Login

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


”自分に厳しく、地球に優しく” 第11幕

第11幕  明日があるさ



秘密基地“ソム”に向かっている空飛ぶ車(ヴェス君)の車内で、僕はボケ~っと窓から見える景色を眺めていました。すでに陽は落ちていて、空は星と月の光に包まれていました。
「は…腹減ったぁ…」
お腹の虫が鳴っています。
「そういえば私も何も食べてないわ」
立花さんのお腹の虫も鳴っています。
「あれだけ運動すれば、お腹が減るのが普通だよ」
「えへへ」と照れながら立花さんは自分のお腹を摩りました。

「ねぇ、立花さん」
「なに?」
車の運転をしていた立花さんの手が少し緩みました。
「立花さんとエシナ達はいつもこういうことをしているの?」
僕の顔は真剣でした。それを察してか、立花さんも少し真面目に答えてくれます。
「私たちの仕事は環境を汚す人たちの排除、そしてリサイクル。簡単に言うと地球のゴミ掃除ね。誰かが地球を汚しているようなら、例え地球の裏側にだって私たちは飛んでいくわ!」
立花さんの目は、向こうの遠くの空を眺めていました。
「俺たちはずっと前からいろんなところを拠点にして、地球の掃除をしてきたんだ。ニューヨークやドイツ、北京にもいたことがあるんだぞ」
エシナも、どこか遠い目をしています。立花さん達は今までいろんなところで旅をして、そして…、戦ってきたんだなぁと、ちょっと、じんわりとこみ上げてくるものを感じました。

「じゃあ、日本にはいつまでいるの?」
ぴくりと立花さんの手が動きました。
「本当は長いこと日本には滞在しないはずだったんだけど、ちょっと他に大事な仕事ができたわ」
立花さんの顔が急に険しくなっていきました。
「え? 大事な仕事って…?」
「おい和也、今日はお疲れだったな! どれ、俺が防弾チョッキを脱がしてやるよ!」
エシナが僕の着ている防弾チョッキを無理やり剥ぎ取ろうとします!
「いいよ、いいよ! 自分で脱ぐから! って痛い! やめてぇ~! 痛いからぁ!」
結局、無理やり脱がされてしまいました。
「結局、和也は足を引っ張るだけだったな」
痛いところを突かれました。ものすごく痛いところを突かれました!
「何ッ!? 僕に一体何を求めているの? 僕も君たちみたいに人を殺さないといけなかったのッ!? それとも、立花さんの盾になるために銃弾の雨の中に飛び込んで行かないといけなかったのッ!? ねぇ、そうなのッ!?」
「当たり前よ」「当たり前だ」
二人は、やっぱりいじめっ子ですっ!
「次は頑張ってね、和也君♪」
ぐわぁ! 立花さんのものすごい裏がありそうな笑顔が僕を襲います!
「もう勘弁してください……」
普通に土下座する僕。

「大丈夫よ和也君。大体こんな感じでクラスメート2,3を作って、使い捨てにする予定だから。でも、和也君にはもうちょっと頑張ってもらわないと困っちゃうかな~」
使い捨て!? じゃあもしかしたら、僕の大好きな沢田さんをも巻き込んでしまうという可能性があるってことですか? そんなことは絶対にダメだぁぁぁッッッ~~~!!!

「僕が…」
僕は…、何を言い出すのでしょうか!? 止めろっ! 止めるんだッ!

――――――「僕が強くなれば…、他の人たちを巻き込まないと約束してくれますか?」

予想もしなかった返答をされた時にびっくりするような…、そんな顔を立花さん達はしました。
「ちょっと、冗談…」
「冗談じゃないよ!」
突然、会話を中断されて驚く立花さん。
「僕が頑張れば、僕が死ななければ…、他の人たちには迷惑はかからないよね? だからお願いします! 大事な仕事だと思うから! 僕が強くなって立花さんたちを助けるから…、だから! 他のクラスメートをこんなことに巻き込まないと約束してくれますかッ!?」
涙が出そうになります。ただ一人の女性を守るために、沢田さんを守るためだけに、僕は命を掛けて今、土下座してます。

「ホントに冗談なんだけど・・・」
立花さんの独り言は小さくて聞き取れませんでした。
「渚、和也の決意は固いぞ…」
エシナの目には微かに光るものが見えました。立花さんは大きくため息をついて、何か悩んだように目を閉じました。そして、
「わかったわ和也君。約束は守るわ。だから…、強くなってね」
「立花しゃんん~~~っっ!」
僕は泣いた。自分がどんなに平和な世界に守られていたか、自分がどれだけ無知だったか。そして、自分が何も守れないという現実。今日、それらを立花さんに教えられたような気がします。

「よし! 俺がビシ! バシ! っと鍛えてやるからな! 覚悟しとけよ和也!!」
後ろの席にいたエシナが、僕の座っている椅子の後ろをドカドカと殴ってきました。
「まったく…、浮かれちゃってエシナは…」
立花さんはやれやれといった感じで僕たちを見ていました。
「そろそロ~、着くヨ~」
ヴェス君の声。
窓の外を見てみました。下には見覚えのある町の光が所々にありました。
「あぁ、僕の町だぁ…、帰ってきたよぉ」
自分の町が在るということが、こんなに素晴らしいことだったとは! やっぱり人は一度ぐらい旅をしてみないと、自分の町の素晴らしさが分からないのでしょう!

「このまま和也の家に向かうわよ」
「え? 僕の家がどこにあるか分かるの?」
「当たり前よ。あの学校に入学する前に自分のクラスメートの顔と名前と住所ぐらい暗記しとかないとね」
立花さんの言うとおり、ヴェス君は僕の家に向かって飛んで行っています。
「へぇ、すごいな立花さんは」
「俺もそのくらい知っているぞ!」
エシナも負けじと食いついてきます。…僕の首を後ろから締めながら。
「はいはい…、エシナもすごいよぉ」
エシナは満足したようで、後ろの席にどっかりと座り直しました。
「お世辞はそのくらいにして…、和也君はその白衣を早く脱いで返してね。それ、私達の研究所の誰かのでしょう?」

そういえば…、この白衣は誰かから借りているんでした…、無断で。
「でも、これを脱いじゃうと、僕はシャツとトランクスしか身に纏ってない人になっちゃうんですけど」
「ここにある袋に包まれたものは、学校の制服じゃないのか?」
あっ、忘れていました。後部座席に、僕の制服があったことをすっかり忘れていました。
「でもこれ、血の臭いが染み付いていて着られないよ」
立花さんのお父さんである守さんのコレクションである鎧に入ったせいで、制服にものすごい血の臭いが染み付いてしまっているので、血の臭いが嫌いな僕には、もう着れません!

「今日、あれだけ血の臭いを嗅いだのだから、もう大丈夫だ! ほらよっ!!」
「グフッ!」
エシナが後ろから僕の顔に制服を押し付けてきました。
「血の臭いがぁ! あああぁぁぁッッ~、…あれっ?」
不思議です。ちっとも気持ち悪くなりません。むしろ、
「違うぅッッ~~~!! 僕はそんな人種ではないぃッッッ~~~!!!」
ダッシュボートを頭で、ガン! ガン!っと叩きつけました。血の臭いが良い匂いだなんて、そんなことあるわけがないです!

「分かったわ…、その白衣は今度ソムに来たときに返してね」
立花さんの優しさを少しだけ感じた気がしました。
「ううぅぅ~、ありがとうぅぅ~!」

――――――ドスンッ!

「うわっ」
「着いたわ」
家の前の路地に着地したようです。無事に生還しました!
「今日はお疲れ様」
僕の横のドアがひとりでに開きまいた。
「ほら和也、制服だ」
エシナから僕の制服が入った袋を受け取りました。
「ありがとうエシナ…、じゃあまた明日学校でね、立花さん」
ゆっくりと外に出ました。
「和也君」
「んっ、何? 立花さん」
立花さんは、何かをポケットから取り出しました。
「これ…、私の携帯の番号とメールアドレスよ」
僕の手に握られる小さな白い紙。
「じゃね」
そして、空中に浮かんでいく車。
「和也~、またネ~」
「和也! しっかりと鍛えてやるからなぁ~・・・」
暗闇の空に消えて行った立花さん達。
僕はしばらくの間、立花さん達が消えた先の夜空をポケ~ッと眺めていました…。
って、
「女の子の携帯の番号とメールアドレスを初めてもらってしまったぁぁッッ~~~!!」
気が付いたら叫んでいまいた。
そうなのです。僕は今までに一度も同年代の女の子から携帯の番号をもらったことがなかったのです。携帯のアドレス帳には家族と長谷川(一応友達)のアドレスしか入っていなかったのです。
しかしぃ! 遂に! この時がやってきましたぁ~~~!

「ふっ、ふっ、ふっ…、僕の部屋でゆっくりと登録してあげるからねぇ…」
不気味な言葉を発しながら、自分の家のドアに手をかける僕。しかし、
「でも、このまま白衣を着たまま家に帰ったら、とっても怪しまれるよね?」
という訳で、僕は周りに誰もいないことを確認して、血の臭いがする制服を嫌々着ました。
「うぅ…、ガマンガマン…」
そして、ドアを開けました。

――――――ガチャッ

「おかえりバカ兄貴ィッッ~~~!!!」
僕の耳を掠めたパンチ、そして襲い掛かる美鈴の連撃。
「今日の恨みぃぃッ~!」
美鈴が繰り出さす怒涛の連続攻撃。しかし、僕はそれらをことごとくかわしました。
「何で当たらないの!?」
自分の攻撃には絶対の自信があった美鈴は戸惑いを隠せず、少し後ずさりしました。
「邪魔しないでくれるかなぁ? 美鈴…」
立花さんの携帯の番号が書かれている白い紙を握り締めている今の僕は…、無敵だぁッ!
「くぅっ…、今日は分が悪そうね。でも諦めないわよ!」
そうして悪役は去っていきました。

「全く、美鈴は困った子だなぁ…」
お腹が減っていたのでリビングに向かいます。
「ただいまぁ」
リビングには、お父さんとお母さんが椅子に座ってテレビを見ていました。
「あぁ、お帰り」
「お帰りなさい。…あら? 血の臭いがするわね」
一瞬で顔の筋肉が硬直したのが分かりました。僕は自分の服の臭いを嗅ぐ振りをして、
「あぁ、これは友達の鼻血が付いただけだよ」
「そう…、ちょんと洗濯箱に入れておくのよ」
「はぁ~い」
何とかやり過ごしました。でも、ご飯を食べている時のお母さんの様子が変でした。僕の事をじっと見つめたまま、ユラリユラリと微妙に体を揺らしていました。

「和也」
「なに、お父さん?」
お父さんが僕の耳に顔を近づけて囁きました。
「早く食べて自分の部屋に行きなさい」
僕は黙って頷き、急いでご飯を口に含んでその場をあとにしました。
「モグモグモグ…、僕の家族って変な人ばっかだなぁ」
それともコレが普通なのかと思いながら、僕は自分の部屋に入りました。
「早く脱がないと!」
血の臭いがプンプン!する制服を急いで脱ぎ捨て、お気に入りの青色のパジャマを着ました。
「この制服を普通に洗濯機に入れることができても、さすがにこの白衣は怪しさMAXでダメだろうなぁ…、しょうがない、今から自分で洗濯するかっ」
僕は家族の誰にも見つからないように洗濯機まで移動し、血で汚れきった制服と土や血が付いた白衣を洗濯機の中に放り込みました。
「洗剤、洗剤…、うおぉりゃぁ~!」
普通に洗濯する時に入れる洗剤の量の約5倍の量の洗剤をぶち込みました。これくらい入れないと臭いが落ちないと思ったからです。
「これでよしっと」
洗濯開始のボタンを押し、僕が後ろを向いた時です。

「…お母さん…」
そこには、じっと僕を見つめる我が母がいました。
「洗濯したの?」
それは僕に向けられた言葉でしたが、僕はしばらく反応できませんでした。
「うん、明日までに乾かさないといけないから、早く洗濯したんだよ」
「そう…、私が洗濯したかったわ…」
そして、お母さんはリビングへと歩いていきました。

――――――ヒュンッ

「危ない、危ない…」
「えッ?」
いつの間にか、お父さんが僕の横にいました!
「見張っていたんだが…、和也がすぐに洗濯してくれて助かったぞ」
そして、お父さんは僕の肩をポンっと叩くと、お母さんがいるであろうリビングに歩いて行きました。
「僕の家族って…」
しばらくその場から動けませんでした。

「はっ、そうだ! 早く立花さんのメールアドレスをっ!」
大事な使命を思い出し、自分の部屋に誰にも見つからないようにこっそりと戻りました。
「さて、いよいよだな…(ゴクリッ)」
僕はポケットから白い紙を取り出し、ゆっくりとゆっくりと広げました
「おぉ、すばらしい…」
紙には綺麗な筆記で立花さんの携帯の番号とメールアドレスが書かれていました。僕は震える手でその文字を自分の携帯に登録しました
「これで完了っと」

さて…、ここからが重要デスよ皆さん!!
一番初めのメールで相手の性格、クセ、愛が分かるといっても過言ではないでしょうッ!
よって、ここで一つ問題が発生しました。それは、僕は一度も女の子にメールを送ったことがないということです!(ドーン)
「うが~ッ! どんなメールを送ればいいんだぁ~? 普通に僕の番号とアドレスを送るだけじゃダメだぁ!!」
こんな時、リラックスしてメールの内容を考えられる場所といえば、
「お風呂で考えようっ!」
僕はそう思い、お風呂に行きました。幸い誰も入っていなくて助かりました。
「はふぅぅぅ~~~」
極楽です。疲れきっていた僕の体と心が温かいお風呂で癒されていきます。今日はあり得ない事が起こることの連続で、もうクッタクタでしたからねぇ。

「う~ん」
さて、どんなメールを送ればいいでしょうか? さすがの僕も悩みます。
湯船に頭まで浸かり、30分ぐらい悩み、悶え苦しみました。
「よし、やっぱりシンプルに行こう。シンプル イズ ザ ベスト って言うもんね」
僕はフラフラになりながらもお風呂から出て、火照る体をタオルで拭き、新しいパンツを履いて、いざ出陣。
でもその前に…。
「あっ、洗濯物、洗濯物…」
洗濯機はもう動いていなかったので、中から制服と大きな白衣を取り出しました。僕は念のため、臭いが残っていないか嗅いでみましたが、
「…臭くない…よぉぉぉ…っしゃあぁぁ!」
よかったです! これで明日は制服を着て普通に学校に行けます! 白衣も明日ちゃんと立花さんに返すことが出来ます!

自分の部屋に戻ると、制服と白衣をハンガーに掛け、
「よし…」
携帯を手に取り、ベッドに飛び込みました。そして、仰向けになりながら、先ほど登録した立花さんのメルアドをメールの宛て先にし、そして本文には自分の携帯の番号とアドレスを書き込み、その文の後に今日の不満を爆発させた文章を書きたい衝動をグッと堪えながら、

今日はとっても疲れましたぁ! おやすみぃ!!

とだけ打ち込み、立花さんにメールを送りました。
「ふぅ、疲れたぁ…」
そして、今日の壮大な出来事を振り返ることもせずに、僕はそのまま深い眠りへと落ちていきました。



                             5月23日終了

スポンサーサイト


この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

この記事に対するトラックバック

トラックバックURL
http://i375ns.blog51.fc2.com/tb.php/22-3298222f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。