ!?」
坂を数メートル上がっただけでこうも景色が変わるものなのか?
平坦な場所に出てこれでやっと楽な体勢になれると安直な考えはまかり通らなかった。
九尾が指差しているもの。それはとてもとても長い石段だった。
「これを登るのか?」
 幅の広い石段は所々が欠けていて足場としてはかなりバランスが悪い。段差が小さいので足幅が長い俺様にとっては登りづらいことこの上なしだ。しかも長いッ。長すぎる。千段あるんじゃないだろうか?
見上げるその先には赤い鳥居が堂々と聳え立っていた。とても綺麗だ。まるで炎で出来ているみたいに光を放っている。
 だが、今からこの石段を登るのは流石にダルイぞ。
「エスカレーターは何処かに無いのかっ?」
周りを探ってみたが、どこにも現代の文明利器を発見することはできず、俺様は絶望に包まれその場に膝をついた。
「マジかよ……」
コレを登るのか……。うんざりするほど疲れること間違いなかった。
「ぷぷっ、アンタはこれを登らずに一体どうやってあそこまで行くつもりだよ?」
「お前にオンブしてもらう」

――――――ザシュザシュァッ!

嫌な音を響かせながら、レデンと九尾の合体攻撃“グランドクロス”が俺様に炸裂した。レデンは天高く舞い上がり、上空から飛来して俺様の頭から腹まで一直線に縦に切り裂き、九尾は俺様の視界から一瞬で居なくなると、横から瞬神の如きスピードで俺様の胸を横に切り裂いた。
「ギャラボァッ!!!」
十字架の形の血飛沫が宙を描いた。ふっ……、世界の絶景百選に選ばれてもいいような光景だったぜっ!
ドサリと地面に崩れ落ちた俺様だったが、すぐに立ち上がった。
「死ぬだろうが、このボケ共ッ!」
倒れる途中、何だか気持ちイイ光が一瞬だけ辺りを包み込んだが、レデン達への怒りで何とかその光を薙ぎ払う事ができた。
「ちっ、生きているのかっ」
「ちっ、生きているニャッ」
「ハモるなぁッ!」
「おいレデン、こんなヤツ放っておいて行こうぜ」
「了解ニャ~、コン」
「無視するなーーッ!」
手をつないだレデンと九尾は、二人仲良く一段飛ばしで石段を駆け上がっていった。
「待て~っっ」
遅れてなるものかと俺様も後を追った。
数分後、
「死ぬぅぅぅッッ~!」
すでにレデンと九尾はこの石段を登りきり、姿はもう見えない。
俺様も半分ぐらいまではちゃんと立って登っていたが、途中からは這いずりながら登っていた。全身もうボロボロ。
「もう少しぃぃぃ」
 ノドはカラカラ。汗はもう出尽くした。でもそれだけのことをしたんだ。
 ようやく登り切った。
「よっしゃぁぁぁ……」
 だが、その瞬間に力は抜け落ち、まるでマラソンの起源になった兵隊さんのように倒れこんでしまった。倒れる先にあったものは……山のように積み重なった落ち葉だった。
何故そこに集まっているのかは分からないが、俺様の体を操っていた糸が切れてしまったので方向展開不可能。疲れきった肉体は盛大に落ち葉を撒き散らして胴体着陸、ズザー。そのままゴロリと仰向けになり、
「す~はぁ~! す~はぁ~!」
自然の恵みである“オーツー”を吸引開始。疲れた体に良く染みるぜぇ。
太陽はすでに沈み、辺りは薄暗かった。登るのに結構時間が掛かってしまった。
「お~、コレがさっき下で見た鳥居か」
仰向けになって見上げてみた。う~む、やはり近くで見ると壮観だ。寝っころがって鳥居を見上るとかなりの威圧感があり、上から襲い掛かってくるような圧迫感さえも感じるほどだ。
「よしっ、行くかっ」
休憩完了だ。落ち葉のベッドは石畳よりかは柔らかいので疲れは結構抜けてくれた。早くレデンたちの後を追わなければッ。
 その時、
<ザッザッザッ……>
「ん?」
変な音が聞こえてきた。俺様は空を見上げていたので、どこからその音が聞こえてくるか分からなかったが、何かを箒で掃いているような……。
<バフゥっ>
「うわっぷっ?」
何かが大量に俺様の顔面に撒き散らされた。うぺぺっ、口にちょっと入った。
顔に当たる感触はワザワザとしていてキモチワルイ。
「何だこれは……、落ち葉?」
見ると、それは赤や黄色や茶色が程よく混じった落ち葉。何故こんなもの大量に降り注いでくるんだ?
<バフゥっ>
また来た。今度は顔だけじゃなくて全身が紅葉に埋め尽くされてしまった。

――――――「よし、もうこの辺で良いじゃろう」

紅葉の間から大人びた女性の声が聞こえてきた。レデンでもないし九尾のものでもないな。

――――――シュッ

何かが擦れる音。これってまさか、

――――――ポイッ

何かが捨てられる音。
実際は聞こえるはずがないこの擬音語が聞こえるということはイヤな予感が……。

――――――メラメラメラ……

 俺様の予想を裏切らないこの世界が嫌いだ。
煙がどんどん視界に入ってきて灰色の世界が広がっていく。あっ、なるほど。
「何だ燃えているのか。そういえば何だか熱くなってきたぞ。って」 
「う~む、綺麗じゃの~」
「そうだな、母上」
「綺麗ニャ~」
そしてこの場にいる四人は、しばらくの間だけ幻想的な炎に酔いしれていた~~。
「殺す気かぁぁぁ~~~!<ボフゥゥアァッッ!!>」
酔いしれてねぇよ、このボケェッ!
火を纏った落ち葉を辺りに吹き飛ばしながら、俺様が炎中から華麗に登場。
「何事じゃっ!?」
火を放ったヤツが一歩後退して、突然姿を現した美青年をマジマジと見つめる。
「何じゃ、タヌキかぇ」
「違うわぁッ! 熱ッ」
火の粉がまだ服に憑依していたので、急いで消した。
「人をいきなり焼死させるような真似しやがって、アンタ一体何様のつもり……」
そこで脳内エラー発生。急襲警報急襲警報っ<フォォ~ンッ、フォォ~ンンッ>。「皆の者、配置に着いたか? 状況を報告せよッ」、「はっ、報告いたします」、「巫女サンですッ、巫女さん~~ッ」、「落ち着け、とにかく落ち着け」、「み、巫女さん~~ッ」、「この理性はもうダメです。上官殿、百聞は一見にしかず、あちらをご覧ください」、「こ、これはぁぁぁっ?」
脳内パニックがいつまで経っても収まらない。
何故なら、放火魔女性が身につけている服装、装飾品は。俺様の大好きな……、
「み、巫女さんッ!?」
そう! 白と朱で統一された日本人女性特有の巫女装束。それは聖女の証であり、日本男子の夢のコラボレーションマジカルアタックスゥイートミラクルゥ! 奇跡の服装なのだ。しかも、この衣装を着る事ができるのは細身で髪の毛がとてもスラーっとしている女性に限るのだッ! そして今の目の前にいる巫女さんは~! まるで俺様の理想の巫女さんがそのまま出てきたような妖艶なビバッ・巫女さんなのだぁぁぁ~!! 黒い瞳に、黒く長いスラーっとした髪の毛。その頭には黒髪を引きただせるギンギラギンにさり気ない金の装飾品。その体は抱きしめたら折れてしまうんじゃねぇかと思うくらい面積が少ない波線グラフ。あぁぁぁ~! 抱きしめたらダメかなッ!?
「どうしたのじゃ、このタヌキは?」
「あぁ! そんな目で……、そんな目で俺様を凝視しないでくれぇ!」
巫女さんの持つ神秘アイビームによって、体の奥底から激情が萌え上がってきた、
それに耐えられなくなった俺様は、石畳の上をみすぼらしいしくのた打ち回って精神統一に専念した。
「はぁ、はぁ、済まない。もう大丈夫だ」
そう言って立ち上がった俺様は、何だかとっても清々しい気分だった。
「母上、このタヌキは危険だ。下がっていてくれ」
巫女さんに近づこうとしていた俺様の前に立ちふさがったのは、赤い髪と紅い瞳を持ち、さらにはツンツンした耳とフサフサした尻尾まで持ち合わせている九尾だった。
「コン、助太刀するニャ!」
九尾に攻撃を仕掛けようとしていた俺様の前に立ちふさがったのは、エメラルドグリーンの髪と黒緑の瞳を持ち、さらにはフサフサした耳とシュルンとした尻尾まで持ち合わせているレデンだった。
「んっ? ちょっと待て。おい九尾、今お前なんて言った?」
「殺すって言ったぜ」
九尾の両肩の上には、赤いオーラが狐のような形相を成してこちらを睨んでいた。コエー。
「いや、そんなことは断じて言ってないと俺様は思う。確か今お前はこの巫女さんの事を“母上”と言ったんじゃなかったのか?」
「口の減らないタヌキだニャッ!」

――――――ザシュッ!

レデンの先制攻撃が俺様の頬をカスめた。
「いきなり何しやがるッ?」
「ほう、レデン殿はなかなかイイ動きをするのう」
「オレの友達だからな」
「うむ、それは何よりじゃ」
「レデンはコンのお友達ニャ~!」
<ザザザ~っ>と地面を足でブレーキしながら止まったレデンは、高々しくそう言った後、次の攻撃に移るために体制を低く取り鋭い爪を構えた。次の攻撃で“殺られる”と俺様は本能的に感じ取ったので、しょうがなく最終手段をとった。
「こらレデン! これ以上オイタが良すぎると今日の晩飯は無しだッ!」
「ニャにっ!?」
ビクンとレデンの体が震えた。そしてしばらく考えた後、
「くっ! 卑怯だニャ! このバカタヌキ!」
いつも美鈴が言っているような悪口が聞こえてきた。
「誰がバカタヌキだぁ~~!」
「変態ニャ~~!」
しばらくレデンを追い回していたが、疲れたので止めた。
「はっ? 俺様はこんなことをしにわざわざここまで来たんじゃない」
使命を思い出した俺様は、息を乱しながら九尾の母親と思われる女性に挨拶をした。
「はぁ……、はぁ……、どうも初めまして。俺様はモウマンタイ組の担任をしている新谷和也と申します」
「コンの担任?」
巫女さんは両袖に手を入れた状態で、九尾の顔を覗き込み、
「そうなのかえ?」
ちょっと腰を屈めて我が子に質問するお姿に、俺様は萌えてしまった。
「まぁ……一応……新しい担任だ」
「ふむ、コンの先生が家に来るなんて初めてのことじゃのぅ」
巫女さんは思いに耽っているのか、頬に手を当てながら大人の女性特有の誘惑スマイルを溢した。そして、そのスマイルを維持したままゆっくりと俺様のところへ歩み寄ってきたので心臓バクバクのドッキドキン。そのまま抱きついてくるのかと思って胸を広げていると、
「お初にお目にかかる。某はコンの母親で名は“恋火(れんか)”と申す。ここ“狐神神社”にて神主の職に就いておる。以後よろしゅう」
「はっはひっ、こちらこそ宜しくです。……恋火さんっ」
 恋火さんはゆっくりと、俺様は大げさに頭を下げた。
「(いや~、年上の女性って素敵だな~)」
そう思いながら顔を上げたのだが、
「ん~?」
と、恋火さんが俺様の顔を覗き込んでいた。すぐ側で、
「な、なんですか?」
つい一歩後退してしまった。あぁっ、何でこの時に顔を前に出さなかったんだ俺様はッ! この意気地無しッ!
「お主……、女難の相が出ておるのぅ」
「え?」
 患者に末期ガンと申告する医者のように、恋火さんは真剣度八十~九十%でズバリそう言った。そこで俺様はこう聞き返した。
「女難の相って何ですか?」
 すると恋火さんは、おちゃめ度百%のウィンクをしながら、手を銃の形にしてこっちに向けて、
「女性に嫌われるタイプじゃ<バキューン!>」
「イヤだぁぁぁ~~ッッ!!」
 この俺様が女に嫌われるタイプだとぉ? そんなわけ……、そんなわけが……あるような気がする経験があり過ぎて困るッ。
「よし、コンの担任なら“タダ”で御祓いして差し上げよう」
「――御祓い?」
「そうじゃ。九尾家に代々伝わる由緒正しき御祓いは、どんな厄も」
「母上がタダでッ!?」
この場に居た者の中で一番びっくりした反応を見せたのは、恋火さんの娘の九尾だった。
「何じゃコン。そんなに驚くことかえ?」
自分の娘に向かって、きょとんと惚けたように顔を傾げる恋火さん。それに対して九尾は、
「だって母上がタダで御祓いするなんて初めてのことだろっ?」
九尾は手をバタバタと慌しく動かし必死に母親に抗議していた。
ふっ……、お前は恋火さんの娘のくせに何も分かっちゃいないな。恋火さんは俺様の魅力に大満足したのでその見返りとしてタダで御祓いしてくれるって遠回しで言ったんだよ。そう、全ては俺様が悪いんだ。
「ふむ……、コンの担任が不幸になると、コンもイヤじゃろ?」
「全然OKOK~! むしろこの世から消滅して欲しいぐらい!」
ピョンピョンとその場で飛び跳ねる九尾に心底腹が立った。
「レデンもそう思うニャ~!」
九尾と手を取り合ってレデンも一緒に飛び始めた。俺様の存在って一体何なんだろうな?
「そうじゃったか。ではダメな担任であるらしい和也殿よ。まぁ何にせよ今回はサービスじゃ。タダで御祓いしてしんぜよう」
「……ありがとうございます」
何だか遣る瀬無い気分に陥ったが、一応お礼は言っておいた。恋火さんとは今後とも長い付き合いになりそうだからな。ふふふっ、ふふっ。
「では、こちらに参られい」
巫女装束と真黒の髪を華麗に翻して、恋火さんは境内の奥へと進んでいった。
「オレたちも行くぞ」
「了解ニャ~」
レデンと九尾は手を繋いで、仲良く恋火さんの後についていった。
「(あぁ……、俺様のレデンがどんどん遠ざかって行っているような気がする)」
新しい環境、新しい友達。
これらによってレデンの考え方、生き方も今までとは変わっていくだろう。俺様の側を決して離れなかった今までのレデンからしたら、それは凄い進歩だ。
「はぁ……、複雑だ」
恐らくコレは、親元を離れていく子供を惜しむ親の心情なのだろう。心が痛いぜ、苦しいぜ。
「――ふぅ……」
見上げた空はもう真っ黒だ。灰色の薄雲がスローで漂い進んでいく。あの雲のように、何の悩みも無くただ漂うことが仕事だったなら、人はどれだけ気楽で居られるのだろうか。
「御祓いねぇ……」
一体なにをされるのだろうか。そう思いながら石畳を歩き出したが、かなり禍々しい石像が道端に置いてあったため歩みを止めた。
「何だコレ?」
それは、石像というよりも石門。縦方向に半身を切られたキツネの石像が、道の両側からこっちに向かってガン視していた。高さは大体二メートル。体が左側だけある石像は道の左に、右側だけある石像は道の右にそれぞれ一体ずつ設置されていて、その各々に炎のような曲線を持った尻尾が五本生えている。そしてその内の一本同士が空中で弧を描いて繋がっていて、今からここを通る俺様に試練でも与えるんじゃないかという畏怖を纏っていた。
「狐神神社ねぇ……」
ふっ、少し寒気がするぜ。名前は胡散臭いが雰囲気は本物だな。今すぐにでもこの石像の表面を覆う石が<ビキビシ>と剥がれ落ち、その下から大昔に封印された化け物が出てきても何の不思議はない。
「ご主人様~! 遅いニャ~!」
 先に見える道場みたいな建物に着いたレデンは、初めて友達の家に来たせいか、かなり浮かれていた。
まったく……このアホっ。俺様のことはそう呼んだらいけないって言っておいただろうがッ。この記憶力ゼロっ。……あっ、でも、学校で“ご主人様”と呼んだらいけないで、もうここは学校の外か……、しまった、俺様が悪いのか? 
「おうっ、いま行くぞ~」
何事も無かったように、さり気なく事を進めようとしたが、
「おいレデン、何だ今の“ご主人様”って?」
 案の定、九尾が疑問に思っていた。
う~む、ここで俺様とレデンの関係がバレてしまったら、俺様はモウマンタイ組の奴等に『変態ッ、変態ッ、ロリコンッ、ロリコンッ、通報ッ、通報ッ』と行った流れで苛められてしまう。どうする、レデン? 
<チラリ>とアイコンタクト。伝わったか?
するとそれが伝わったのか、レデンはコクリとその細い顎を縦に揺らして
「レデンとご主人様は一緒に住ん……」
「<ガバッ>(レデンの口をふさぐ) おいおいレデン。もうバツゲームはこのぐらいで終わりにしといてやるよ。俺様のことをご主人様と呼ぶバツゲームは現時点をもって終了~。次からはちゃんと新谷先生と呼ぶように~」
「むぐぐぐぐ~」
 レデンはまだ何かを言いたそうにしていたが、それを眼力だけで制した。 
大人しくなったので口から手を離してやると、
「……と、いう訳ニャっ、コン。新谷先生をご主人様と呼ぶバツゲームをしていただけニャ。別に怪しいところなんて全然ないニャ」
「……そうか?」
 九尾は「いつ、何処で、どんなゲームをしたんだよ?」と言いたげな視線を俺様とレデンに交互に送った。
「そうそうっ、全然怪しくねぇぜ?」
「お前が言うと怪しいんだよ」
「ふっ、だったらレデンの言うことは信じるんだな?」
「……まぁな。友達だからな」
 その言葉に、九尾の後ろでレデンは頭を抱えて悶え苦しんでいた。
「和也殿、それにコンにレデン殿。早く中に入られい」
 木造の道場の中を見てみると、恋火さんが炎を背にこちらを手招いていた。
「は~い、いま行きっま~す。って暑ぅぅッ?」
 炎に照らされた巫女さんの魔力ある魅力に惹かれて中に入っていくと、肌が荒れそうな熱がここに充満していることに気が付いた。
「ここ暑くないですか?」
ツルツルの木の床板、低い三角、天井部屋の中央部分に置かれた焚き火。
夜の少し肌寒い気温が一変、真夏にサウナに入っているような感覚に陥る。
「ふむ……常人にはここは少しばかり暑いらしいのぉ。換気ぐらいするか」
恋火さんが壁にあったスイッチを入れると、<ウィィィ~ン>と三角天井に多数あった窓が一斉に開いた。充満していた熱気が夜空へと逃げていく。窓の外には微かではあるが星が見えた。もう少し経てばもっと光り輝く星が見えるだろう。
「妙にハイテクだな」
「では、和也殿。こちらへ参られい」
恋火さんは焚き火の前に立ち、いつの間にか手に持っていた幣(めさ)をクイクイと動かしてこっちに来いと命令された。
「は~い」
俺様はそれに釣られるようにフラフラ~と近づいた。
「コン達は好きに遊んでいていいぞえ」
「よしっ、じゃあレデン、こっちに来いよ。遊び道具がいっぱいあるぜ」
「楽しみだニャ~」
レデン達は部屋の右奥の襖を開け、合計四つの耳をピンと立たしたまま、怪しげな遊び道具がたくさんありそうな部屋の中へと消えていった。
「コンが友達を家に連れて来たのも、今日が初めての事じゃのぅ……」
レデン達の様子を眺めていた恋火さんは二人の姿が見えなくなったのを確認してからそう呟いた。
「えっ、そうなんですか?」
「うむ……、あの子には苦労させる」
それは俺様に言ったのか、それとも自分自身に言ったのか、それぐらい小さな声だった。
「和也殿」
「はい?」
「あの子には苦労させられると思うが、それはあの子のせいではない。私のせいなのだ。だから、あの子は責めないでやってくれないか? あの子は本当にイイ子じゃからのぅ」
真黒の、まるで黒真珠のような瞳が揺れている。恋火さんのこの言葉の意味がよく理解できないが、
「ドンと任せてください。俺様はあいつの担任ですからねっ」
「和也殿はお優しいのぉ」

――――――ギュッ

「へっ?」
手を握られた。
「恋火さんっ!? そんなダメだぜっ! だって二人はまだ出会ったばっかり。ココロの準備が……!」
嵐のように震え上がる心。だって、こんなの初めてだから……。
「何を言っておる。早く御祓いを始めるぞ」
少しだけ笑った恋火さんは手を離すと、幣を自分の胸の前に置いた。
「(そうだよな。やっぱり恋火さんは大人だぜっ。二人の関係はじっくりコトコト煮込みながら美味しくしていこうってことだなっ)」
俺様は恋火さんの心情をそう読み取った。
「では和也殿。女難の相を払い除けるために、今から“九尾式御祓い・術式その参”を行う。まずは……」
「――えっ?」
恋火さんに肩を掴まれた。ま……、まさかこのシチュエーションはッ!?
「上の服を脱ぐのじゃ」
「(えええぇぇえっぇぇぇ~~~ッッ!!?)」
そんなっ! さっき二人はじっくりコトコト煮込んでから食べ合うって内容の心通信が完了したんじゃなかったのかっ!? それとも俺様側の通信速度が速かっただけの話かッ!? おっ、いま遅れて通信が恋火さんから来たような気がするッ! レッツゴ~、レッツゴ~!
「分かりました。今すぐ脱ぎますねッ」
俺様はズボンに手をかけた。

――――――バコンッ!

ケリが華麗に入った。
「下は結構じゃ」
「……了解……」
とっても痛かったぜ………急所が。

――――――バタンッ

地獄の苦しみに耐えられなくなって倒れこんでしまった。この痛み、分かるよな?
でだ、あまりの痛さに地獄の底から死神が這い出てきてそのまま俺様の意識を持って行ってしまったんだ。
うぉぉいっ、返せッ、この野郎、それは俺様のだ。このまま逝ってなるものかっ、このっ、このっ、こ……。





第17幕  九尾式御祓い・術式その参



瞼が重い。
「うぅうぅぅ……」
それに足も痛い。手も痛い。んっ? 何だか縛られているような……。
「……へっ?」
状況が掴めなかった。
「えっ? 何で俺様は正座しているんだ? それに……」

――――――ギュギュッ!

「気のせいじゃなかったッ? 本当に縛られているッ? このっ……外れねぇッ! それに何故に上半身ハダカなんだッ!?」
両手は後ろで、両太モモは正座している状態で縛られていて、解こうとしても全く身動きが取れなかった。しかも上半身ハダカでどうなってんだい?
「和也殿、やっと目が覚めたか」
後ろから声。
「恋火さん、コレは一体どういうわ……」
ジュキュバタタタ~~ン、俺様フリーズっ、途中で声帯振動運動をシャットダウンッ。
はわぁわぁぁ……、聞いて驚くなよ。
振り向いた先から飛び込んできたもの。それは、
「恋火さん……、その両手に持っているモノはもしかして……」
とても長く黒い髪を靡かせ、和服姿が良く似合うスラリとした体型を持ち合わせている恋火さんは、「これか?」と自分が両手に持っているモノに目を向けて、
「うむ、ロウソクとムチじゃが……、何か問題でもあるのかえ?」
 問題あり過ぎだろうッ!
すでに火が灯されているロウソクからは赤いロウが滴り落としているし、ムチは丸めて持たれていなく、すでに垂れていていつでも振り下ろせます状態だ。
「むっ、危ない危ない」
自分の足にかかりそうなロウの滴を<サッ>と避けた恋火さんは、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「恋火さん……? あの……」
「ではこれより、九尾式御祓い・術式その参を執り行う」
その瞬間、部屋の中央で燃えている炎がより一層強く揺らめいた。ひぃぃぃ。
「あの……、やっぱり止め」
「るわけにはいかぬ」 

――――――スパ~ン!

「いってぇぇぇッッ!?」
思いっきりムチで背中を叩かれた。I・TA・SU・GI・RU!
「口答えするでないッ! コレも全て和也殿のためなのじゃ<スパーン>」
「ノォォォッッ、絶対そうは思わないっ! どう考えてもムチは必要ないっ!」
「これが九尾式御祓い・その参を始めるために必要な儀式なのじゃ。安心せい。次はこのロウを使って……」
「もっと嫌だぁ~!」
俺様は恋火さんから距離をとろうとして、床を転げまわりながら高速で移動した。が、

――――――ドスンッ

何かにぶつかった。
「邪魔ニャ、ご主人様」
そこに座っていたのは、レデンと、
「今、オセロ中だ。邪魔するな」
床に置いたオセロ盤を、座りながら真剣な眼差しで見つめている九尾だった。
「レデンっ、いま俺様ピンチなんだ。助けてくれないか?」
<ピクッ>とレデンの耳が動いたが、
「レデンもピンチニャッ。もうすでに角を2個も取られているニャッ! 大ピンチッ!」
オセロに夢中で構ってもらえなかった。
「か~ず~や~ど~の~」
目が軽くイっちゃってる恋火さんがすぐ後ろまで迫っていた。
「レデン! オセロと俺様どっちが大事なんだッ!?」
「カツオ節をくれるオセロ?」
「って、何故に疑問系で答えるんだよっ!? しかも意味が良く分からねぇ!」

――――――ポタリ……

「えっ?」
背中に何かが……、
「熱ぅぅぅッッ~~~!!」
あまりの熱さに背中が仰け反る。そう、まるで海老みたいに。
「ニャっ、角を取れたニャ~」
「ちっ、やばいな」
こっちを無視して嬉しそうに白を黒にひっくり返していくレデンが心底憎い。
「お前らぁ。助けろよ!」
背中がヒリヒリを通り越してズキズキしてもう最悪。
オセロをひっくり返していたレデンは、その動作を中断してこっちを見たが、
「こっちを助けろニャァッ!」
「逆ギレっ!?」
もう、レデン達に助けを求めてもムダだということが分かったので自分の力でどうにかするぜっ! 

――――――シュルッ

「えっ?」
そう決意した俺様に、ムチがまるで蛇神の呪いみたいに巻きついてきた。この縛り方は……まさか?

――――――ビシィッ!

「ぎゃぁぁぁっ~!」
きつく縛られて拘束完了。しかも何故か亀甲縛りだ。くっ……そこはダメぇ……!
「恋火さんっ? もうムチは使わないって先ほど仰いませんでしたっけっ?」
思いっきりムチを引っ張っていた恋火さんは、
「ん? これはただ和也殿を縛るために使用したまでのこと……。和也殿が抵抗しなければ使用しなかったぞえ」
「俺様のせいなのかぁ? 俺様のせいなのかぁっ!?」
「では和也殿、参るぞ」
妖艶な巫女さんの足音が前から近づいてくる。<ポタリポタリ>と液体が垂れる音と一緒に。
「ニャ~♪ 勝ったニャ~♪」
「ちっ、おいレデンっ。もう一回もう一回っ!」
「望むところニャッ!」
そちらは楽しそうで何よりだな。俺様もオセロ混ぜてくれよ。こう見えてもオセロにはちょっと自信があるんだぜ? さぁ、一緒にオセロを……、

――――――ジュ~~

「ぎゃあああああぁぁぁあああぁあぁぁぁぁ~~……」
肉の焦げる音がこの空間を支配する中、遂に御祓いと言う名を借りた世にも恐ろしい地獄の拷問が開始してしまった。ガクッ……(気を失う)

――――――――――☆

 ここは鳥居の下。階段のすぐ傍。
 松明が暗闇を照らす中、佇むのは四人の伸びた影。
オセロの第四戦が終わる頃、俺様に対する“御祓い”が無事に終わったらしい。気が付いたら鳥居に背をかけて座っていた。
「では和也殿。明日からもコンの事、どうか宜しく頼む」
精も根も何もかもが尽き果て過ぎて真っ白に朽ち果てていた俺様に向かって、恋火さんが何事も無かったように我が娘の事をこれからも宜しくとお願いしても、そんなことを俺様が快く引き受けるわけが無いだろう?
「コン。勝負はお預けだニャっ」
「あぁ、二勝二敗じゃ中途半端だからな。また今度なっ」
お前ら、結局ずっとオセロに夢中で俺様を助けなかったな。どんな悲痛なうめき声を上げても貴様らは反応ゼロだったな。俺様の意識が消失した後もテメェ等はずっとオセロをしていたんだな。よしっ、ストレスがUPしたぜっ。
「ふぅ……」
今の俺様は、背中の痛みに耐えながら何とか立っていられるといった状態だ。スーツを着ていると肌に擦れて激痛が走るのでスーツは肩に掛けている。白い上着一枚しか着ていないので何気に寒い。心も寒い。
「大丈夫ニャ?」
九尾と話をしていたレデンが、いつの間にか俺様の顔を覗き込んでいた。
「えっ?」
これってレデンが心配してくれたのか? やべぇ、泣きそう。
「あぁ、大丈夫だ」
何とか作り笑いができるぐらいの体力は残っていたようだ。俺様は優しくレデンに微笑んだ。

――――――ドンッ!

「ぐわっ!?」
背中に急な衝撃が走った。
「ぐわあぁぁぁ……」
さっきまでロウという危険液体に蝕まれていた背中から、全身に痛みが飛脚の如し神速で駆け走る。
「あっ、すまん。ぶつかった」
「てめぇ……」
ぶつかってきたのは九尾だった。うぅぅ、背中が痺れるほど痛ぇ……。
「お前どこに目を付けているんだよ? あぁっ?」
「そう怒るなってっ。ちゃんと謝っただろう?<ゴシゴシ>」
九尾はプチ謝罪しながら、右手の甲で自分の唇を拭いていた。ん?
「どうした? 何か口に付いたのか?」
上着にロウでも付いていたのだろうか?
「ん? 気にしないでくれ」
手をどかした九尾の口には何も付いていなかったので別に気にしないことにした。
ぶつかって来た九尾はレデンの方へと駆け足で近づいていくと、

――――――パシンッ

まるで選手交代するときに選手同士がタッチし合うみたいにレデンの手を叩いた。
「何なんだ一体?」
動物耳持ち同士の理解不能な行動だった。
「和也殿、しばらくは痛むと思うが、明日になれば痛みは引くであろう」
もうムチもロウソクも手放した恋火さんは、最初に会った時の様に穏やかな女性に戻っていた。ありがたやありがたや。
「あの、これで俺様はもう大丈夫なんですね?」
「うむ、これで和也殿の女難の相は消えた。安心せい。今日からお主はモテモテのウハウハじゃ」
ここまでして何も意味がなかったなら、恐らく俺様は発狂していただろう。
さてと、そろそろ帰るか。ハラ減った。昼飯食ってないからな。
「では今日はどうもありがとうございました、俺達はこの辺で失礼しますね」
「ニャ? もう帰るのニャ?」
「もう夜遅いからな」
「ニャ~……」
まだここに居たいという名残惜しいなキラキラ光線をこっちに撃出してきたので、その頭をクシャクシャと撫でてやった。すると、
「了解ニャ~。コンっ、また明日ニャ~♪」
「おぅっ、また明日な、レデンっ♪」
見ていて分かる。二人はたった一日で親友になったんだな。と、心底そう思った。
「帰りの道中気をつけての」
 恋火さんは、またまたいつの間にか取り出した幣を振り払い、旅人の行く末を案じるように祈ってくれた。俺様は敬礼しながら、
「はっ、気をつけて帰らせてもらいますっ」
「ますニャッ」
レデンが真似した。
「あっ、そうそう九尾。ちょっとお前に言いたいことがある」
「あん? 何だよ?」
俺様が手招くと、九尾は顔を顰めながらも耳を近づけてきた。キツネ耳が鼻を掠る。
「ハッハクシュ~ン!」
「てめぇ何するんだよッ!!!<ザシュッ>」
「ぐはぁっ、すっ、すまん! お前の耳がこそばくてっ」
「オレの耳をバカにする気かッ!」
「してないしてないっ。<シュンッ>」
「はっ!? いつの間に背後に?」
 今度はクシャミしないように気をつけて、
「……お前の言っていたことは正しかった」
今日は家庭訪問のせいで大変な目に遭った。九尾の言っていたことは正しかったぜ。
「だから言ったじゃないか」
九尾は尻尾で俺様の腰を<ビシッ>と叩くと、「あばよっ」と言い残し神社の奥へと消えていった。
「では」
背を向けて九尾の後を追う恋火さんに一礼した後、レデンが突然に手を握ってきた。
「ご主人様、早く帰るニャっ」
「えっ、あぁ……って」
<ドドドドドドドドッ!>
「手を離せ~~ッ!」
 引っ張る引っ張るッ、すごい力で。
「こっちの方が早いニャ~♪」
「シヌゥゥゥ~~~ッッ!!」
 月明かりだけが足元を照らす。その中を疾走するのは二人のみ。転んだらそのまま下界へ一直線。死ぬかもしれない。だけど怖くわない。レデンが手を握っているからだ。レデンが楽しそうだからだ。まったく……、世話が掛かる……。

――――――――――☆

死ぬかと思った。無事に地上に戻れて俺様は幸せだ。
「ニャ~♪ ニャ~♪」
レデンはずっとご機嫌フルパワーで、階段を暴走特急のように下っているときも、俺様が「歩かせろ~」とお願いして山道を歩いているときも、横に居るレデンからは鼻唄が聴こえいた。
俺様はずっとレデンと一緒に居る。“ずっと”と言っても数ヶ月程度だが、それでも俺様にとっては数年分の価値がある日々だった。それは今からもこれからも変わらない。幸せ……というのだろうか、すごく充実している日々だ。だから今の上機嫌なレデンを見ていると、今までの生活はレデンにとって充実した日々だったのかどうか分からなくなる。
「レデン……、学校は楽しかったか?」
「ニャッ!?」
今日の出来事を思い返していたのだろう。急に声を掛けられてびっくりしてしまったレデンだったが、
「とっても楽しかったニャッ」
満面の笑みで答えてくれた。“とっても楽しかった”か……。
「友達もできたな」
「うんっ、コンはとってもイイやつニャッ」
 今日までレデンには友達と呼べるヤツは居なかったな。知り合いも俺様と美鈴ぐらしいしか……。
「ご主人様……」
そろそろ家に着くといった感じのところでレデンが立ち止まった。
「どうした?」
辺りは暗く、静寂に包まれていた。外灯に照らされている道路は何の感情も齎されない。
「毎日が……」
レデンは手を後ろに組んでウジウジしながら、
「とっても楽しいニャっ」
夜空には星の光が散りばめられていて、とっても綺麗だ。
「でも、レデン一人じゃ何も出来ないから……」
レデンは一体なにを言いたいのだろうか。
「だからご主人様……」
風に乗ってレデンの香りがした。
「これからも宜しくニャっ」
そしてレデンはペコリとお辞儀をすると、下はコンクリートのはずなのに土煙を巻き上げながら、すごい勢いで走り去っていった。
「おいっ、レデン!?」
まったくの意味不明。だけど、
「ぷっ……くくっ……はははははっ」
笑いがこみ上げてきた。ったく、仕方の無いやつだな。本当に……仕方が無いやつだ。突拍子も無しに変なことを言いやがって。
まぁ、少しだけ……、さっきまでの憂鬱がどこかへ飛んで行ったな。
「これからも宜しくか……」
 俺様も言いたかったな。

――――――――――☆

「ただいま……」
我が家に帰って来られた……、戦場から無事に生還できたような気分になるのはきっと俺様が生きているからだ。
「おかえりなさいニャ~」
部屋からテレビの音と混じってレデンの声が聞こえてきた。あっ、そういえば、もうすぐで“ツンデレアタックNo1”が始まってしまう時間じゃねぇかっ! 疲れが消し飛ぶ。
「やばいやばいっ」
急いで靴を脱いでリビングへと向かう。だがしかしっ、
「あっ、おかえり」
リビングには、イスに座った美鈴も何故か居た。
「何だ、お前もいたのか」
「何だとは失礼ねっ」
あっという間に不機嫌な美鈴が出来上がった。まぁ、俺様はそんな美鈴を無視して担いでいたスーツをイスに掛けると、ノドを潤すために冷蔵庫を開けてお茶入りペットボトルを発見。一気に飲み干した。
「ぷはぁ~! やっぱ日本人はお茶だなっ」
大満足! あぁ~~体に染みる~~。
俺様は冷蔵庫を閉めてその場で背伸びをした。
「くぁあああぁぁ~~」
一日の疲れが背伸びによって抜けていくようだ。

――――――ガシッ!

「ん?」
美鈴が俺様の上着を背後から掴んでいた。
「どうした美鈴?」
何故か手が震えている。俺様なにかしたか?
「バカ兄貴……、これは何なの?」
「はぁ?」
振り向いて見てみると、美鈴は俺様の背中をじっと見つめていた。……背中?
「背中がどうかしたのか?」
「これよっ、これっ」
「痛ぇ痛ぇッ! 引っ張るなッ!」
美鈴が上着を引っ張ったので、御祓い時に受けた痛みがまだ残る背中に激痛が走った。
「見えないから何のことか分かんねぇぞっ?」
「だったら! さっさと脱げ!」
「うおっ?」
あっという間に美鈴に上着を脱がされてしまった。
「おいっ、一体何がしたいん」
「これよっ、これっ!」
「ぷはっ?」
顔に上着を押し付けられた。急いでそれを顔から離して何事かと手に持って見てみると。
「へっ…?」
そこには、
「このキスマークは何よッ!?」
そう、それはキスマーク。どういうわけか、上着の後ろに小さな唇の跡が赤く付着していた。何だコレ?
美鈴はそのキスマークを指差して、泣く子がもっと泣くような目つきで俺様を「あぁん?」と睨みつける。そんな風に怒られてもな、
「こんなの知らねぇよっ! 心辺りが全然……はっ!?」
<ピキーン>と電流が脳の左から右へと流れた。
「(こ、心当たりはあるッ)」
 美鈴に背を向けて今日の出来事を振り返ってみる。すると答えは簡単に見つかった。
アイツだ……。アイツしかいない。こんなことができたのはアイツだけ。九尾だけ。
今日のあの帰り際、九尾は意味も無くぶつかって来た。それにあの後、なぜか九尾は口元を拭っていた。あのときに赤色の口紅か水性マジックでも落としていたのだろう。ナゾは全て解けたぜっ! 道理で帰宅途中、レデンが俺様の背中を見てニヤニヤしていた訳だな。
レデンが九尾に入れ知恵でもしたのか? まったく……、困った子猫ちゃん達だぜ。恐ろしいイタズラを考えてくれる。だがまぁ、これぐらいの誤解なら簡単に解けそうだな
と思った俺様は、誤解を解こうと美鈴の真正面に体を向けて言った。
「おい美鈴。これはだな……、九尾という変な生徒のイタズ」

――――――ゴゴゴゴゴゴゴ……

「――へっ?」
美鈴の様子がおかしい。
小動物みたいに<プルプル>と震え、<ギリギリ>と歯軋りも絶賛稼動中。体全体を覆っているオーラは、赤色から黒色へと禍々しい変貌を遂げていた。
何が起こった? さっきまではこんな怒っていなかった筈だ。キスマークぐらいでそんなにキレるものなのか?
「バカ兄貴……、その……」
美鈴の腕がゆっくりと上がっていく。そして上がりきると次は、銃で横撃ちでもするかのように俺様の胸を指差した。
「――背中にある模様は何なの?」
「……背中?」
背中にある模様……、なるほど、今日の御祓いで恋火さんは俺様の背中に何かしらの模様をロウで施したらしい。で、その模様が美鈴は気になるわけと……了解した。
だが、自分の背中を見ようとしたが見える筈もなく、しょうがなく俺様はこの家で唯一鏡がある洗面台へと向かった。
「ちょっと待ってろ」
恐怖神化した美鈴をリビングに残し、洗面台へと駆け寄った俺様は、自分の背中を鏡に映して一体どんな模様が描かれているのか見てみた。
「………………」
鏡に映ったもの。それは鏡に逆に映ったとしても、すぐに理解することができるような単純な物だった。だけど決して理解したくないものだった。
俺様の背中には、

―――――― 女 Love ――――――

と赤く描かれていた。
「何じゃこりゃぁぁあぁあああぁぁッッッ~~~!!?」
ご近所さんに絶対聞こえてしまうようなでかい声で叫んでしまった。
「これがぁぁ……、これがぁぁぁ……!」
女難の相を払い除けるための御祓いなのかっ? だとしたら、とんだ災難だぜっ!
「家庭訪問なんてしなければ良かった……」
今になってものすごい後悔が襲い掛かってきたぜ。コレちゃんと消えるのか? もし消えないのなら……、
「……バカ兄貴……」
「ヒッ?」
この空間の温度がスゥーっと下がっていく。美鈴が扉を少し押して部屋の中へと入ってきたのだ。
「一体……、学校でナニをしてきたのよ?」
殺気に包まれまくった美鈴は、本当に破壊の権化のように見えるぜっ。
「キスマークは付いているし、変な模様が背中に浮かんでいるし、一体どんなことをしてきたのかなぁ~?」
<ボキボキッ>と手の骨を鳴らしながら、美鈴が近づいてくる。俺様は覚悟を決めた。
「ふっ、いいか、よく聞け美鈴よ。俺様は何もやましい事なんてコレっぽっちもしていないぜっ。でもな、そんな事をお前は信じないだろう? ふっ……、それでもいいんだ。お前に信じてもらえなくてもなっ。だってこの模様は“女難の相”を払いのけるために、麗しの恋火さんがタダで付けてくれたモノッ! どんな悪災だって防いでくれる優れモノッ。だから俺様は大丈夫なのさっ。ふっ……、それよりも美鈴。何故、俺様が教師になったのか知りたかったはずだろ? よしっ、教えてやるよ。だからっ、もう殴らないでくれぇぇええええぇぇッッ~~~!!!」

――――――ドカッドゴッボグゥッズシャァッブシュァアァァッ!

これが今日という日を締めくくるエンディング曲になった。響きは良い。だけど後味は最悪。



第18幕  いろんな報告



「――今日のニュースです」

――――――モグモグモグ……

朝の音が聞こえてくるこの場所は、俺様とレデンが一応同居という形で暮らしている【イイ・マンション】の第403号室。四階にある。そしてその隣の部屋の第402号室。こっちにも住人が居て、何を隠そうここには妹の美鈴が一人暮らしをしている。
「美鈴さん、今日はご飯食べに来ないのかニャ?」
「寝坊だろ?」
いつも通りの朝の食卓。俺様とレデンはお互いがテーブル越しに向かい合うといったポジションで各自朝食を取っている。
「はぁ~、朝はやっぱり味噌汁だな」
食欲をそそる味噌汁の香りと香ばしく焼けたシャケの蒸気が化学反応を起こし、熾烈を極めた昨日の出来事の疲れが残っている俺様の体を癒してくれた。
「しかし、昨日はいろいろと大変だったぜ」
「そうかニャ? レデンはとってもとっても楽しかったニャっ♪」
「そうかよ……」
<ズズズー>と味噌汁を啜ると、昨日美鈴に殴られて少し切れた唇がちょっぴり染みた。
「まったく……、あんなに殴ることはないだろうが……」
「ご主人様が悪いのニャっ♪」
ご飯を食べ終えたレデンはそう言うと、最近やっと使えるようになった箸をお茶碗の上に置いて、それらを台所まで持っていった。
「レデン……昨日のネタは全てあがっているんだからな?」
「なんのことかニャ?」
 そう……、レデンが九尾に入れ知恵したんだ。
俺様にキスマークを付けることにより、それを見る美鈴が破壊神化 → 俺様ボコボコ → レデンと九尾は楽しい → 証拠ないニャ? → 完全犯罪達成。
くっ、問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。だけどレデンは誰に似たのかとても頑固だ。一日中尋問しても口は割らないだろう。キィィーーー!! 
「はいはい……、食べ終わったんなら歯ぁ磨いて学校に行く準備でもしていろ」
「言われなくてもそうするニャッ」
不機嫌そうに洗面台に向かったレデンだったが、すぐに「ニャ~♪、ニャ~♪」という鼻唄が向こうから聴こえてきた。学校に行くのがよっぽど嬉しいのだろう。
「さて、俺様も着替えるか」
慣れないスーツを着るのには一苦労だったが、それさえ済めば後は、歯を磨いて茶碗を洗うという今までの生活と同じ事をするだけだった。
「よし、じゃあ行くぜっ」
「了解ニャ~♪」
朝飯食った、歯ぁ磨いた、スーツは今日もキマっている、今日も俺様は絶好調っ。
いざ、出陣。

――――――ガチャ

 日差しが気持ちいい。
「う~む、今日も良い天気……」
玄関のドアを開けると、そこには清々しい朝の風景が……、

――――――ダッ! 

広がってはいなかった。
「ぢょっと待っだッッ~!」
逃げ出そうとして駆け出した俺様だったが、ご飯を口に含んだままの美鈴に捕まってしまった。
「おぅ、我が妹よ。どうした?」

――――――モグモグッゴクンッ!

髪がボサボサ状態の美鈴の口が高速に動くと、口の中に入っていたものが消えていた。
「今日こそはちゃんと説明してよねっ!」
「はいはい……、頬っぺたにご飯粒が付いているぞ。ほらっ(ご飯粒を取ってやる)」
「あっ、ありがと……じゃないって!(取ってやったご飯粒を奪うとそれを食べた)」
「お前まだパジャマ姿じゃないか。早くしないと遅刻するぞ?」
「そんなのはどうだっていいのよッ! なっ・んっ・でっ、バカ兄貴が教師になんてモノになったかって言う話をさっさとしろっ!」
「あぁ、その事か」
朝からうるさいヤツだな。
俺様はゆっくりと美鈴の方に振り返り、
「帰ってきてからなぁ~!!」
そのままの勢いで高速回転! 独楽の要領で美鈴の手を振り解く。
「レデン、行くぞっ!」
「了解ニャっ、美鈴さん行ってきますニャ~♪」
突如吹く涼しい風。俺様とレデンはその風を真正面に受けながら走り出す。
「あぁっ、コラァッ!!」
パジャマ姿のままは追っては来られまい。ふっ、世間体を気にする悲しい戦乙女のサガだな。
「ちくしょう……、ちくしょうぉぉぉ~~!!」
 俺様は振り返らなかった。
「美鈴さんも学校に来ればいいのにニャ…」
横を走るレデンがそう呟いた。
「恐ろしいことを言わないでくれ」
寒気がした。もしレデンの言うとおりになったら、俺様の学園パラダイス計画が崩壊することは間違いないだろうな。
「早く行くぞ。遅刻しちまうぜ」
「ダッシュニャ~!」
教師としての生活が始まって二日目の朝。
昨日は教師らしいことを全然できなかった。だからこそっ、今日は俺様の華麗なる教師ポテンシャルを解放し、俺様の偉大さ、カッコ良さ、セクシーさをモウマンタイ組の奴らに叩き込み、俺様の俺様による俺様のためだけの学園パラダイスを築きあげるのだッ。
「フフフ……! フハハハハハハハァァァ~~~!!!」
「うっさいニャッ<ザシュッ>」

―――――――――☆

ジョギング気味のスピードで走っていると、昨日よりも早い時間で萩原学園に着くことができた。食後の良い運動にもなったぜ。
校門の周りには、通学してきた生徒が「今日の天気は」とか「眠い」とかそういったどうでもいい話を交えながら笑ったりしている。まったく……いやになる。こういう風景を見てずいぶん懐かしく思ってしまうのは、たぶん俺様が大人になってしまったからだろう。
「どうしたニャ?」
ぼ~っとしていたらしい。レデンが顔を覗きこんでいた。
「いや何でもない。ほらっ、早く行くぞ」
俺様はレデンの手首を掴み、そのまま駆け足で校門を通り過ぎ……、
「あっ、新谷先生おはよ……」

――――――タッタッタッタッタッ……

……た。
「何でそのまま通り過ぎるんですかぁ~ッ!?」
校門に寄りかかりながら、早くお目当ての人が来ないかな~というそわそわしたオーラを辺りに放っていたヤツが追いかけてきたが、気にしないことにしよう。うむっ、それがいいな。
「和也さん、待ってくださいぃ~」
追われている。だから逃げる。これ自然の摂理アルよ。
「時雨さん。おはようニャ~」
「おっ、おはようございます~」
ちっ、レデンのやつめ。こんなやつ無視すりゃいいんだよ。無視無視。
「か、和也さんもおはようございます」
 振り返る。
そこには、「もうっ、何で私のことを無視したんですかっ」と顔の表情だけで語る、今ではメガネを掛けた女性教師と化した、総理大臣ことクソジジィの秘書である時雨が荒くなった息を整えていた。
「おっ、時雨先生じゃないか。奇遇だな、こんな所で会うなんて」
「あぐぅ、奇遇じゃないですよっ。和也さんたちを校門でちゃんと待っていたんですよっ」
時雨のメガネは少し曇っていた。そう言えば、今日の湿度は高いって、お天気お姉さんが言っていたような気がするな。
「泣いているのかニャ?」
レデンは手を後ろに組みながら、カワイイ仕草で時雨のメガネに付いた雫を観察していた。
「泣いてなんか……ないですよぅっ」
そう言うと<プイっ>とそっぽ向いてしまった時雨。拗ねてしまったのだろうか?
「ほら、カツオ節あげるニャ」
どこから取り出したのだろうか……。レデンはカツオ節を時雨の口に押し込んでいた。
「ムグムグ……、あぐぅ……、レデンさん、ありがとうございます」
どっちが年上か分からない状況だった。ってか、よく水無しでそんなものが食えるな。
「……早く行くぞ」
「ひゃい……」
時雨は口元に付いたカツオ節を拭うと、何かを思い出したように、
「あっ、レデンさん。私たち先生は少し用事があるので先に教室に行っておいてください」
「了解ニャっ♪」
 言うが早い。<ドシュンッ!>とロケットが噴射したみたいに駆け飛んでいった。
「速っ!?」
あっという間に見えなくなってしまった。その元気は何処から出て来るんだよ。まるで核融合でもして元気を生成しているようだな。
「レデンさん、よっぽど早く教室に行きたかったんですね」
「その様だな……」
決断が早かったレデンに少し寂しさを感じた。
「で、用事って何なんだ?」
「はい。教頭先生からお話があるそうです」
「教頭から? 面倒くさいな。美人教師からお話があるならすぐにでも飛んで行くけどな」
「えっ? ここに居るじゃないで」
「時間もないし行くか」
「あぐぅ……」

――――――――――☆

職員室のドアを開けると真正面に教頭が立っていた。教頭は俺様たちの姿を確認すると、「おぉぉ……!」と言いながら近づいて来たので俺様たちは一歩引いてしまった。だけど教頭はそのまま近づいて来て、
「良かった、本当に良かった……」
目に涙を浮かべながら、俺様の手を両手でギュッと握った。
「あの……、どうかしたんですか?」
男に手を握られるのはかなりイヤだが、相手が教頭なので振りほどくワケにはいかなかった。
「ありがとうございます……。二日続けて来てくださいまして、本当にありがとうございます……」
なんかもうガキみたいにポロポロと泣きじゃくり始めた。いい大人が見っとも無い。だが、あのクラスの事で今までどれだけ苦労してきたのかは十分すぎるほど伝わってきた
「本当に……」
ラチが開かないのでとりあえず、
「教頭先生……話ってこれだけですか?」
「あっ、いえ――」
ようやく手を離してくれた。
「――すいません、つい感動してしまって我を忘れていましたよ。新谷先生たちに聞いてほしい話は違う内容です」
教頭は涙を左手で拭いながら右手で昨日話をしたソファーを指差した。
「どうぞ座ってください」
俺様たちが座るのを確認してから教頭もソファーに座る。相変わらず座り心地は最高だ。
教頭はソファーに深く腰掛けていたが、前方にゆっくりと体重を移動して膝に両肘を置くと、自分の顔の前で両手を合わせてから話を始めた。
「実は話というのはですね……、来週から始まる“学園祭”の事なんです」
 おぉ……そんなイベントがあるのか。
「学園祭ですか~」
時雨は教頭が言ったことをそのまま口に出して、その言葉の意味を確かめるように目を閉じた。
「それは楽しみですねっ」
そして逆光合成でもしているかのように目から光を放射し、
「私、学園祭っていうモノに憧れていたんですよね~」
時雨は両手を胸の前で合わせながら、キラキラした目で上を見上げて「エヘヘ~」とニヤけ始めた。まったく……、いい気なもんだぜ。まぁ、だけど、
「分かりました。うちのクラスも来週の学園祭に間に合うようにちゃんと準備させますね。任せておいてください」
その俺様のやる気在る言葉に、「パァァッッ……!」と顔色がすっげぇ明るくなった時雨の笑顔が眩しい。
「楽しみですぅ~」
学園祭か……、懐かしいな。中学生のとき以来か。
よ~しっ、やるんだったら徹底的にやるのが俺様のポリシー。学園祭を最高に盛り上げるための努力は惜しまないぜ。何をやろうかな。む~、悩むぜっ。
「あのぉ、すみませんが……」
教頭は汗をハンカチで拭きながら、申し訳なさそうにそう言った。
「はひっ? 何ですか?」
時雨が妄想の旅から帰ってきて、教頭に質問していた。
すると教頭は、
「実は……、学園祭にはモウマンタイ組を参加させてほしくないという話なのです」
 ……???
「えぇぇッッ~~~!?」
反応できなかった俺様の代わりに時雨がびっくりして飛び上がっていた。
「どっどっ、どうしてですかっ!?」
「うぐぐぅ、苦しいです時雨先生」
動揺した時雨が教頭の胸元を引っ張る。おいおい落ち着け。
「あぁっ、すいませんっ!」
急いで手を離した時雨は、ソファーに座りなおしたが、すぐにまた立ち上がった。
「どうして参加したらダメなんですかッ!?」
今度は普通に聞いていた。落ち着いてくれて何よりだ。
「それは……、モウマンタイ組が学園祭に参加すると、毎年必ず何かの事件が起こってしまうからです」
「なるほどっ!」
俺様は納得して頷いてしまった。何故なら、妙に説得力がある理由だったからだ。
昨日の恐怖が蘇ってくる。もし仮に学園祭で、北条がフルートを吹いたなら、何処からとも無く最強ゴキブリ軍団が到来し、学園祭を無茶苦茶にしてしまうだろう。
「私は納得できませんッ!」
時雨一人だけが不機嫌街道一直線だった。
「どうしてそう決め付けちゃうんですかっ。あの子達はとっても良い子ですよっ。あの子たちがそんな事件を起こすとは私には到底思えませんッ。そうですよね、新谷先生っ?」
「へっ?」
こっちに話を振るなよな。まぁ、どう考えても百%事件は起こると思うが、そんなことを言ったら時雨に射殺されそうな雰囲気だしな……。しょうがない。
「ん、まぁ……俺もそう思います」
懐に手を忍ばせていた時雨はすぐにその手を取り出して、
「わぁ~っ、良かったです!」
<パチパチパチっ>と手を叩いて喜びを表現していた。しかし、
「――えっ……、新谷先生も同意してくれませんか……」
もともと覇気が無い教頭の顔色がさらにしょぼくなっていた。悪いとは思ったが、
「はい、学園祭にはアイツ等も参加するべきだと俺も思いますから。それが、アイツ等のためにもなると思いますよ」
と、自分の心内を伝えた。
「そうですか……」
教頭は俺様たちの説得を諦めたのだろう。ソファーに深く座りなおして、天井の明かりを見上げて大きな大きなため息をついた。そして何かを決断したように立ち上がると、窓の側まで歩いて行き、外を遠い目で見つめながら、
「新谷先生や時雨先生がそう言うのなら、私はもう何も言いません。それが正しいのでしょう……。全てお任せします」
と呟いた。
「大丈夫です。任せてくださいっ」
自信満々で言った時雨だったが、俺様はそんな自信満々のお前を信頼できない。
「逃げているだけじゃあ、俺は何も解決しないと思っていますから」
そう……、俺様は決めたんだ。もう逃げないと。
「はい……、私もそう思います。だけど、どうか気を付けてください。今までモウマンタイ組が参加した文化祭はもう口に出すのも躊躇うほど壊滅しています。毎年、楽しいはずの文化祭が悲しみだけを残す結果をもたらしているのです。ですが、きっと新谷先生達ならこのジンクスを断ち切ってくれると、私は信じることにしました。ですからどうか……どうかっ……、今年の文化祭は成功させましょう。私にできることならどのようなことも致します……う、うぅぅ……」
 急に泣き出した。感極まったのだろう。
「はい……、必ず……」
 と、教頭と手を取り合って時雨も涙を流していた。もらい泣きか?
「新谷先生……! 教頭先生のためにもがんばりましょうねっ」
「えっ、あぁ……そうだな」
 周りにいる先生たちが何事かとずっとこっちを見ていた。恥ずかしいったらありゃしない。
 その後もしばらく、イイ大人が二人手を取り合って泣いていて、一人取り残された俺様はやることもなく、ただ二人の涙が枯れるまで他人のフリをして待っていた。

――――――――――☆

「学園祭楽しみですねっ」
モウマンタイ組に向かう途中、時雨はこのセリフを何度も何度も繰り返していた。俺様はそのたびに「あぁ」と相槌を打っていた。普通に疲れた。
「あっ、そういえば――」
モウマンタイ組がある旧校舎に一歩踏み出そうとしたとき、時雨が話を切り替えた。
「――昨日の家庭訪問どうでしたか?」
「ぐわぁっ」
「どうかしましたかっ? 変な声が聞こえたような気がしましたけど」
「いや……、なんでもない」
うぅぅ……、昨日のことを思い出しただけで背中が急に痛くなってきたぜ。恐怖が背中に刻み込まれているようだ。うぉぉ~、この呪われし刻印を誰か消してくれ~ッ。
「昨日はだな、その……、いろいろと楽しかったぜ」
「何がですか?」
「いろいろだよ」
「いろいろ?」
ジロジロとこっちを見るなっ。目障りだッ!
「時雨はどうだったんだよ?」
「……どうとは?」
「昨日は俺様たちとは別行動でこの学園についていろいろ調べていたんだろ? この学園が萌え忍のアジトなら、何かしら情報が手に入ったんじゃないのか?」
「えっ………………」
 時雨はそこから黙り込んでしまった。別に変なことは聞いていないだろう。
「おいどうした?」
「あっ、いえ、その……」
 歩くのを止めた時雨は、
「昨日、私は和也さんとは違った方法でモウマンタイ組について調べてみました……」
「ふ~ん……で、結果は?」
「いえ、何も……」
「何だよ。何も分からなかったのかよ」
とんだ期待はずれだったな。
「本当に何も分からなかったんです……」
「……はっ?」
「分からなかったんですよッ!!」
何かを訴えるよな大きな大きな声だった。このボロイ校舎の隅々まで響き渡るぐらいに。
時雨のこんな大きな声を初めて聞いたような気がする。
「おいおい、そんなに大きな声を出さなくても」
「あぐぅ……、すいません……」
下を向いてしまう時雨。
「どうしたんだ一体?」
いつもの感じと違うぞ、お前。
「昨日、私はモウマンタイ組について調べていたんです」
「それはさっき聞いた」
「今から続きを言うんですっ」
「はいはい……、で。何が分かったんだ?」
「だから何も分からなかったんですよッ!」
「さっきからお前は一体なにが言いたいんだよッ!」
やばい……、今度は俺様がマジでキレそうだ。時雨は何が言いたいんだよ?
「お前いい加減にしないと……」
一発殴ってやろうかなと、拳に息を吹きかけた。それと同時に、時雨も息を大きく吸い込み、目に涙を溜めながらこう言った。

――――――「彼女たちの住所も、どんな家族構成なのかも、身長も体重も、何もかもが分からなかったんですよ……」

今度は小さく……小さく呟いた。もうすでに“モウマンタイ”のプレートが見える教室内にいるアイツ等に聞こえないようにするためか。
「私は昨日、最初はこの学園について調べようとしました。だけど、調べていくうちに奇妙な点に気が付いたんです」
時雨は近くの壁に体を押しかけて、両手を組みながら話を始めた。
「この学園に存在するはずの“モウマンタイ”組に関する資料がどこにも無いという事に」
「……つまり、学園がモウマンタイ組の存在を隠しているという事だな?」
「はい、その通りです。どう考えても怪しいです」
メガネがキラリと光る。
「他のクラスの資料は簡単に見つかりました。でも、モウマンタイ組の資料だけはどこを探しても見つかりませんでした。どう考えても、学園側の意図で資料を隠しているとしか考えられません」
「もしくは、その資料自体が存在しないのかもしれないな」
「はい、そうとも考えられます。だって私の隠密術を駆使しても見つけられませんでしたしね」
「時雨は……、この事に“萌え忍”が関与していると思うか?」
「はい、間違いなく。……隠密術についてツッコミは無しですか?」
「だったら、モウマンタイ組を調べていけば、自ずと答えは見つかるはずだな」
「はい。……あの……ツッ」
俺様と時雨の目的が決定した瞬間だった。モウマンタイ組を調べていけば、萌え忍に関する何かを自然に知ることができる。これは間違いない。だからそれまでは、俺様たちは立ち止まることはできない。立ち止まってはいけない。
「よしっ、じゃあ急ぐぞ。完璧に遅刻だ」
「あぐぅ……、本当ですぅ」
授業開始時間を二十分もオーバーしていた。昨日みたいに床を踏み抜かないように気をつけながら、何故か新品のドアが設置されていた教室のドアを開けた。

――――――「きりツ」

昨日と同じような号令が聞こえてきた。この声の主は、このクラスの委員長である“シュパプール・テリャ・マドフェフカ”という意味もなく長い名前の女の子。昨日は気づかなかったが、真面目そうでしっかりした子に見える。

――――――「れイ」

三十五人分の頭が一斉にこっちを向いた。

――――――「ちゃくせキ」

<ガタガタガタァ~>と着席する音が、昨日よりも少し綺麗な教室に轟いた。
「悪い悪い、急な話があってな」
急いで教壇に立った俺様は教室を見渡してみた。
「んっ、全員いるな。よしっ、話があるからちょっと聞いてくれ」
学園祭のことについて話そうとした時、
「おっ、何だ? さっき響いた時雨先生の叫び声に関してか? もう破局かよ、早いね~」
九尾の声が耳に入った。教室の窓際に視線を移すと、そこには九尾とレデンがニヤニヤと子悪魔的な笑みを浮かべてこっちを見ていた。二人の頭に生えているアニマルイヤー達は本体が笑っているので小刻みに震えていた。泣いていて震えているのなら萌えるところだが、今回は憤慨してしまった。
「あんまり女を泣かすなよ~♪」
さらに聞こえてきた。
「そんなことないですよっ! 決してそんなことではないですよッ!」
<ブンブンッ!>と大げさに手を振って否定している時雨だったが、顔を真っ赤にして慌てふためく様に言ったら、コイツの思う壺だっていう事が何故分からない?
「はははっ、照れんなってっ」
「照れてないですよぉ~」
ゆでタコ状態の時雨を無理やり窓際に置いてあるパイプ椅子に座らせ、俺様は呼吸を整えてから再び教壇に立った。
「とりあえず、皆おはよう」
『……おはようございます』
正直驚いた。昨日は誰も答えてくれなかったが、今日は少し違った。ほんの少しだったが挨拶を返してくれる生徒が居たッ。その事が普通に嬉しかった。
「あぁ、おはよう……」
外見上は平静を装っていたが、今すぐにでも服を脱ぎだして、裸祭りに参加したい衝動を心の中で抑えることに必死だったぜ。
「え~、さっきも言ったとおり、皆に話があるんだ」
先ほどはチョッカイを言ってきた九尾も、今は黙って聞いている。
「実は今度、学園祭があるんだが……」
「知っていますワ」
その声の方向。教室の前のドアから一番近い席に座っている少女。
長い金髪に透き通るような白い肌。真面目で御しとやかな風貌を持つその子は、先ほど号令をかけてくれたこのクラスの学級委員をしている “マドフェフカ”だった。
「でモ……」
まだ話は終わらないようだ。
「私たちは、参加できないのでしょウ?」
そう呟いた後、マドフェフカは下を向いて悔しそうに唇を噛んでいた。だから、
「いや、参加できるぞ」
「……えッ?」
目をパチクリさせて、口を情けなく開けたマドフェフカを見て、なんて滑稽な驚き方をするんだよ、と少し笑ってしまった。
「……本当ですカ……?」
「あぁ、参加するに決まっているじゃないか。だって、お前たちは学生なんだからなっ。当然の義務だ」
「そうですよっ。当たり前のことですよっ」
時雨がマドフェフカの手を握って話しかけていた。
「皆さん、ちょっとッ……」
マドフェフカの声が開始の合図だった。

――――――ザワザワザワ……

急に忙しなくなったクラス内の会話。皆が皆、それぞれ言いたいことを話し合っているようだ。
「あぁ~、みんな悪いがまだ俺様の話には続きがあるんだ」

――――――…ピタッ

一瞬で静かになった。何を言われるか気になるのだろう……って興味津々のでこっちを見られるとちょっと興奮する。
「おっほん……、実はだな、学園祭で何をするか、さっき俺様的に少し考えてみたんだ」
「何ニャっ? 何ニャっ?」
レデンの耳がコレまで見たことが無いようなスピードで<ピョコピョコ>と動いている。
「へぇ~、新谷先生はちゃんと考えていたんですねぇ~…」
マドフェフカ達と一緒に学園祭について話し合っていた時雨が、少しだけ尊敬の念を含んだコメントを返してくれた。
「あぁ、多分……、いや絶対に、コレをやることによってお前たちは凄い力を発揮すると俺様は確信している」
『おおぉぉぉ~』(一同)
期待と関心が入り交ざった声が皆から聞こえてきた。今このとき、このクラスは一つになれたんだなと思ったよ。
「何ニャッ!? 何ニャッ!?」
超高速回転するレデンのシッポ。そのまま飛んでいってしまいそうな勢いだぜ。
「それはだなレデン……」
「うんうん……」

――――――ゴクリ……

期待の篭った唾がノドを通る音が聞こえてきた。
ふっ、期待に応えてやるよッ! さぁ、言うんだ俺様ッ!
「それはだな……」
コブシを高々と上に掲げ、その神がかり的な力を持つ神秘の言葉を力強く宣言した。

――――――「メイド喫茶だッッ!!!」

ん~~っ決まったぁッ。これ以上ないグッドアイディアだぜッ。ひゃほ~いっ!
<ドドドドドドドドドドドドドドド……>
あれっ、みんなの様子がおかしいのは俺様の気のせいか?
<プルプル>と振動するこいつらのせいで、教室が震度六強の強さで揺れているじゃないかっ。いい迷惑だぜっ。
「おいおい……、皆どうし……」

――――――ガタンッ

「んっ?」
荒々しく椅子から立ち上がったのは、このクラスの学級委員であるマドフェフカだった。
「皆さン……」
目が三日月型ブーメランみたいに鋭くなったマドフェフカは、ユラリとこっちに向きなおしたと思ったら、
「やっちゃっいましょウ」
悪魔の号令を発した。コレが原因で、

――――――ガタンッガタンッガタガタンッ!

殺気立っている皆が立ち上がってしまったではないかッ!
しかし、そこは交渉人“和也ネゴシエーター”。持ち前の話術と今までの死線を乗り越えてきた経験で、こんな危機なんて軽やかに回避してやるぜっ。
「まぁ……、みんな落ち着けよ。話し合おう。だってさ、良く考えてみようぜ? お前たちすげぇよ。うん、本当にそう思うよ。ぶっちゃけ……、みんなカワイイぜ? だからさっ、こんなところでこんなにも素晴らしい逸材が埋もれるなんて耐えられないんだよ。分かる? 分かるよな? な? だからな、みんなでやろう。メイド喫」

――――――ポキポキボキ……

「言いたいことは、それだけニャ?」
至る所でコブシの骨を鳴らす音や「クククッ」という笑い声が聞こえてくる。死への音かな?
ふっ……、俺様の豊富な経験が告げているぜ。
「(逃げろ)」
とな。
はぁ、どうやら今回の交渉は失敗のようだぜ。一応言っておくが、俺様は早くこの場所から逃げようとしたぜ? だけどな、周りを囲まれてしまったので逃げようが無いんだな。はっはっはっ……。笑うしかないぜ、はっはっはっ、無念だ。

――――――ズチャッ、ズコズコズコッ、ブシュァッ、ザシュザシュシュッ、ドスッボコォッ、ドゴォォォッッ~~~ンッッ!!!

学園の隅っこにひっそりと佇んでいる旧校舎には、いつまでもいつまでも不協和音が鳴り響いていたとさ……。


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