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”ツンデ・レデン・刹ッ”の第22幕

ん~っ、はぁ~! 
どうもおはようございます。海の男ことシミコンで御座います。
僕の小説もコレで200ページを超えましたが、話はやっと1/5ぐらい進んだというところでしょうか…。
長い…、この小説は長すぎるッ! 長すぎるんだよッ!
キャラが多すぎるので話には困りませんが、一人一人を細かく出していくとどうしても話が長くなるッ。まぁ、気長に書くしかないのが世の中の条理。自然に身を委ねましょう。

さて、今日も か な り いい天気なので海から自然の恵みを分けてもらってきます。グッドラック ミーっ♪

では、”ツンデ・レデン・刹ッ”の第22幕  目が覚めたら…

スタート!



第22幕  目が覚めたら…



うっぅぅ…、キモチワルイ。
二日酔い×10の二十日酔いに匹敵する気持ち悪さだ。吐きそう。
吐き気に耐えながら目を開けてみた。そして思った。

――――――ここはどこだ?

俺は今、見渡す限り真っ暗な空間にいる。音も聞こえない。何も見えない。
やべぇ…、記憶がない。酒でも飲みすぎたのか俺は?
だが、まるで空をフワフワと飛んでいるような感覚だけはある。いや、俺の体が空気で出来ているみたいと言った方が合っているな。体が軽い。
ん~っ、何だか懐かしい感覚だ。前にもこんなことがあったような気がする。
よしっ、良く分からんがとりあえず飛んでいよう。
「あはは~」
とっても楽しいぞ。空を飛べるなんて早々あるもんじゃねぇぞ。
それに最近疲れが溜まっていたせいか妙に楽しく感じる。このまま一生空中浮遊を楽しんでいたかったが、世の中そう上手くはいかない。
上方向の空間に突然キレツが入った。
「何だ?」
それはみるみる大きくなっていき、俺のいる空間全体があっという間にヒビだらけになった。ヒビの間からは、僅かな光が漏れている。
「げっ、このまま崩壊か?」
予感的中。

――――――バキィ~~~ンッ

真っ暗だった空間が崩れた。
崩壊する空間のカケラ。その隙間から一気になだれ込んで込んでくる光。
「まぶっ!」
太陽を直に双眼鏡で見てしまったかのようなものすごい光に目がくらんでしまった。真っ暗なところにいたのに急に眩しいところに行くと目がくらんでしまうアレだよアレ。
「何だって言うんだよ、ったく」
ようやく目が慣れてきたのでゆっくりと開けてみた。
「んっ?」
向こうの方に微かだが黒い塊が見えた。それは光に包まれているこの空間で唯一確認できたモノ。これは行くっきゃねぇだろ。
俺は何を思ったのか、某国で大人気のツンデレマンのように頬を膨らましながら、「あんたの為にイクんじゃないんだからねッ~」と今思えば何を言っているんだ俺は、と後悔するような事を叫びながら飛んで行った。
目標が近づいてくるとそれが何か分かってきた。それは人影。恐らく女の子だ。ネコミミやシッポは確認できない。よしっ、安全確認終了。
「お嬢さん」
パサァァァっと、いつの間にか羽織っていたマントを豪風で払いのけながらその少女に到着ッ! 
「お嬢さん…、こんな所でナニをしているんだい?」
そのジェントルマンな俺の言葉に、エメラルドグリーンの髪の毛をお持ちのお嬢さんがこちらに振り返ったかと思ったその時、

――――――ニョキっ、ポンっ

頭には白いネコミミ、お尻からは白い綺麗な尻尾を勢い良く生やし、

「ニャッ、ご主人様ニャ! は~や~く~起きるニャ~~~!!!」

――――――ザシュシュシュシュッ!

「うぎゃぁぁぁッッ~~~!!!」

――――――ガバッ!

飛び起きた。
「どうしたニャッ? 何かあったのかニャッ?」
頭が割れそうに痛い。あまりの痛さに手のひらで額をさすってしまうほどだ。
悪い夢…、そう…、悪い夢を見ていたんだ。その証拠に胸が上下するほど呼吸は乱れ、嫌な汗が頬から滝のように出ている。
「お~いニャ~?」
それにしても懐かしい夢だった…。まるで昔に戻ったような気がしたぜ。
「…応答しろニャ~…」
俺はどうして寝ていたんだ? 何があったんだっけな?
「ご~しゅ~じ~んさ~ま~?」
それにここは…、どこだ? って俺、上半身ハダカじゃないか。下は…、おいおいパンツ一丁かよ。
「…もういいニャ~…」
泣きそうな声が聞こえるぞ? 変だな…、いつもなら、「無視するなニャ~~~!」と爪攻撃が飛んでくるはずなのにな。いつものレデンじゃねぇ。
ツッコミが来ないので、
「おいレデン。ちゃんと気づいているからな」
「ニャっ?」
しょうがなく返答。むっ…、ちょっと今おかしかったぞ? 何だか俺の声のトーンが違くないか?
違和感に包まれる俺をよそに、ネコ耳とシッポが極限まで垂れ下がっていたレデンは驚いた様子でこっちに振り返り、
「もうっ、気づいているならもっと早く言ってニャっ」
誰もが腰を砕かれそうな笑顔で…、笑った。
おいおいおいおいおい…、何だこのレデンは? キャラが違っていないか?
「ノド渇いてないかニャ?」
「へっ?」
泣く子も黙るようなニコニコ光線を照射しながら、レデンの顔が近づいてきた。何だッ? 何なんだッ?
俺はちょっとだけ体を引きながら、
「あぁ…、かなり渇いている」
「分かったニャ。何か冷たいものでも持ってくるニャッ」
ニコパァ~と表情がいっそう明るくなったレデンは、ピョンと飛び跳ねてから白いカーテンを<シャァ~ッ>と開けて出て行った。その動作を脳内で処理しているうちに、少しだけ頭の回転速度が回復してきた。
「ここは…」
自分の置かれている状況を確認する。
周りは白いカーテンに囲まれている。横には窓があるのか光が差し込んできていて、俺の頭がさっきまであった場所に光が集中して注がれている。俺が今座っているのはベッド。汚れ1つ無い白いフトン。ここまでの情報収集で結論は出るよな?
「ここは…、保健室か?」
床は木造でボロっちぃ感じだが、ここは紛れも無く保健室。昔よく嗅いだあの独特の匂いが充満している。あぁ…、懐かしい。思い出が蘇ってきた。そう…、昔よくしていた他愛も無い遊び。よく…、保健室で女の子が寝ていたベッドの残り香を嗅いだりしていたなぁ…。

――――――クンクンクン…

「はっ? 無意識に体が反応してしまったッ?」
ふと我に還れば、いつの間にかフトンの匂いを嗅いでいるのに気が付いた。昔の習慣って恐ろしいよな。いや、真に恐ろしいのはこの保健室というこの魔の空間ッ。人はココで欲望という…、

「持ってきたニャ~♪」

まるで俺の妄想を吹き払うかのように白いカーテンが<シャッ>と開かれた。
「うぉぅっ!?…何だレデンか…」
「はいっ、とっても冷えたお水ニャっ♪」

――――――カランコロンコロン…

氷同士がぶつかる心地良い響き。
レデンが両手で大事そうに持っているのは、水がタップリと言うか、水よりも氷の方が多いんじゃないかと思うぐらい氷が入っているゴツイ湯飲み。それが俺の前に差し出される。
「あぁ…、ありがとう…」
「どう致しましてニャっ♪」
この異常な上機嫌は何なのだろうか。不気味にもほどがあるぞ。こんな太陽神みたいなレデンを俺は初めて見る。
「なぁレデン…」
何故そんなに機嫌が良いのかと聞こうとしたが、
「何ニャっ?」
言い切る前に遮断されてしまった。
「いや…、なんでもない」
キョトンとするレデンから湯飲みを受け取ろうと手を伸ばした。
「…ん?」
そこで気づく。
「あれ? 何だか俺の手…、いつもよりも小さくないか?」
湯飲みを持つ。だが、何だかしっくりこない。いつもと持つ感覚が違うというか…、とにかく何かが変だ。
「まぁまぁ…、グイっと飲んでニャ」
レデンが湯飲みの底を手で押し上げきた。
「うぉっ、零れる零れるっ」
急いで湯飲みに口を付けたので零れなかった。ゴクッゴクッとノドを動かすと、良く冷えた水が体を満たしていった。あぁ…、人間やっぱり一番疲れたときは水だな、水。
一気に全部飲んでしまった。
「…美味しいかったかニャ?」
飲み終えた俺をジロジロと見てくる。
「あぁ…、美味しかった」
湯飲みをレデンに差し出す。この時、また違和感を感じた。レデンがいつもよりも少しだけ大きく見えることに。
「ニャフ~、良かったニャッ♪」
それを嬉しそうに受け取ると、レデンはまたカーテンを開けて、白いシッポを高速でフリフリさせながら出て行ってしまった。
「あんなレデンを見て素直に喜べないのは何故なんだ」
直後、キュキュッと蛇口が開かれる音が聞こえてきた。

――――――ニャ~♪ ニャ~♪

水が流れる音に混じって、レデンの鼻歌も流れてきた。さっきは気が付かなかったが、すぐ側で水を入れていたらしい。
「お待たせニャ~」
今度はすぐに戻ってきた。湯飲みを軽く洗っただけだったんだろう。
「体の調子はどうニャ?」
言うが早いか俺の腹辺りを覆っていた布団がめくられた。
「うわっ? ちょっとレデン」
「うんっ、キズはもう消えているニャっ」
一瞬だけ腹を見たレデンは、そう答えた。
「キズ?」
自分の腹を見てみる。
「本当だ…、キズが無い…、って…」
ようやく思い出した。
「あの執事ぃぃぃッッ~~~!!!」
地獄の底から燃え立つような紅蓮の怒りがこみ上げてきた。ほら見てくれよ。怒りで体がこんなにも震えているぞ。今ならマグニチュード2の地震ぐらいなら起こせる勢いだぜッ!
「ご主人様、落ち着いてニャ!」
「これが落ち着いていられるかーッッ!!!」
俺の肩に触れようとしていたレデンの手を<パシッ>と軽く払った俺は、ベッドから思いっきり飛び降りた。
カーテンを乱暴に開け、出口を確認する。
「待っていろ執事、闇討ちだーーーッッ!!!」
そして走り出そうとした瞬間、

――――――ズルリ…

「えっ?」
下半身に異常事態発生。あっ、そんなに下のほうじゃないからな。ちょっとだけ上だな。まぁ…、パンツが足元までズレ落ちただけさ…。なっ、大丈夫だろ?
「えっ?」
とりあえず、マジで何が起こったのか分からない。どうしてパンツがズレ落ちたんだ? さっきの執事との戦闘で痩せたのか? それにしてもちょっと痩せすぎだろう。
「きゃっ、ご主人様がエッチニャッ!」
後ろから女の子らしい普通の反応が聞こえてきたんだが、どう考えてもコレはレデンが見せる反応じゃないだろう。いつもの『何てモノを見せるニャ~~~ッッ』と言いながらの切り裂きジャック行為はどこへ消え失せてしまったんだ。ここまでキャラが違うって事は…、

――――――はっ…、まさか…!

俺の中である恐ろしい仮説が生まれてしまった。それは…、今がいつだということだ。
もしかしたらあの時から一ヶ月ぐらい時間が過ぎているのかもしれない。それだと、レデンが優しいのも、俺の体が痩せたのも理由が付く。そうだッ、きっとそうに違いないッ。俺は一ヶ月以上寝たきりの状態だったんだ。仮説が真実へと近づいていく。

――――――ガラッ

「ぬっ、目が覚め…」
何の前触れも無く扉を開けて入ってきたそいつは、この世に生を受けた時と同じ服装をしている俺と、その後ろで両手に顔を当ててはいるが指の間は全開になっているレデンを一見すると、
「はははっ、お邪魔だったみたいだ~♪」

――――――バタンッ

すぐにUターンして消えた。今のは確か…、
「って、おいっ! 野々原ぁッッ!」
そう叫びつつ、パンツを急いで上げるもすぐに下がってしまうので、パンツを押さえながら動けないでいると、
「呼んだっちゃ?」
扉が開いて再び登場。長い髪を青と赤のリボンで留めていて、度が入っているのか分からないメガネをかけている少女。だがしかし、一番目に止まるのはボロボロの白衣だ。それを制服の上から羽織っている。そう…、こいつが俺様に変な薬を飲ませやがった張本人、野々原千鳥だ。
俺が気絶する前と今とで違うことがある。野々原も身長が高くなったような気がすることだ。
「おい…、聞きたいことがある」
左手はパンツを押さえるために、右手は野々原を指差すために使用中だ。
「今はいつだ?」
この質問の答えがもしも“新谷先生が気絶してから一ヵ月後だよ”だったら、俺の予想通りだったんだが、

――――――「新谷先生が気絶してから、今日でちょうど一年っちっ♪」

火山噴火ってあるよな。
もし、世界中の火山が同時に噴火したら、地球は滅ぶと思うか? 
俺はそう思うぞ。だってな、良く考えてみろ。火山って言うもんは地上にだけあるワケじゃないんだ。海の底、海底にもあるんだぞ。知っていたか? しかも地上よりも遥かに多い。それが同時に噴火してみろ。地球の中に溜まっているマグマが一気に噴出し、地球の中身が空っぽになってしまうと思わないか? そして空っぽになった地球はそのまましぼんで行き、最後には消滅してしまうんだ。なっ? 地球が滅んだだろ?

――――――「って、嘘だピョ~~~ンっ♪ イェイ♪」

だがな、地球が消滅した後にも残るものがあるんだ。それは…、希望だ。希望が残るのさァァァ~~~♪ ここで歌います。聞いてください。作詞作曲オレ。タイトル、それは儚い夢物語…、って、

「嘘だとッッッ!?」

ここで“俺様による地球の不思議”講座が中断。
見ると、野々原はひと昔に流行った“チャックっ”と言いながら両手の指の人差し指を前に、親指を上に向けるポーズを、ペロリと舌を出しながらこっちに構えていた。そして野々原の瞳にキラリと光が宿ったと思ったら、
「そう…、嘘だよッッッ!!!」
なぜか逆キレ。
「てめぇがキレてどうするんだよッッッ!!!」
俺もキレた。ベッドの側にいたレデンも、
「レデンもキレていいかニャっ?」
意味の分からない言動をし始めてしまった。
「止めてくれ」
「了解ニャっ」
「…でだ、野々原…」
ニンマリと笑う野々原を、
「本当のことを教えてくれ、今は一体いつなんだ?」
真剣に見つめた。冗談向きでマジでだ。すると、
「ん~っ、いつと言うか…」
「さっきからご主人様は何を言っているんニャ?」
視線を後ろに水平移動。標準が合った先には困ったように俺を見つめているレデンがいた。ちょっと待て…、俺が何か変なことを言っているのか? そうなのか?
両手で頭を抱えて苦悩したかったが、パンツがズレ落ちてしまうのでそれはできなかった。だがその時、代わりに俺の悩みを解決してくれる天の御言葉を降ってきた。

――――――「ご主人様が気絶してからまだ10分しか経ってないニャ」

「10分ッ!?」
おいおい…、それはかなりの朗報なんだが、何でたったの10分でこんなに痩せてしまうんだよッ。どう考えてもおかしい。意味が分からないぜ。
「そうだよ。まだ10分しか経過していない。時計を見てみるのだ」
野々原が顔を<クイッ>と向けた先、窓際の壁の上に時計があった。混乱状態のでも現在の時刻は理解できた、えっと…、昼休みを40分経過した時刻か。なるほどな。確かに10分ほどしか経過していないようだ。だがな、それがどうした。何の理由にもならない。腕や手が細くなったんじゃない。俺の体全身が縮んでしまっていることにはなッ!
俺は野々原を問い詰めた。
「時間なんてもうどうでもいい。俺が知りたいのは、この体の事だッ。腹のキズが治ったのはいいが、腕やら手が小さくなったような気がするぞ。それに、どうやら身長もかなり低くなっている。野々原、お前とほとんど目の位置が同じじゃないかッ! さっきまでは野々原と頭2つ分ぐらい身長に差があったはずなのによッ。これってもしかしてさっきの薬のせいなのかッ? おいっ、どうなんだよッ!?」
「ゴメン、もう一度最初から話して」
「死ねぇぇぇいいぃッッ!!!」
片手でパンツを押さえながら野々原に突進するも、
「ヒラリっ♪」
と声に出された擬音語の通りかわされてしまって壁に激突。
「まぁまぁっ、冗談の通じない先生ですデス」
「もしもこの状況で笑えていたら、俺はお釈迦様に究極進化していたよ」
壁から顔を離して野々原を睨みつけるが、ニコニコヘラヘラしているだけなのでムカついてきた。
そんな俺の怒りボルテージを感じ取ったのかは知らないが、野々原はニヤケ顔を止めてしゃべり始めた。
「まぁまぁっ、そんなに怒んないでよ。あの薬のおかげで助かったんだからさっさっ」
「あの薬は何だったんだよッ?」
そう…、それが問題なんだよ。
「あの薬は………、ただのキズ薬だよ?」
野々原は窓の外を遠い目で見つめている。
「おいお前、怪しいにもほどがあるぞ」
「そ…そんなことないすよ」
「だったら俺の目を見ろッ。そして答えろッ。何でただのキズ薬で体が縮むんだよッ!」
「さ…さぁ…?」
「もう我慢ならねぇ~~~!!!」
温厚な青年と呼ばれるほど近所でも大人しい部類に入る俺様でも、最早これまでッ。
「死にさらせぇぇぇッッ~~~!!!」
人気の無い道を歩いている女性に襲い掛かるが如くッ、熊が獲物を喰らい尽くすが如くッ、全身の神経を野獣のように研ぎ澄ませ、俺は野々原に飛び掛った。
「待つニャッ!」

――――――ドゴォッ!

横腹に衝撃が走った。
「グ…ハァァァ…?」
嫌な息を吐き出しながら横を見ると、レデンがそれはそれは完璧なドロップキックを俺に叩き込んでいた。
「何で蹴った…?」
現在、地にひれ伏し悶絶中。とっても痛キモチワルイ…。
「ご主人様はただ体が縮んだだけじゃないんニャッ!」
高らかにそう宣告したレデン。そして、どこからともなく取り出されたのは1つの手鏡。
「見るニャッ」
太陽の光が鏡に反射して一瞬目がくらんだが、
「…え…?」
鏡に映っているやつを見る。
「これってまさか…」
それは…、俺だ。俺だった。だが、何かが違う! いつも見慣れている俺ではないんだッ! じゃあこれは誰だ? いや、誰にも分からないような気がする。分かるのは一人、俺だけだ。だってこれは…、

「レデンと同じ子供みたいニャっ、ご・主・人・様っ♪」

レデンがさっきから嬉しそうにしている理由が分かったぜ。誰だって、自分の歳と同じくらいの友達の方が嬉しいよな。歳が違うと立場が違ってくると言うか、接し方にも限界があるよな。今の俺はレデンと同じくらいの歳に見える。つまり、鏡に映っているのは、

――――――「中学生の時の俺だ」

驚きのあまり、さっきレデンに蹴られた痛みは消し飛んでいた。
「やっぱりそうニャ? ん~っ、ご主人様と同じ歳ニャ~♪」
ゴロゴロとノドを鳴らしながら抱きついてきた。
「そうなのっ、私もビックリっ♪」
乙女が自分の都合のいいような頼みごとを神様にする時に出すキラキラ光線を出しつつ、両手を胸の前で絡めながらの野々原のワザとらしいビックリは、何で俺にこんなにも怒り蓄積させるのだろうか。謎だな。

「私が思うに、さっきのキズ薬によって新谷先生の体は若返った。その効果によって体内の縮小に伴い傷口が消え、細胞の分裂も活性化した。だからこんなにも早くキズが治ってしまったんだろう…、どうだろう新谷クン、この推理っ♪」
口元に手を当てながらニヒルな笑みを浮かべ、まるで名探偵が事件の真相を推理しているみたいに、野々原はそれっぽく言った。
「野々原の作った薬なのに、何でこうなることが分からなかったんだよッ?」
抱きついてくるレデンをそっと放し、俺は立ち上がった。もちろん、パンツを押さえながらな。
だが、野々原はパンツ一丁の姿の俺から目を離すこともなく、こっちが少し負けてしまうようなエンジェルスマイルを振りまきながら、言葉を発した。
「ん~っ…、私が薬を開発する時は、いつもイメージで作っているのですよ。例えば、“よしっ、じゃあ~、今日はキズ薬っぽいのを作ってみよう~っ、イェイ♪”で、そんなノリで適当に調合すると、一応キズ薬が出来ちゃうっぽい感じなのさっ。だから、詳しい効果は全くと言っていいほど分んないんだよねッ!!!」
「自慢げに言うんじゃねぇよッ!!!」
「褒められたぁ♪」
「褒めてねぇよッ!!!」
「まぁまぁっ、結果オーライって事で勘弁しろやいっ♪」
あああぁぁぁ~~~、もうイヤだッ。こんな苦労をしてまでこの学園に俺がいる必要があるのだろうか? なぁ…、どう思うよッ?

――――――「でモ、野々原さんの薬じゃなかったラ、絶対に新谷先生は死んでいましたヨ?」

シュパプール・テリャ・マドフェフカ



保健室の入り口に俺たちの視線が注がれた。
「よっ、おかえりっ♪」
「ただいま戻りましタ、野々原さン」
そこには、綺麗な金髪を後ろで大きな三編みに束ね、白い帽子を被ったマドフェフカがレディの微笑を浮かべながら立っていた。その手には、大事そうに水枕が抱き抱えられていた。
「新谷先生の目が覚めて良かったでス。あっ、もうこれは必要ありませんネ」
そして水枕をテーブルの上に優しく置くと、マドフェフカは野々原に視線を移した。
「やっぱり野々原さんの薬は良く効きますネ」
「だろ~いっ♪」
得意げに答える野々原。
「でモ、何の副作用が起こるか分からないのが怖いでス」
「だろ~いっ♪」
『アハハっ』と笑い合うお二人。そんな二人を見ていると自然に口が動いた。
「“だろ~い♪”っじゃっねぇぇぇ~~~!!!」
ちゃぶ台があったら100回転ぐらい回しているところだ。もちろん超高速でだッ!
「そんなこと言わないで下さいヨ。気絶した新谷先生をここまで運ぶのにも結構苦労したのですかラ」
手をブラブラさせながら、ため息をつくマドフェフカ。
「こうなったのは全部お前のせいだろうがッッッ!」
俺は中学生の時にはこんな声を出していたのか…。良く響く。
そんなチャイルドヴォイスがマドフェフカを貫いた。すると
「ッ!?………はイ………、確かにそうでス…」
何だか泣きそうになり、そしてそのまま俯いてしまった金髪の少女からはダークなオーラが放出された。そのオーラが充満していき、見る見るうちに癒しの空間であるはずの保健室が重く暗い空気に包まれた。
「ひどいご主人様ニャ…」
このダークサイドを発生させたのはマドフェフカだ。決して俺が原因じゃないぞ、レデンッ! そうだろッ!?
しかし、そんな俺様の考えを青竜刀でぶった切るようなことが起きてしまった、俯いているマドフェフカ。そこから一粒の涙が落ち…、それが木造の床に染み込んでいった。
俺の嫌いなことを教えてやる。それは、女の子を泣かせることだ。
落ち込んでいるマドフェフカの肩を両手で軽く触れて、優しく話しかけた。
「あ…いや…、違うよな! 悪いのは全部あの執事ッ。マドフェフカは何も悪くないぜッ。悪いどころか俺を助けてくれた命の恩人だぜッ、ヤホ~イ」
俺様はジェントルマン。レディと小さな女の子には優しいのさ。
「ぅッ…、本当に申し訳ございませんでしタ…」
顔を上げた金髪少女は目元を軽く拭ってから、
「私にできることなら何でも協力致しまス。学園際でやることになったメイド喫茶にも全力を尽くしまス。ですかラ…、新谷先生。今後ともよろしくお願いしまス」
昔、皇女だったらしいこの少女は、そんな威厳にも似た敬意を示しながら、ゆっくりとお辞儀をした。
「あぁ…、ありがとうマドフェフカ」
これで…、俺様の言うことを忠実に守る奴隷をゲットだぜッ!
今までで最高の感動だッ! もう死んでもいいぐらいだなッ!

――――――「ニャっ? メイド喫茶をやることになったっ? 何の話ニャ?」

感動に浸っていたのを邪魔したのはレデン。見ると、耳を<ピンッ>と立てて、こっちに向けてギラギラ視線を集中砲火してきている。ふっ…、武者震いってやつかな。嫌な汗が背中から滝のように流れ出してきたぜ。
俺は動揺をレデンに悟られないように、呼吸を整えてから話し出した。
「あぁ…、言ってなかったな。あのクソジジィに頼んだんだよ。“この国の学校で開催される学園祭では、必ず1つクラスは“メイド喫茶”を行わなければいけない“って内容の法律を作ってくれってな。あのクソジジィのことだから明日には法律は全国に出回るんだろうな。でだ…、モウマンタイ組以外の全てのクラスは、すでに学園際でやる出し物を決めて、内容を表記したプリントを提出したらしい。俺たちのクラスだけ出し物が決まっていないんだ。と言う事は、俺たちモウマンタイ組は、必然的にメイド喫茶を出し物としてやらなければいけないってことだ。どうだ、すごいだろう」
自分で言っておいてなんだが…、悪徳政治家になる才能が俺にはあるんじゃないだろうか。
そんな将来もあり得るなぁ…、と思っておきたかったんだが、そんなヒマは無かったな。

「ご主人様…、レデンは悲しいニャ…」
レデンは自分の尖ったツメを見つめながらボソっとつぶやいた。
「…何がだ?」
自分のツメを見つめるレデンの瞳が、山姥が夜中に包丁を研いでいる時の瞳みたいに見えるのは、恐らくレデンが俺を殺そうとしているからなのだろうな。
「ご主人様がレデンと同じ年になって、身長も同じくらいになって、声も子供っぽくなって、少しは何かが変わるのかなって思っていたけど、それは間違いだったニャ…」
ダイヤモンドを溶かしたような涙を目にタップリと溜めたレデンは、その涙を拭うことなく構えを取った。
「一緒に学校で昼ごはんを食べてみたかったニャ…」

俺の中で緊急サイレンが鳴り響いた。急襲警報発動中。
「ちょっと待てッ、落ち着けレデン。って、お前たちも何黙ってみているんだよッ。マドフェフカッ、お前は俺の言うことを何でも聞くんだろッ。早く助けろッ。え…、“私はメイド喫茶をやるからそれ以外はお断りヨッ”? じゃあ野々原ッ。お前が助けてくれッ。え…、“また私の薬を試せるからチョー嬉しいのだっ♪”? てめぇッ、人様の体を何だと思っているんだッ。もう一回あのクスリを飲んだら俺は幼児に逆戻りだよッ。え…“それもいいかもニャ…”? よせっ! 軽めでッ、軽めでお願いしますッ」

――――――ザシュシュシュシュァァァ…



心地よい音が鳴り響くお昼時、教室に残された時雨はというと、机にひれ伏していた。

「あぐぅ…、新谷先生遅いですぅ~。おなか減りましたよ。オニギリ食べたいです。でも、待っていると言っちゃったから待っていないとダメなんです。ガンバレ時雨。負けるな時雨。新谷先生はやく~」

――――――ギュルルルルルゥゥゥ…

心地よい音が鳴り響くお昼時。



(次回予告)

ようやく学園祭が始まる予感?

それは僕にも 分 か ら な い っ ♪

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この記事に対するコメント

サザエの丸ごと刺身美味すぎる~♪

いや~、人生至福の瞬間です。

って言うか、もうクラゲが大量に発生しているんですけどッ!
例年なら8月の中ごろから発生するのに、何この異常気象ッ!?
こんなことは生まれて初めての現象ですッ!
もう海に入れないッ! クラゲに6箇所も左腕を刺されたッ!

 ク ラ ゲ 怖 い で す

【2006/07/08 16:50】URL | シミコン #-[ 編集]

では、クラゲの刺身も召し上がr…(激しく銃殺

…ツンツン百倍! ツンデレマン!!!(何

【2006/07/08 19:35】URL | きつねこ #-[ 編集]

>きつねこさん

クラゲは見るのも食べるのも書くのも嫌ですッ!!!

ツンデレマンは国民的ヒーローだったんですけど、あるスキャンダルが原因で放送禁…;y=ー(゚д゚)・∵. ターン

【2006/07/08 20:01】URL | シミコン #-[ 編集]

ア、アポトキシン48・・・(斬殺

クラゲに魚を与えるとグロイのなんのって・・・(ヤメ

【2006/07/09 01:24】URL | うにょらー #c5jzC1VQ[ 編集]

>うにょらーさん

その遊び面白そう…w <丶`∀´>∩

【2006/07/09 08:57】URL | シミコン #-[ 編集]

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