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”自分に厳しく、地球に優しく” 第9幕

第9幕  ミッション(陰謀、破壊、殺戮、消滅)



ズゴゴゴゴォォォォォッッッドゴォッガゴォッドガガガアアアァァアアドゴォッ~ン!!

まるで隕石が落下したかのような衝撃。
周りにいたやつらは急に騒ぎだした。
「何事だ!? 何が起きた!?」
薄汚いブタの喚く声。
「わかりません! 部下を使って調べさせます!!」
天井からホコリが落ちてくる…、汚い部屋だ。

「ちゃんとさっきの奴等は始末したのか?」(???)
原因はそれしか考えられないからな。
「えっ…、はい! 確かにミサイルで撃墜したはずです!!」
「…撃墜したはず? 何だそのいい加減な答えは? お前は俺をなめているのか?」
「いえ、滅相もございません! レーダーから反応が消えたのでもう死んだと…」
「お前はここの責任者だろ? 殺すぞ?」
「ヒィッ! 申し訳ございません!!」
地面にひれ伏す薄汚いブタ。
別に俺が手を下さなくても…、アイツが殺すか。
「後のことは任せるぞ。ここでの俺の仕事は終わった」
「えっ、そんな…!」
次は、どこで仕事するかな。後で考えるか…。
「“ファポ”! 時間を止めろ」
左手首がムズムズする。
「報酬は?」(???)
「パーペチュアルデイトジャスト 116234AR」
「よろし」
「ちょっと待ってください! 私たちを見捨てないでくだ…」

そして、突然やってくる静寂。
周りのやつらの助けを求める表情。

全て俺が好きなもの。

この建物に衝突していく様子は、僕にはスローモーションに見えました。人は死ぬ瞬間には走馬灯が見えるらしいですけど、僕は走馬灯を今日一回見ちゃったのでこの時は見ることができませんでした。そのかわり、極限まで高められた集中力で周りの風景がスローで見えました。砕かれていく建物の壁の小さな小さな粉。光り輝く甲殻に触れ、消えていくコンクリート。そして、突然の出来事に驚く人たちの表情。それらは全てスローでした。

ズゴゴゴゴォォォォォッッッドゴォッガゴォッドガガガアアアァァアアドゴォッ~ン!!

そんなものすごい音を出しながらも、無事に止まることができました。
急いで周囲を見渡しますが、周りは砂煙に包まれていてよく見えません。
「立花さん、これからどうするの?」
僕が立花さんの方を振り向いた瞬間でした。

「ふっふっふっ…、行っくわよぉ~エシナァ!!!」
「ああ! ひゃっひゃっひゃ!!!」
「防御はまかせてください渚殿!!!」
「ころセ! ころセ!!!」

そして、みんなは僕の視界から「ヒュンッ」と消えました。
「あれ? みんなどこに行ったの~?」
その刹那、
「ぐぎゃあああぁぁぁッッッ!」
「がはあああぁぁぁッッッ!」
「ぎゃあああぁぁぁッッッ!」
という悲鳴があちらこちらから聞こえてきました。

「エシナ!! 殺りやすいように、“グーグニグ(お掃除ホウキ)”を出して!!!」
「わかった!…ウオオオォォォリャアッッ! 受け取れ渚!!」
「ありがと! みんな死んじゃえぇっ~~~!!!」

――――――ダダダダダダンッ! パンッ! パンッ! パンッ! ヒュン! ヒュン! 

「そんな攻撃は効かないであります!」
「死ネ! 死ネ!」
…僕は一体何の音を聞いているのでしょうか? 
聞こえてくるのは人の悲鳴と銃声と立花さんたちの歓喜の雄たけびなのでしょうか?
僕には良くわかりません。僕はただ、頭を抱えて床で丸まっているだけです。

「何で僕がこんなひどい目に遭うんだよッ~! 夢なら早く覚めてくれ~!」
目をつぶってずっと祈りました。「早く終わってくれ」と。
すると突然、「スゥッ~」と音がしました。目を開けてみると、なんとそこには心の中の神様がいました!
僕は神様に問います。
「神様! なぜ僕にこんな試練を課すのですか? 僕の運命はあなたによって決められているのですか!?」
そして、神様はこう仰いました。
「I don’t like you、fuck you!」(中指を立てながら)
そして消えました。
…このときの僕は、この世の全てを憎みましたね。
「ファッキュッ~! ファッキュッ~~!! ファッキュッ~~~!!!」
僕の雄たけびは砂煙の中に消えていきました。そして、何だか虚しくなりました。しかし、そんな感傷に浸っている場合ではありませんでした。何故なら突然、目の前に銃を持った男の人が姿を現したからです!

「うっ、うわぁっ!」
男の人の血走った目が僕を睨みつけます。
「はぁ…! はぁ…! お前…、“堕天使”の仲間か!? ならば死んでもらう!!!」
僕の顔に向けられる銃口。僕は目を閉じました。
…終わった。僕の人生は終わった。僕の人生短かったなぁ。でも泣かないぞぉ!

僕の人生のろうそくの炎が消え去ろうとした時、僕は変な音を聞きました。

――――――パキュッ!

何の音でしょうか? 目を開けてみました。
「…えっ?」
目の前で吹き上がる赤い噴水は、僕が今まで見た噴水の中で一番きれいでした。しかし、その赤い噴水が出ている場所には問題がありました。なんとそこは、さっき僕に銃口を突きつけていた男の人の首だったからです!
「あれ? この人の頭はどこ?」
僕は当然の疑問にぶち当たって、周りをキョロキョロと見渡しました。しかし、見えたのは血の海だけでした。
「ちょっと! 和也君!? 戦闘中によそ見をしちゃダメじゃない! 死にたいの?」
男の人の体が「どさり」と僕の前に倒れ落ちました。その後ろには立花さんの姿が。
「次は助けないわよ、ほらっ! 私について来て」
立花さんは真っ赤な血を滴り落としているホウキを左手に持っていて、余った右手で僕の手を掴みました。
「ねえ立花さん、この人の頭はどこに行ったの?」
周りからは悲鳴や銃声が消えていました。
「うーん…、私が掃除して片付けておいたわ。それよりも早く立って!」
立花さんに右手を掴まれて、強引に立ち上がらされました。

「このフロアの敵は全員“掃除”したから、次に行くわよエシナ!」
ピチャ、ピチャと変な足音が近づいて来るなと思ったら、エシナが砂煙の中から姿を現しました。
「俺は6人殺したぞ」
エシナの手は血まみれでした。エシナの背中にはヴェスが引っ付いています。
「あら、私は8人よ、勝ったわ」
あれ? 僕の手を掴む立花さんの手がちょっと震えています。ふと、僕は立花さんの顔を見てみました。…そこには口元が不気味に笑っている立花さんの顔が…。ヒイィィッッ~!
「次は負けないからな!」
ビシッと指を立花さんに向けるエシナ。
「今日の私は調子がいいのよ。今日、エシナは私には勝てないわ」
自信満々の立花さん、エシナの顔の表情が変わりました。
「ほう、言うようになったな渚。だが、この俺を甘く見るなよ?」
二人の間に飛びかう火花。もう僕にはこの二人を止めることはできないようです。っていうか、この任務の目的を僕は知らないんですけど…。だから聞いてみることにします。
「ねぇ、あのさ…」
「早く上の階に行くぞ!」
エシナはそう言って立花さんの肩に飛び乗りました。
「えぇ、楽しみね」
僕の手を引っ張ってスタスタと歩いて行く立花さん。僕の言っていることなんて最早、耳に入っていないようです。

「たくさんのチ! たくさんのチ!」
ヴェスも興奮状態です。
「ヴェス、またいっぱい血の海を見せてあげるからね」
囁く立花さん。
「楽しミ! 楽しミ!」
モーターをおもいっきり回転させるヴェス君。どうやらこいつらは人の血を見るのが大好きな軍団みたいです。僕とは正反対です。
「和也は人の血を見ても大丈夫みたいだな」
「え!?」
突然のエシナの言葉に、頭の中が綺麗に洗い流されていくのが分かりました。そういえば…、僕は血が大嫌いで臭いだけでも吐きそうになるのに、何で今は平気なんでしょうか? 感覚が麻痺しているのでしょうか。

「よかった、和也君も私たちと同類で」
堕天使さんの輝かしい笑みが僕を襲います。…立花さん達と僕が同類?
「やめてくれ~! 僕は君たちとは違うんだぁぁぁ~~~!」
立花さんの手を強引に振り解いて、僕は一目散に逃げ出しました。

「うわあああぁぁぁ~~んッッ!!」
ありえない現実に困惑してしまいます。僕と立花さんたちが同類なわけがないです!
ただ、ありえないことが多すぎて感覚が麻痺しているだけなんです! 
普段の僕は、そりゃあ~もうびっくりするぐらいピュアな心を持った少年ですよ!
「待ちなさい和也君!…危ないわよ?」
「えっ…、うわっ!?」
足元に何かが当たって僕は転んでしまいました。
「いたたた…、一体何が」
振り返ってみたると、そこには微かに動いている人が。そして、僕に向けられる銃口。
「くそ…、死ね」

――――――バァンッッ!

響き渡る銃声。硬直する僕の体。飛び散る男の人の指。一瞬で移動して男の人の頭を吹き飛ばした立花さん。…あっという間の出来事でした。
「もう! 一人でここから脱出するなんて無茶よ、和也君!」
何が起こったのか全く理解できない僕を、引きずりながら歩き出す立花さん。
「なかなかやるな渚。“グーグニグ”の千本を投げる動作に無駄が無くなっていたぞ」
「うふふっ、ありがと。銃を貫くことなんて簡単よ。でもいいの? 私はこれで9人目よ?」
「いや、8人目だな。さっきのやつは渚が仕留め損ねたやつだろ? まだまだ甘いな」
「えっ? 違うわよ、エシナが仕留め損ねたんでしょ?」
「違う! 渚が仕留め損ねたんだ!!」
「いいえ! エシナが仕留め損ねたのよ!!」
二人が言い争いをしているうちに上の階に続いていそうな階段に着きました。

「まぁいいわ、この上のフロアで決着を着けるわよ!」
「望むところだ!」
二人は意気揚々と階段を登って行きます。でも僕には、もう階段を登る力さえ残っていません。僕はその場で力尽きて座り込んでしまいました。
「ねえ立花さん、僕はここまでみたいだ…。後のことは頼むよ…」
後ろを振り向き、僕を見下ろす立花さん。
「いいえ、和也君には私の盾になってもらう重要な仕事があるんだから、そんなところで休んでもらったら困るわよ」
僕のところまで戻ってきて、立花さんは僕の目をじっと見つめました。
「でも僕、もう限界みたいだよ」
立花さんのキラキラした目に耐えれなくなった僕は目を反らしてしまいました。
「もうすぐでピスタのフォトも切れそうなのよ。だからお願い…」
「え!?」
ウルウルの目で僕を見つめる立花さん。…なんだか胸が苦しくなってきました! だって、
こっ…こんな立花さんは本日初めてです! 何ですか、この僕の心をえぐるような目は!? なんだか僕が悪いみたいです! 
生気が失われかけていた僕の心に勇気が湧いてきました!!

「わかったよ立花さん! 君は僕が守る!!」
見る見る力がみなぎり、僕は力強く立ち上がりました。
「わぁ、和也君カッコイイ!」
ッ!? カッコイイ? そんなことを女の子に言われたのは…、生まれて初めてだ~ッ!
「うおおおおりゃああぁぁッッ~~!!! 突撃ぃぃッッ~~!!!」
ものすごい勢いで階段を駆け上がっていきました。…立花さんのためにぃ!
「なぁ、渚」
一生懸命に階段を駆け上がっていたときに下のほうでエシナの声が聞こえました。
「もし…、あいつが拒否していたらどうするつもりだったんだ?」
「え? それはもちろん…、殺していたわ」
「そうか。命拾いしたってことかあいつは」
よく聞こえませんでしたが、今はそんなことよりも立花さんを守るという使命のほうが大事なので気にしないことにしました。
「ちょっと待って和也君」
「ん? 何?」
「これ…」
立花さんが僕のところまで上がってきて、僕に何か尖ったものを渡しました。
「これは何?」
長さが20cmぐらいで両方の先端が尖っている太い針みたいなものです。
「これは“グーグニグ”の先端に付いてる千本のうちの一本よ。これがあれば、和也君も敵を殺せるから…」
「はいぃ~!? 一体僕に何をさせるつもりだよ!? いらないよそんな物騒なもの!」
いきなり何を言い出すんですかこの人は。

「じゃあ、和也君はどうやって敵を殺すの? 銃は使ったらダメだよ」
「僕は誰も殺さないの! だからこんなものも要らないし、銃もいらないの! これは返すよ!!」
僕は立花さんの前にこの千本を差し出しましたが、立花さんは黙ってしまいました。
「早く受け取ってよ!」
ようやく立花さんは、僕が差し出した千本を受け取ろうとゆっくり手を動かしました。しかし、その両手の行き先は千本ではなくて、立花さんの顔でした。

「ひっく、ひっく…! わ…私はただっ、和也君の事が…、心配だから! だから! 和也君のためを思って…、ただそれだけなのに、うっうぅっ…」
その時、僕の心臓は無数の千本に串刺しにされるような強い痛みを覚えました。
あぁっ、僕はなんてひどい男なのでしょうか。こんなに人を思いやる心を持った女の子の気持ちを裏切るなんて…、僕にはできません!
「やっと気づいたよ立花さん! 僕は君を守るために戦うよ!!」
「和也君…、私嬉しい」

立花さんの微妙に赤くなった目が僕を見つめます。もしや…、このシチュエーションは!? そんなまさか!? アレなんですかッ!?
「た…立花さ」
「じゃあ、私たちが先頭に行くから、和也君は私たちのあとに続いてね」
立花さんは僕の横をすぅっと通り過ぎていきました。何事も無かったかのように。
僕も何事も無かったかのように動こうとしましたが、体が変な悲しみに襲われて、なかなか動き出せませんでした。

「ほら早く!…あぁ、目が痒いわ」
立花さんに呼ばれて、やっと動くことができました。しかし、階段を上がる足取りは、さっきと比べて格段に落ちてしまいました。それに、この千本を僕はどうすればいいのでしょうか? どうしようもない時は使わないといけないと思うけど、こんなものでどうやって人を殺せるのかな?
「上の階に着いたわ。さぁ、ここから攻めるわよ」
立花さんたちは早くもドアの前で構えていました。
「しっかり後について来いよ和也。…まぁ無理だと思うけどな」
エシナは立花さんの肩から降りて、その場で軽くジャンプしています。
「さぁ戦闘であります! 楽しみですな!!」
「殺セ! 殺セ!」
みんなものすごいやる気です! また殺戮ショーが始まってしまいそうです。

「ピスタ、あとどのくらいフォトが残っているの?」
立花さんは自分が被っているピスタさん(ヘルメット)に話しかけました。
「恐らくこのフロアで無くなってしまうと思われます、渚殿!」
「そう…、じゃあここの所長を殺す時は、ピスタの“ガービスク”は期待できないわね…」
「申し訳ございません渚殿! しかし、ここに私のソースである“金属”があればフォトの補充ができます!」
なるほど、ピスタさんのソースは“金属”なのか。ここにある金属といえば…
「あまり期待しないほうがいいわね。見た感じなさそうだから」
確かに、周りには金属って感じのものは見当たりません。
「ううぅ…、ではせめてこのドアノブを…」
ピスタさんが立花さんの頭からぴょんと飛び降りて、ドアノブにかぶりつきました。

――――――ボリボリボリボリ…

「ふむ…、まったく足しになりません!」
足しにならないのかい!
「このアホピスタ! ドアノブなんて食うな! どうやってドア開けるんだ!?」
「はっ!? 申し訳ありませんエシナ殿!!」
ピスタさんの顔(ダルマさん)からものすごい汗が放出しています。
「しょうがないわね…、ピスタ! さっさと汗を引っ込めて私の頭に戻りなさい!!」
「はっ!」
ピスタさんは急いで汗を舌で拭いて、立花さんの頭に飛んで装着しました。
「ドアを蹴り破って入るわよ! エシナ…、さっきの勝負忘れてないわね?」
「ふっ、当たり前だろ! 行くぞ!!」
さぁ、また血の殺戮ショーが始まりそうです!

「せ~っの! はいぃ!」
立花さんがくるっと廻ってドアを蹴りで吹き飛ばしました。この技は回転廻し蹴りという空手の蹴り技の一つです。さて、吹き飛んだドアは壁にぶつかって大破しました。しかし、こんなに目立って大丈夫なのでしょうか? ってあれ?
「…誰もいないわね」
「…逃げたか?」
僕も恐る恐る前に進みました。銃を構えた人がいっぱいいるのかなっと予想していたのに、周りを見渡してみても誰もいません。周りにはパソコンや机が置いてあるだけでこれといって目立つ物はありません。
「あっ! あの穴は…」
向こうのほうに大きな穴が見えます。きっと、僕たちが衝突した時にできた大きな穴ですね。天井にも大きな穴ができていました。僕は床にできた大きな穴を覗いてみます。
「げぇふ!」
速攻で吐きました。下のフロアは血の海だったことをうっかりな僕は忘れていました。しかし、僕が吐いたという事は、それ即ち僕が正常の状態を取り戻したということなのでしょうか?
「どうしたの和也君! 大丈夫?」
僕の事を心配した立花さんが駆け寄ってきてくれました。
「大丈夫だよ、さぁ行こうか」
僕にとっては、ちょっとかっこいいセリフを言い放ち、そして起き上がろうとしたその時でした。

「ん?」
ふと、上の穴を見てみると何かがいました。穴の壁から変な物体が体を出していました。見た感じモグラみたいな姿をしています。でも、僕が知っているモグラのイメージよりもそいつはちょっとだけ大きい感じがします。それに、そのモグラはじっと赤色の目で僕の事を見ています。
「どうしたの和也君?」
エシナたちも僕のところまで駆け寄って来ました。
「アレは何かな?」
僕は立花さんの方を向いて、指を上の穴の方に向けました。
「…何もいないよ?」
「え!?」
僕が再び上の穴を見たときはもう何もいませんでした。
「あれ? でも確かに何かがいたんだよ!」
みんながヒソヒソとざわめき始めました。
「ついに和也が妄想を見始めたか…」
「和也君…」
「もうそウ! もうそウ!」
「残念であります和也殿」
みんなが哀れみの目で僕を凝視しています。
「何でそんな目で僕を見るんだよ!? 本当にあそこに何かがいたんだよっ!」
「うん、分かっているわ。大丈夫よ和也君、心配しないで」
「何だよ! その精神異常者に接するような態度は!? 僕の事が信じられないの!?」
「うん」
「なんで即答なんだよ!!」
「だって、和也君…、今日は色々と大変な目に遭っているでしょう? だから変な幻覚が見えてもおかしくないわ。これからだんだん慣れていけばいいのよっ!」
「誰のせいで大変な目に遭ってると思っているんだよ!」
その僕の言葉を聞いた立花さんは、少しだけ悲しい顔をした様な感じがしました。
「そんなヤツのことは放っておいて、早く先に進むぞ」
「そうね」
みんなは僕を置いて先に進んでいきました。
「え!? ついに無視ですか! 無視なんですか!? 何とか言ってよぉぉッッ~~!」

――――――ガツッ

「痛っ!」
何かが僕の頭に当たりました。コロコロと床に転がるそれは…、僕の記憶が間違っていなければ、
「手榴弾ッッ~~!? 死ぬぅぅぅ!!」
僕の叫びで立花さんたちがこっちに気が付きました。
「ピスタァ!」
「任せるであります! 拘束するバリティ! “ルクロック(漆黒の球体)”!!!」
ピスタから黒い光線が発射され、それが手榴弾に当たりました。すると、手榴弾は黒い球体に包まれました。その直後、

――――――ボフゥゥンッッ!

「うわぁっ!…え?」
手榴弾が爆発しましたが、僕は全くの無傷でした。どうやら助かったみたいです。
「和也殿~、大丈夫でありますか~~~?」
ピスタさんが向こうで叫んでいます。
「うん、大丈夫だよ~! ありがと、ピスタさん~~!」
また上の穴から手榴弾が落ちてきそうな感じがしたので、急いで立花さんたちのところまで走りました。
「ホンットにドジというか運が悪いな和也は」
エシナのこのムカツク声を聞いても、何故か今は清々しい気分です。だって、今はピスタさんへの感謝の気持ちで僕の心はいっぱいだからです。

「しかし、これで自分のフォトは空っぽになってしまったであります! 和也殿のせいで!」
ピスタさんの目が僕を睨みつけています。そして立花さんも、
「か~ず~や~く~ん~?」
ご立腹です。怒っています。この人たちは僕の命よりもフォトの方が大事だっていうことが良くわかりました。
「だが、上の階に敵がいるっていう事がわかったな。早く行くぞ」
「ええ、和也君も早く早く」
「え、うん」
その時です。

――――――ガチャッ

「ん?」
ドアが勝手に開きました。 

――――――パァンッ!

直後、銃声が響き渡りました。幸い誰にも当たりませんでしたが、僕は突然の出来事に
「うわああぁぁぁッッ~~! ヘルプ・ミィィッッッ~~~!!」
と、パニクってしまいました。しかし立花さんたちは僕とは逆に、
「エシナ! 勝負開始よ!!」
「あぁ、負けないぞ!!」

すぐにグロテスクな音が聞こえてきたので僕は耳を塞ぎました。しかし、それでも微かに音が聞こえてしまうので、僕はブツブツとお経を唱えることにしました。
「南無阿弥陀仏! 南無阿弥陀仏ぅ! 悪即斬!!」
「何やってるんだ?」
いつの間にかエシナが目の前にいました。
「いや、僕の事は気にしないでくれ。それより…、もう終わったの?」
「あぁ、だから早く上に行くぞ」
エシナが僕のズボンを強引に引っ張って、無理やり移動させました。僕は惨劇の光景を見ないように目をつぶって歩くことにしました。
「2人しか殺せなかったわ」
「ふっ、これで同点だな」
「調査結果道理だと、構成員はこれで全員片付けたわね」
「あぁ、残りはここの所長だけだな」
「逃げていなければいいけど」
「逃がさないさ」
「僕を逃がしてほしいよ」
「ダメよ」「ダメだ」
はぁ…、僕は一生こんな感じで生きていかなければならないのでしょうか?

「着いたわ」
階段を登った先には、木製の立派なドアがありました。
「エシナ、まずは情報を聞き出すことが先決だからね。殺したらダメよ」
「あぁ、分かっている。行くぞ!」
立花さんは右側のドアを蹴り飛ばし、エシナは左側のドアを突き飛ばしました。…何で普通にドアを開けないのでしょうか?

吹っ飛んだドアは、誰かが座っている机に激突しました。
「ヒイイィィィッッッ!!」
オヤジ狩りに遭ったおじさんの叫び声みたいな声が聞こえてきました。その声の主は、椅子から立ち上がり、信じられないものを見ているような表情で僕たちを見ています。
「バカな! あれほどいた私の部下が全滅だと!?」
そのおじさんはヨロヨロと後ずさりし、大きな窓ガラスに体をぶつけました。
「頼む! 殺さないでくれ! お金ならいくらでもやる! 頼む!」
僕は初めて“命乞い”というものを見ました。自分の命のためなら何でも投げ出す…、そういう心の叫びが、このおじさんからは聞こえてきそうです。

「お金なんて要らないわ、それよりも教えてほしいことがあるのよ」
冷静に、そして冷徹な立花さんの表情がそこにありました。
「私たちが知りたい情報は二つ。まず一つ目は、あなたたちが不正に捨てた“使用済み核燃料”の廃棄場所よ。…どこに捨てたの?」
ギラリと鋭い眼光がおじさんを貫きます。
「廃棄場所を示した情報ならこの下の階のパソコンの中に入っている!」
「パスワードは何だ?」
今度はエシナが問い詰めています。
「ちょっと待ってくれ! 今紙に書くから…」
おじさんは机の上にあった紙に何かを書き、覚束無い足取りでこっちに歩いてきました。
「待ちなさい! 銃は持ってないでしょうね?」
ホウキを構える立花さん。
「ああ! 持ってないよ! 信じてくれ!!」
そのまま歩いてきたおじさんは、紙を立花さんに手渡しで渡しました。
「…本当にパスワードはこれで合っているんでしょうね?」
「あぁ本当だ! 私だって死にたくないからな!!」
おじさんの顔は汗でびっしょりでした。

「じゃあ、最後の質問よ。…あなたたちに私たちの情報を流したのは誰?」
「えっ!?」
おじさんの表情が固まりました。
「私たちの中にスパイがいる可能性があるわ。…あなたに情報を漏らしたのは誰?」
立花さんの表情は、どこかつらく感じました。
「ぐぅ…、それは言えない!…言えないんだ!!」
突然、おじさんの態度が変わりました。
「バラしてしまうと私は…!」
直後、

「警告~♪ 警告~♪」(???)
「ヒイイィィィッ!!」
おじさんの顔が恐怖で凍りつき、おじさんはそのまま床に座り込んでしまいました。
「何ッ!?」           
僕も天井を見ました。
そして…、それを見ました。

「…モグラ?」
さっき僕が見た変な物体が、天井から上半身をニョロっと出して、逆さまでおじさんを赤い目でじっと見つめています。ニヤニヤしながら。
「ほら! さっきのは僕の見間違いじゃなかったじゃないか!」
自分がボケてない事がわかって一安心です。っていうか、今このモグラしゃべったんですけど…。

「待ってくれ! 俺はあの人のことは何もしゃべっちゃいないぞ!」
おじさんは、僕たちの事なんか見向きもしないで、モグラに必死で訴えかけています。
「で~も~♪ あ~な~た~は~♪」
モグラが歌い出しました。
「つ~か~ま~って~♪ い~つ~か~♪ は~な~し~ちゃ~う~♪」
か…かわいい! 僕はこんな動物が超大好きなんです!

でも、立花さんのは険しい表情が変わる様子はありません。むしろ、さらに険しくなっていき、戦闘モードMAXのオーラを解き放っています。僕は、そんな立花さんがとても恐ろしく感じました。
「エシナ…、油断したらダメよ」
「あぁ…、だがコイツは…」
エシナも超マジマジモードです。遊び感覚が一瞬でなくなったようです。
「だ~か~ら~♪」
モグラが目を閉じました。武器を構える立花さん。

「ぶっ殺してあげるよぉッ!! ヒヒィハハァァッッ!!!」
血のように赤い目が大きく開きました。そして、その目が一瞬僕を睨みました!
ものすごい鳥肌と悪寒がしました! 未知なる物に対する恐怖が僕を襲います!!
「た…助けてくれッッッ~~!!」
おじさんが窓に向かって走りました。

――――――トプンッ!

「え?」
「ヒヒィハハァァッ!」
モグラが天井から飛び出し、おじさんに向かって飛んでいきました。
「うわあああぁぁぁッ」

――――――トプンッ!

「ヒィッ!!」
おじさんは転んで壁に激突しました。
「今…、おじさんの体の中にモグラが入ったように見えたんだけど!?」
おじさんが床の上に倒れこみました。
「エシナ…、これってやっぱり」
「あぁ。信じられないが…」
二人は何かを悟ったようで、お互いを確認し合っています。
「嫌だ~! 死にたくないぃッッ~~!!!」
おじさんはさっきからずっと床をゴロゴロと転げまわっています。
「う~る~さ~い~な~♪」

――――――トプンッ!

まるで池から飛び出したかのように、モグラはおじさんの体から飛び出てきて机の上に着地しました。
「あ~と~♪ 2秒~♪」
「嫌だ~!!」
「やばいわ!」

――――――ヒュン!

「え?」

――――――バキュッ!!

立花さんが、まるでゴルフでボールを吹き飛ばすかのごとく、床で転がっていたおじさんの顔をグーグニグ(お掃除ホウキ)で吹き飛ばしました。
「え!? なんで殺したの!?」
「みんな隠れて!!!」
「和也! そっちだ!」
「え!? ゴフゥッ!」
エシナが僕の横腹を急に押したので、軽く吹き出してしまいました。そして、ソファーの後ろにそのままタッチダウン!
「渚!」
そうだ、立花さんは?
「ボン♪」

――――――ボゥンッッ!!! ビチャビチャァァァ!!!

「うわあぁぁぁッ! 何!? 何が起こったの!?」
周り一面に飛び散る赤い血肉。…おじさんの体が爆発したようです。
「渚! 大丈夫かぁ!?」
エシナが大きな声で叫びます。
「えぇ…、大丈夫よ~~」
机の後ろから姿を現した立花さん。無傷でよかったです。
「あのモグラは?」
そういえばさっきのモグラがどこにもいません。
「くそ! 逃げたか!?」
エシナが悔しがっています。

「に~げ~な~い~さ~♪」
まず初めに頭が、次に赤い目が、そして全身が机の中から出てきました。あのモグラです。
「華麗に~登場~♪」
なんと! モグラが立ち上がり、そして、机の上を2足歩行で優雅に踊り始めました!
「ダンスも~上手~♪」
「てぇぇい!」
立花さんがモグラに向かってホウキを振り下ろしました。

――――――ズバンッ!

真っ二つになった机…。しかし、モグラには当たりませんでした。
「な~に~す~る~ん~だ~よ~♪」
クルクルっと体を回転させて、床に着地するのかと思いきや、そのまま床に

――――――トプンッ!

と沈んでしまいました。
「しまった!」
「渚、気をつけろ! とりあえずこっちに来い!」
僕たちは部屋の中央に集まりました。
「どうするエシナ?」
「どうするっていわれてもな…、どうする和也?」
「え、僕? じゃあ、逃げるっていう案は?」
「却下だ」、「却下よ」
「やっぱり即却下かぁ…」
ものすごい緊張感が僕たちを包み込みます。

「あのモグラ…、やっぱり」
「何か知っているの? 立花さん」
立花さんは、やはり何かを知っているようです。
「確信は無いんだけど…」
「僕が~ど~う~か~し~た~?」
ズブズブと入り口付近の床からあのモグラが出てきました!
「出たわね~! さっさとかかって来なさいよ!」
「あいつの正体が気になる…。殺したらダメだぞ渚。」
にらみ合う僕たちとモグラ。

「ちょっと~待って~よ~♪」
緊張感が解かれそうな柔らかい声。
「僕は~君たちを~♪ 傷つける~つもりは~♪ ないんだ~よ~♪」
僕たちを傷つけるつもりは無い? それはよかったよかった。
「僕の~仕事は~♪ あと~1つ~♪」
クルクルと回転し始めたモグラの体。
「仕事? 何をする気だ!?」
回っていたモグラの体が止まりました。
「僕が~ご主人様に~命令されたのは~♪」
渇開くモグラの大きな赤い瞳。
「この施設の爆破だよぉ!!! ヒヒィハハァァッッッ!!!」
「なんですって!?」
「黙って見てな~♪」

モグラはおもいっきり息を吸い込み始めました。そして、どんどんモグラの体が大きくなっていきますぅ!?
「何をする気だ!?」
そして、
「おえぇぇぇ!」

――――――ドゴンッ!

自分の目を疑いました。モグラの口から直径が1メートルはあろうかと思われる手榴弾が出てきたからです!
「これが~僕の~“バリティー”~♪ その名も~♪ “エボアズム(気爆玉)”だぁ!
ヒヒィハハァァッッ!!!」
モグラの手が手榴弾のピンを掴みました。
「待て! お前に人工知能を植え付けたのは一体誰だ!? それにお前の体…、生命体に人工知能を植え付ける事は不可能なはずだぞ!!」
エシナがこんなに動揺しているのを僕は初めて見ました。

「君たちに~教える~つもりは~無い~♪ じゃあね~♪…環境クン♪」

――――――ピンッ!

モグラが手榴弾のピンを抜きました。
「あぁぁ! 抜いちゃったよ! 爆発するぅ~~!!」
僕は最高にあたふたしています。
「あと~5秒~♪ 僕は~地中に~♪」
モグラが床に沈もうとしたその時です。
「和也、それ貸せ!」
「え?」
エシナは僕が握り締めていた千本を強引に奪い取り、すかさずそれをモグラに向かって投げました!

――――――ガツッ!

でも、モグラのほうが速く逃げてしまいました。
「生きていたら~また会おうね~♪ 環境クン♪ ヒヒィハハァァッッ…!」
がーん! どうしようどうしようぅ!! 逃げないと~~!
「渚ぁ! 逃げるぞ!」
「でもどうやって!?」
さすがの二人も戸惑っています。
「僕ガ…」
ピョンとエシナの体から飛び降りるヴェス君、そして、急に光りだしたヴェス君の体…。

「変形するバリティー“チャラック”! モデル:ダンプカー!!」
ヴェス君がそう言った直後、僕たちの目の前に大きなコンテナを積んだダンプカーが出現しました!
「速く乗っテ!」
「でも、ヴェス君…、君は?」
「いいから早ク!」
「和也! 早く乗るんだ!」
僕たちはコンテナの中に急いで乗り込みました。そして、閉じられるコンテナの扉。
「行け~! ヴェス!」
「まかせロ~~~!!!」
急発進する車! 窓ガラスが割れる音! そして…、

――――――ドゴオオオオオォォォッッッ~~~~~ンンン!!

「うわああああぁぁぁッッッ! すごいGィ~~~~!!」
爆風に後ろから押されながら、このダンプカーが空を飛んでいるのがわかります。コンテナの中で僕たちは前のほうにすっ飛んで行き、壁に激突しました。もうメチャクチャ痛いです!
「ちゃくチ~」

――――――ドカァァァ! クルッ!

次の瞬間には逆向きに回転していました。コンテナの中の僕たちは壁にドカドカと激突しまくりです! 痛いです!! そんな僕達を無視ながら、ダンプカーはそのまま吹き飛び、

――――――ドゴゴゴオォォンンン……!

っと、やっと止まりました。でも逆向きに着地してしまったみたいです。
「いたたたたぁ…、もうちょっとうまく着地してよ~ヴェス君、…ん?」

――――――ムニュ

「この感触は一体…」

――――――ムニュ

真っ暗で何もわかりません。

――――――ガシッ!

首を掴まれる僕。
「え?」
開かれるコンテナの扉。光が差し込んできて見えた最初のものは、
「どこ触ってんのよ、あんたは!!!!!」
立花さんの鉄拳でした。…バタッ。

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