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コレは良い物だ


 【TYPINGMANIA 4 】


 『メグメル』とか『夢想歌』とか在って泣いた。

 レベル8まではオールオッケー。でもレベル9からは壁がありますね。ボクにとって『9』は魔の数字。そう……あれは……








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”自分に厳しく、地球に優しく” 第15幕

ふ~、今まで書いたヤツを全部、やっと載せることができたぁ…。
もし、万が一にでも、読んでくださる人が居ましたら、ぜひっ感想などを書き込んでもらえると、とってもとっても嬉しいです。
この作品は、とっても自信作ですっ。

では、”自分に厳しく、地球に優しく” 第15幕 スタート!



第15幕  初デートッ!?



何だか、良い気持ちです。まるで空をフワフワと飛んでいるような気分です。いや、体が空気で出来ているみたいと言った方がいいのでしょうか?
「あはは~」っと、空を飛んでいた僕でしたが、向こうの空に僕と同じように飛んでいる誰かがいるのに気が付きました。
それは、まるで天使のような姿をした美少女。って、遠くからじゃよく見えません! 
僕は息を荒らげ、カッコイイスーパーマンのように飛んで行きました!

「お嬢さん」
パサァァァっと、マントを豪風で払いのけながらその天使の前に到着した僕。
「もしや…、道に迷われたのですか?」
そのジェントルメンな僕の言葉に、その金髪の天使はこちらに振り返りました。でも、それはどこかで見た覚えがあるような顔でした…。
「あらっ、和也君、こんばんは。早速、修行よっ!」
思いっきり腕を掴まれる僕!

「うぎゃぁぁぁッッ~~~!!!」

――――――ガバッ!

「どうしたの!? 何かあったの?」
呼吸は乱れ、ちょっと嫌な汗が背中を伝っていました。
「いや、何でもないよ立花さん…。でも、ちょっとノドが渇いたね…」
「分かったわ。何か冷たいものでも持ってくるわ」
布団に座っていた僕の傍から、立花さんはリビングらしいところまで歩いて行きました。しばらくすると、冷蔵庫が開けられる音が聞こえ、コップに何かが注ぎ込まれる清々しい音が、僕達のいる空間に響き渡りました。それはまるで、小川のせせらぎのようで…。

「はい、どうぞ」
さっきの音に酔いしれていて、立花さんが戻ってきたことに気が付きませんでした。
「あぁ、ありがとう」
お盆に乗っていたコップを受け取りました。
「どう致しまして」
布団の傍に正座で座る立花さん。僕は、そのコップに入っているお茶を飲もうとコップに口を当て、
―――――――ゴクッ、ゴクッ…

美味しくいただきました。
「ぷはぁ~、美味しかったよ。何か、やけにノドが渇いてさぁ~」
僕が差し出した空っぽのコップを無言で受け取った立花さんは、そのコップをお盆に乗せました。
「それはそうよ。だって、和也君は昼休みからずっと水分を取っていなかったんだから」
「へぇ~、そうなんだぁ…」
そうだったのですか。僕は昼休みから一滴も水分を取ってなかったのかぁ…。
「まだほしい?」
私服の立花さんはとっても可愛いです。
「いや、もういいよ。ありがとうね」
「そう、じゃあ私も安心だわ」
そういえば、私服姿の立花さんを見たのは初めてかもしれません。薄い水色のワンピースに大きな赤いリボンが胸元にチョコンと付いています。

「あっ、そうだ! 立花さんに聞きたいことがあったんだ!」
そうです。そろそろここら辺でツッコミを入れなければ!
「うん、何でも聞いて」
ニコッと微笑む立花さん。昨日の僕ならこの笑顔にビビリ、何も言えなくなりますが、今日の僕は言いますよっ!
「あのね…」
「うんうん…」
段々と近づいていく僕と立花さんの顔。

「ここは一体どこ? そして、いつの間に僕はここに!?」
質問は1つずつした方がよかったでしょうか?
「ここは私の家。そして、和也君はヴェスに“運転”されてここに来たのよ」
「あぁ~、納得…」
「そう、良かった」
「してたまるかぁ!!!」
布団を払いのけて立ち上がりました。
「もう! また僕を危ない目に合わせるつもりでしょ!?」
「危なくないわよ」
すくっと立ち上がる立花さん。
「じゃあ、この手を離してよ! 逃げないから!!」
ものすごい力で腕を掴まれている僕。筋繊維が悲鳴を上げています。
「手を放したら、ちゃんとリビングまで来てくれる?」
「行きます! 行きます!! やばいっ、骨まで軋(きし)んできた!!」

――――――パッ

「フ~ッ、フ~ッ!」
立花さんに握りつぶされかけた腕を見てみると、それは見事に立花さんの手形がくっきりと赤く写っていました。ヒリヒリして痛かったので、痛みを和らげるために息を吹きかけましたが、痛みは全く引きませんでした。

「こっちよ、和也君」
立花さんはリビングらしき部屋に先に入って行ってしまいました。
「さっきの夢が正夢になっちゃったなぁ…」
立花さんの手形が付いた腕を見ながら、僕はつぶやきました。…おっとぉ…、早くリビングに行かないと立花さんにまた何かされそうなので急がねばっ!

「やっと起きたか、このヘタレ!」
「おはよウ~」
エシナは立派なソファーに偉そうにふんぞり返ってテレビを見ていましたが、僕の姿を見ると、すぐさまに僕を傷つける言葉をかけてくれましたよっ! ヴェス君の癒しボイスでストレスを相殺していなかったら、僕はエシナに襲いかかっているところでしたよ。…本当だよっ!

「それにしても…、明日、和也が学校で何て言われるかが、俺は楽しみでしょうがないぞ」
「へっ?」
エシナは僕を見ながらニタニタしています。
「何のことだよっ!?」
僕はエシナが座っていた大きなソファーへとジャンプ! そして、無事に着地。
「明日になれば分かることだ…、そんなことよりも…、くっくっく…、この番組は面白いな~! ひゃっひゃっひゃっ~!!」
エシナは僕のことなんて見向きもせずに、またテレビを見始めました。いつもの僕なら、このままキレて、エシナに殴りかかって、逆に殴られて泣きますが、そんなお約束を繰り返す僕ではありません!
「立花さん、優しい貴女なら教えてくれるよね?」
立花さんにさり気なく助け舟を出す僕。しかし!
「明日になれば分かるわよ…」
ちょっとだけ、哀れみの目で僕を見る立花さん。
「そうだった! この二人の性格を忘れていた!! じゃあ、ヴェス君! 君なら知っているよね? だって君が僕を…、なんか良く分かんないけど、何かしたんでよねッ!?」
その僕の必死な訴えにヴェス君は、
「明日になれば分かるヨ~」
最後の希望が絶望に変わり、僕は自分を支える力さえ沸かなくなり、ソファーに崩れるように座り込みました。

「さ・て・とっ、ついにあの修行の時間がやってきたわねっ」
僕の気分とは全く正反対のテンションで、立花さんが嬉しそうに言いました。
「お~、もうこんな時間か。早く行くぞ、和也」
エシナはテレビのスイッチを切り、ソファーに崩れるように座っていた僕の胸元を掴みました。
「お~い、行くぞ~(スパパパパ~ン!)」
往復ビンタを受けること約0.5秒。僕は自分のほっぺたの異変に気づき、その原因を作ったエシナを急いで投げ飛ばしました!
「うぎゃ~、ほっぺたがぁ! なんか信じられないように腫れている!!」
「よ~し、気合も十分だな、和也!」
「僕の美しい顔がぁ~~~!」
自分の顔に驚いている僕に、立花さんの冷たいお言葉…。
「和也君…、早く来ないと、またヴェスに“運転”させるわよ?」
「うんてン~、うんてン~!」
僕の周りをぐるぐると回るヴェス君。
「…行けばいいんだろっ! 行ってやるよっ!!」
半場、やけくそで返事を返しました。
「その意気よ。さぁ、ついてきて」
立花さんの言葉で僕は重い腰を上げました。そして、僕はこの先にある恐怖を感じることも無く、地獄への案内人たちの後について行ってしまいました…。



立花さんの豪華な家を出て、しばらく“ソム”の町を歩いていましたが、やっぱり僕は、コレが山の中とはまだ信じられません。周りからは、買い物客のおばさんたちの声があちらこちらから聞こえてきます。平和で、全く違和感の無い町。普通の町です。

「着いたわよ」
いつの間にかたどり着いた場所…。それは、

――――――「映画館?」

「そうよ」
僕の疑問系の発言に、間髪いれず答えてくれた立花さん。
「まさかコレって…」
僕は今、自分に起こっている事実が理解できません。それは何故かって? それはね、僕が女の子と一緒に映画館に来ているって事だよっ! しかも、相手は可愛らしい私服を着ているとっても素敵な女の子。やばいですよ! コレってまさか…、初デートォ~!?

その時、僕の右肩の上に天使(身長5cmでしかも裸で、背中に翼が生えていて、頭の上に金色のわっかがある僕)が「ポムッ」と現れて、耳元でつぶやきました。
「そうだよ。コレは君にとっての“初デート”だよ。そうだ! 君にとっても良いことを教えてあげるよっ!」
天使は僕の耳元に近づき、
「彼女の弱点は…、耳たぶだよっ!」
そういうと、子供がエロ本を読んでいるときの顔をしながら、天使は天空へと昇っていきました。

「どうした和也? 顔が言葉で表せないような不気味で、かつ、キモイ顔をしているぞ?」
「はっ!?」
僕は自我を取り戻し、急いで顔を元の愛らしい僕の顔に戻しました。
「立花さん? こんなところに僕を連れてきて、一体僕にナニをするつもりですか?」
高鳴る鼓動を抑えるのに精一杯の僕です。はぁ…、はぁ…。
「ついてこれば分かるわ」
そういうと、立花さんはエシナ達と映画館の中に入っていってしまいました。
「待ってよ、立花さん!」
何の疑いをも持たずに、僕は立花さん達の後を追いました。立花さんの通った自動ドアが閉まろうとしていたので、急いで自動ドアへと走って行きましたが、急に何か大きいものが自動ドアを開けて出てきました。

――――――ドスンッ!

「うわっ」
僕は止まる事が出来ず、その大きな何かに激突してしまいました。そして、信じられないことに僕の体がどんどんその物体にめり込んでいきます!
「にぎがぁ~…(息がぁ~)」
その物体は異様に軟らかく、僕の体がさらに沈んでいってしまいます!
やばいです! 死んじゃう!! ヘルプ・ミ~!!!

――――――ムンズッ

「えっ?」
なにか、大きな手のようなものが僕の背中の服を掴んだかと思ったら、思いっきり引っ張り出されました。
「けほっ、けほっ」
息を荒げながら、僕はチラリと上を見ました。するとそこには、大きな白衣を着た巨漢の男の人が立っていました。
「…おめ…、だれだ…?」
僕の背中を掴んでいた手に力が入ります。
「うわぁっ~」
いとも簡単に片手で持ち上げられ、僕の顔がその人の顔と同じ高さになりました。
「おめ…、だれだ…?」
もう一度同じ質問を繰り返したかと思ったら、僕の顔とその人の顔が近づいていっています!
「うぎゃぁ~~~、言います、言います! だからその顔を近づけないでっ!!」
僕がこれほど嫌がるのはですね、まぁあれですよ、この人の顔がぶっちゃけ“フランケンシュタイン”みたいだからですよっ! さすがの僕もこれには参ったね。この僕がだよっ!
「おめ…、怪じい…こっぢ…来い…」
「この僕が怪しいだってぇ!? そんな訳があ…」

――――――ムギュッ

「にぎがぁ~(息がぁ~)」
僕は、またお腹に押し込められて身動きが取れなくなってしまいました。
「ばずけて~(たすけて~)」
「…こっぢだ…」
僕の悲鳴がお腹に轟く中、そのフランケンシュタインみないな人はどこかに向かって歩き出しました。
「だじゅけてぇぇ~!(半泣き)」
くそぅ! どうせ埋もれるなら、立花さんのアレとか沢田さんのあんなものに埋もれたかった…。そして、そのまま死んでいきたかった…。あぁっ、未練が盛りだくさんだ。くそぉ~、これも全部立花さんが悪いんだ! 僕が死んだら立花さんの背後霊になって、一生ストーカー行為を繰り返してやるっ!

こんな危機的状況に陥っても、僕は元気でしたが、やっぱり人間には酸素が大事ですね。だって、僕の意識は後もうちょっとしか残っていませんから。
「さようなら…、みんな…」
その時です。

――――――「あれっ! “いしかっちょ”だぁ~!!」

この声は…、

「ごんにちは…、渚ぢゃん…」

薄れ行く意識の中…、確かに僕は立花さんの声を聞いたような気がしましたが、それが今となっては真実なのかよく分かりません…。でもこれだけは言えます。
「立花さんとエシナへの恨みを…晴らさずにぃっ、決してぇっ、朽ち果てるものかぁぁぁ~!」
それだけが僕の生きる希望です。

――――――フッ(意識が飛んだ)



(次回予告)

今日の和也もヒドイ目に遭いますw


”自分に厳しく、地球に優しく” 第14幕

第14幕  学校って、いいところ♪



「えっ?」
シュポ~ンと飛び出たその先は、
「プ~ルゥ~~~!?」

――――――ガシッ

何とか踏み止まりました。危なかったです。もうちょっとでプールの飛び込み台に、足を引っ掛けて、ヘドロみたいな緑色のプールにダイブしちゃうところでしたっ!
「全く…、シパンめ! 確かに5月のこの時期には絶対に見つからない場所だけどさっ!」
そこは学校にある屋外のプール。そこは絶対に見つからない場所で…。

――――――「新谷君…?」

…この声は!?

「沢田さんッ!!?」
そんな! まさか! そんなわけがあり得るはずが無い! これは夢だ! 妄想だ!!
「こんなところで何をしているのですか?」
しかし、僕の目の前にいる沢田さんは現実で…。
「沢田さんこそ、こんなところで何をしているの?」
「私は水泳部ですから。ちょっとプールの様子を見に…」

そうだった! 可憐な沢田さんは水泳部に所属しているんだった! 
こんな時期にプールの様子を見に来るなんて、あなたは水泳部員の鏡だっ!
「そんなことよりも、なんで昨日はあのまま帰ってこなかったのですか? 心配したのですよ?」
ぐわぁ~、やめてくれ~。僕の心を揺らさないでくれ! 現在、震度6強です!
「それはね…」
僕は平静を装い、普段とは変わらない口調で話そうと努力しました。
「えっとねっ…、何であれから帰ってこられなかったのはね、…そう! 病院!!」
「病院?」
僕は必死で考えます!
「そう! 病院に立花さんが入っていったんだよっ! で、僕はその後を追って、病院の中まで入っていったんだよ」
「それで…、どうしたのですか?」
沢田さんはじわりじわりと僕に近づいてきます。
「それで、一緒にエレベータに乗ると尾行がバレると思ったから、立花さんがエレベータに乗った後に、立花さんが何階で降りたかを確認して、そしてその階に行ったんだよ!」
「新谷君にしては、なかなか思慮深いですね」
「ほめられたぁ!」
「早く続きを…」
「うん! でねっ! 僕は階段でその階まで行ってね。見たんだ…」
「何をですか?」

さて、何て言ったほうがいいでしょうか?
選択肢は3つです!
1:立花さんが患者を「キャハハハッッ!」と言いながら皆殺ししていた。
2:立花さんは実は看護士。緊急の事態で病院に行かなければならなかった。
3:立花さんのお父様は脳がイカれてしまうご病気で、お見舞いをなされていた。

まず、1について考えてみることにします!
立花さんが患者を皆殺ししていた…。これはある意味では、真実! 立花さんが昨日、大量虐殺をしたことは、紛れも無い真実! 僕には真実を報道する義務があります! しかしぃ! そんな事を沢田さんが知る必要はありません! 時に情報とは、それが真実でも人に信じてもらえない時があります。そんな真実を人々が受け入れるには、少し時間が必要なのです! よって、1は却下と…。

次に、2について考えてみます!
立花さんは実は看護士。…おぉ、コレならイケルのでは? 一般の中学生が看護士だったなんて、ざらにあることですよね? そうですよね? 何とか言えよッ!!
…すいません、取り乱してしまって…。最近、疲れているんですよ、僕は。   
ヒッ、ヒッ、フー! ヒッ、ヒッ、フー! 深呼吸、深呼吸!
よし! よって、2は却下と…。

…あぁッもう! 3でいいや!
そして、僕は考えるのがだるくなったので、3を選びました。
「どうしたのですか? ボケ~っとして」
「えッ? いや、思い出していたんだよ! 実は、立花さんにはね。あまり大きな声で言えないけど…」
「はい…」
「病気で入院しているお父さんがいるんだよ…」
こんな感じだったら、しんみりモードに突入できるでしょうか?
「まぁ…、お気の毒に…」
よし! このまま押し切ります!
「うん、可哀想だよねっ! 昨日は急にお父さんの容態が悪化したらしく、それで立花さんは急いで病院まで行ったんだよ」
「それで…」
沢田さんの表情がだんだん曇っていきます。
「はぁ~…、分かりました。私は立花さんを誤解していたようです。あとで謝らなければ!」

そして、沢田さんは立ち去ろうとしました。と思ったら、
「あと一つ質問したいのですが」
こっちに振り返って、僕を見ました。
「なに?」
何を聞かれるのか、ドキドキですね!
「先ほど…」
「うん」
「立花さんとすれ違ったのですが…」
「えッ!?」
嫌な予感がします。
「さっきまで立花さんはここにいたのですか?」
すかさず、
「うん。さっきまで立花さんと一緒にいろいろ話しをしながら学校案内をしていたんだよっ! まだ立花さんはまだこの学校に詳しくなかったみたいだからねっ」

…完璧だぁ! 自分が恐ろしい。

「そうだったのですか…。分かりました。では、私たちもそろそろ教室に行きましょうか。授業に遅れてしまいます」
「うんっ」
そして、憧れの沢田さんと一緒に2年4組の教室へと歩いていくことが出来て、僕は大満足でした。途中、沢田さんと一緒に歩いていた僕に突き刺さるような男子の視線なんて気にもしませんでしたよっ。

沢田さんは教室に着くと、真っ先に、あるクラスメートの席へと歩いていきました。
「立花さん…」
「はい?」
本を読んでいた立花さんは顔を上げ、沢田さんの方を見ました。僕は教室の入り口のドアに隠れながら、じっと様子を伺います!
「あの…、私、貴女の事を誤解していました。申し訳ございません…」
頭を下げる沢田さん。
「はぁ…」
さすがの立花さんも戸惑っています。
「でも、どんな事情がある以上、学校を早退する時は学級委員である私に一度声をかけてくれませんか?」
あぁっ、ここからじゃ沢田さんの顔が見えない! くそったれ!!
「…分かったわ。こちらこそ迷惑をかけたみたいでごめんなさいね」
立花さんは一応事情をつかめたのか、素直に謝っている様です。
「ありがとうございます」
立花さんの席から、自分の席に行こうとする沢田さん。
「あ、あと…」
沢田さんはまだ何かを言いたそうです。
「早く…、お父さんの病気が治るといいですね」
「はぁ…」
そして、沢田さんは自分の席へと行き、座りました。

「よかった、よかった」と、僕も自分の席に向かおうとしましたが、どこからか強力なプレッシャーを感じます! 
「カハッ…!」
それは立花さんから照射されていました。「あんた、なに言ったのよッ!?」という立花さんの怒りのメッセージが僕を包み込みます。僕は必死に“和也スマイル”で対抗しますが、立花さんの怒りを余計に買うだけでした。
必死に自分の席へと歩き出しましたが、僕の周りだけ他の場所とは重力が10倍違ったので、嫌な汗をかきながら何とか目的地に到着しました。

「はふぅ~…」
朝っぱらからいろいろとあり過ぎて、もう僕は疲れました。少し眠くなってしまったので机にゴローンと寝そべってしまいました。
「お疲れだな、どうした新谷?」
横の席には、一応友達の長谷川が。
「もう疲れたぁ~」
顔を長谷川の方に向けて、僕は愚痴りました。
「全く…、朝からナニをしていたんだ?」
長谷川がニヤニヤしています! 殺すぞ、ボケェッ!!
「お前には僕の苦しみは分からないよ…」
僕は顔を窓側に向け、春の日差しが当たる中、ゆっくりと眠りの海へと落ちていきました。

――――――ガンッ

「いっ…!?」
痛みで目覚める僕。
「なに?」
顔を上げ、自分が今置かれている状況を一生懸命に考えました。しかし、目覚めたばかりでまだ頭が回りません。僕の周りでは「くす、くす…」と笑い声が聞こえ、僕の右斜め前には、木村先生が数学の教科書を右手に持ったまま、何だか怒ったような顔をして突っ立っています。
「新谷」
「はいぃ…?」
その僕の反応に、周りのクラスメートからは「ププッ」とか「アハハッ」と、さっきよりも1ランク上の笑い声が聞こえてきました。
「お疲れのところ悪いんだが、教科書の27ページの問1をやってもらえると先生は助かっちゃうんだけどな~」
木村先生の口調は穏やかだったけど、顔は怖かったです。
「えッ? 分かりました…」
僕はやっと状況を掴めました。いわゆる、「居眠りしていたら、先生に教科書の硬い部分で叩かれて、突然の痛みに慌てて起きると、先生にこの問題をやってみろっと言われちゃったよっ」というベタな現象が発生してしまったということですね!? 
僕は机の中から数学の教科書を取り出し、立ち上がって黒板まで歩いていきました。ご親切なことに、問題はすでに黒板に書かれていました。あとは、僕が答えを書けば完成です。

「えぇっとぉ…」
僕はクールな眼差しで教科書を見ながら、かっこよくチョークを持ちました。そして、教科書を見ながら問題を解こうとしましたが…、どうしましょうか…、全く分かりませんよ!! 何だよこの“連立方程式”って! 連立するなよ! 分かんなくなっちゃったでしょうが!
チョークを構えたままの状態で固まっている僕の後ろからは、また「クスクス…」と嫌な笑い声が聞こえてきました。
「どうした新谷? できないのか?」
木村先生が何故か僕の席に座っています。
「もしできなかったら…」

…もしできなかったらッ!?

「俺は彼女にフラれると思えッ!!!」
「えぇっ!?」
「分かったな!」
「はいぃ!」
教室のみんなが「どっ」と笑いの渦を発生させました。

「新谷ッ、先生の貞操はお前の手にかかっているぞッ!(長谷川)」、「頼む! 俺を助けてくれぇ!(木村先生)」、「新谷君、任せましたよ(沢田さん)」
と、クラスメートからの声援を受ける僕。先生は何故か涙ぐんでいます。
「そんなぁ…」
どうしましょう。プレッシャーがかかリまくりですよ。僕が問題を解けなくても、先生が彼女にフラれることは全く関係が無いと思うのですがッ! 
とにかく、この目の前にある問題を解かないことには、僕の安泰した学生ライフを送るという理想の実現が厳しくなるでしょう! 
僕は黒板に向かい直し、再度チャレンジしてみます。でも…、分っかんないですよう! 
どうしましょかぁッッ~~~!
突如、

――――――ピキーン!

「ッ!? ぎゃっぴぃィッッ~~!!」
「どうした、新谷ッ!?」(木村先生)
何でしょうか!? 突然、僕の頭にものすごい電流が流れたような、そんな刺激が脳髄を駆け巡りました! 
その痺れるような刺激は、僕の後頭部の方から発生したような感じがしたので、後ろに急いで振り返りました。僕の目に映ったもの…、それは、教室の後ろの席で「全く、もう…」って顔をしながら、僕に向かって何故か本を開いている立花さんの姿でした。僕が“立花さんは何故そんな顔をしているの?”と考えるよりも速く、僕の脳に何かがなだれ込んできました! 

それは…、知識! ありとあらゆる数字が次々と僕のビジョンに浮かんでいきます! 
定義、定数、概念、公式…、それらの知識がどんどん僕の中に!
体に十分それらが溜まった時! 僕の体が勝手に動きだしました!
「うおおおぉぉぉッ~~~!」
みんなが僕の奇声に驚いている中、僕はチョークが粉砕するぐらいのスピードで黒板に問題の答えをあっという間に書き上げてしまいました! 何だかとっても良い気持ちです。
 
「先生…、どうですか!?」
僕の言葉にはっとした木村先生は、僕の後ろに書かれているその白い文字をじっと見つめ、
「…合格だ、新谷」
右手を突き出し、親指をグッと天井へ伸ばして“OK”のポーズを取る木村先生。
その木村先生の仕草の後には、教室中に先ほどとは意味が違う「どっ」と歓声が沸きあがりました。

「すごいじゃないか! 見直したぞ、新谷!!(長谷川)」,「これで俺はフラれないぞ! ヤホ~イ!!(木村先生)」、「お見事でしたよ、新谷君(沢田さん)」
どうしましょう。僕があっという間にクラスのヒーローになっちゃいましたよ! 沢田さんからもお褒めの言葉をいただいて、僕は感激です!
「よし、席に戻っていいぞ」
「はい!」
気分は有頂天です。その後の授業も気分はルンルンで過ごしました。こんなにも授業が楽しいと思ったことは、今までの僕の人生の中で初めてのことです。しかし、さっきの立花さんの行動は一体なんだったのでしょうか? まぁ、いいや!

そして、今は昼休み。
「なぁ、新谷…」
「んっ、なに?」
購買という戦場から戦利品(明太子入りおむすび&カレーパン)を勝ち得て、今は教室へ長谷川と一緒に帰っている場面です。
「聞きたいことがあるんだけど、…モグモグ…」
長谷川は教室まで空腹に耐えられなかったのか、モグモグと焼きそばパンを食べています。
「教室に戻ってから聞くよ」
歩きながら、食べるなんて…、長谷川はどんなしつけを受けてきたのでしょうか? 親の顔を見てみたいものです。

「いや…、教室でこの質問をすると新谷が困ると思うぞ」
「なんで?」
長谷川はパンを食べることを止めて、ジッと僕を見ました。気色悪くて身震いしました。
「今日の朝のことなんだけど…」
「ッ? 今日の朝が…、どうかした?」
嫌な予感がします。
「新谷さぁ…、今日の朝、何で立花さんと一緒に体育館にいたんだ?」
ぐはぁっ! やっぱりか! 嫌な予感が当たりました。コイツのことだから、絶対にこの事を聞いてくると思っていましたが、実際に聞かれるとどう対処していいか困ります。もし、聞かれたら長谷川を殺そうと考えていましたが、ここでは無理です。人目に付きます。

「分かった、言うよ。でも、ここでは人目に付くから屋上で話すよ」
そこがお前の死に場所だ…。ヒィ~ス、ヒィ~ス…!
「屋上? ちょっと寒いけど、まぁいっか」
僕は屋上へ向かう階段へ歩き出し、長谷川は何も疑わずに僕の後に着いてきました。階段を登りながら、僕は長谷川をどんなツボで殺すか考えていました。一番苦痛を与えられるツボとか、一番死に方が派手なツボとか…。
「っと、もう屋上か」
そんなことを考えながら屋上へのドアに着いてしまいました。
「この学校って、屋上が禁止されていないからいいよなぁ~」
長谷川は僕を追い越すと、ドアに手をかけました。

――――――ギィ…

長谷川にとって、死への扉が開かれました。長谷川は僕より先に屋上に出て、周りに誰かいないか、キョロキョロしています。
「誰もいないみたいだな~」
長谷川は僕に背を向けたまま、独り言のように言いました。
「そうか…、それは好都合だね…」
僕は手に力を込めて、無防備な長谷川に飛びかかりました!
「えっ?」
後ろを振り返る長谷川…。しかし! 遅い!! 死ねぇぇええぇぇッッ~~~!!!
「立花さん…?」
「えっ?」
キキィ~!!っと急停止する僕。
「新谷…、その手は何だ?」
「なんでもないよ!」
僕は人差し指を立てていた手を、急いで後ろに引っ込めました。しかし今は、長谷川のさっきの発言の方が気になります!
「何が立花さんなんだよ…」
長谷川が見ている方向を見るために、体を後ろに回転させました。そして、
「……立花さん……」
立花さんの姿を見ました…。何でこんなところにィッ!?

「あらっ、こんにちは」
立花さんは僕達が出てきたドアの上の、屋上の展望台みたいな場所で、足を空中にブラ~ンとする姿勢で座りながら、お弁当を食べていました。
「新谷さんたちも、ここで昼ごはんを食べるのですか?」
ニコニコしながら、僕たちに話しかける立花さん。しかし、この口調は絶対にネコを被っていますね!
「いや~、こんなところで立花さんとお食事をご一緒できるなんて光栄~」
いつの間にか長谷川は、立花さんのいる場所まで移動していました!
「はやっ! 僕も急がないと!」
上へと上がるハシゴを注意しながら登ると、長谷川は図々しく立花さんの横に座ってパンを食べていました! あぁっ…、蹴り落としたい!

「立花さん、こんにちは」
僕は長谷川とは反対方向の立花さんの横に座ろうとしましたが、そこには茶色のぬいぐるみが置いてあったので、危険を回避するために、しょうがなく長谷川の隣に座りました。
「こんにちは、新谷さん」
立花さんに“新谷さん”と言われると、何か気持ち悪いです。だから、僕は危険も承知のうえ、立花さんに言いました。
「立花さん。僕の事は“和也”って言ってほしいな。そっちの方が、気が楽でいいから」
「えっ」
立花さんはちょっと顔を赤くして…、
「じゃあ…、和也君…、こんにちは」
何でそんなに恥ずかしそうに言うんでしょうか? 今までずっと僕の事を“和也君”って呼んでいたのに。
「じゃあ! 俺のことは“悠太君”って呼んでくれよぉ!!」
ちょっと興奮気味の長谷川。
「いえ…、私は長谷川さんって呼んだほうが…、好きですね」
「えぇっ!」
その言葉に何故か急に立ち上がる長谷川。
「長谷川…、どうかしたか?」
僕の声が聞こえていないのか、隅っこのほうに歩いて行く長谷川。
「お~い、落ちても知らないからな~」
スゥ~っと長谷川が息を吸い込んだ音が聞こえました。そして、
「女の子に初めて“好き”って言われたぁぁぁ~~!!!」
その悲しい叫びは、どこまでも響いていきました…。
「はぁ~、すっきりした!」
また長谷川は立花さんの横に座りました。それにしても長谷川…、お前は今まで一度も女の子に“好き”と言われたことが無いのか…、かわいそうに。…ちょっと待って…、僕も言われたこと無いッ!

「そうだっ、立花さんにも聞きたいことがあったんだよっ」
僕が長谷川の横で自己嫌悪に陥っているっていうのに、長谷川は立花さんにもあの質問をするつもりなのでしょうか?
「私にですか? (チラッ)…なんでしょうか?」
微笑みながら長谷川を見ていた立花さんでしたが、その質問を聞いた瞬間、一瞬僕の方を向いて、ギラッとした眼光を僕に突きつけたのは気のせいでしょうか?

「今日の朝、体育館で二人は何していたの?」
あぁぁっ、長谷川…、立花さんにお前絶対に消されるよ。僕に殺されていた方がきっと幸せだったのに…。
「今日の朝は、ここにいる親切な和也君に学園案内をしてもらっていたんですよ」
「えっ!? そうなんだ?」
はっ!? この返答の内容は…、僕が今日の朝、沢田さんについた嘘と同じ内容だ。シンクロしたよっ!
「私、まだこの学校に慣れていませんので、朝早く学校を散歩していましたら、和也君と偶然お会いして…」
「へぇ~、新谷、そうなのか?」
立花さんの返答が合っているか、長谷川は僕に尋ねました。
「そうなんだよ長谷川。何だか立花さんが不安そうな顔をしていたから、僕が心配して一緒に学校内を案内していたんだよ」
「(ピキッ) 和也君、今日は本当にありがとうございました」
“てめぇ…、なんで私が不安がっているんだよッ!?”と、一瞬、立花さんの額に“怒りマーク”が浮かびましたが、長谷川が立花さんの方に振り向くと、すぐにそれは消えていました。

「そっかぁ…、俺が案内したかったなぁ…! そうだっ、今日の放課後は空いてる?」
「すいません、放課後はちょっと用事があって…」
「がっくし、俺も学校案内をしてあげたかったなぁ…。新谷はいいよなぁ」
ナンパを諦めた長谷川は、黙ってパンを食べ始めました。

「とっても大事な用事なんです、すいません」
そう言うと立花さんもお弁当を食べ始めました。しかし…、立花さんが言うその大事な用事とは、恐らくっていうか絶対に僕を特訓することでしょうね。そう思ったら、急に食欲がなくなってきました。
「長谷川、このカレーパンあげるよ」
「おぉ! サンキュー。食欲無いのか?」
「うん…、何か急にお腹のあたりが痛くなって」
「そうか…、体調には気をつけろよ」
僕からカレーパンを受け取った長谷川は、嬉しそうにカレーパンを食べ始めました。
「では、私はそろそろ教室に戻りますね」
お弁当を食べ終えた立花さんは、弁当箱を布で包んで、横に置いておいたエシナを肩に乗せました。
「え~、もうちょっと話そうよ~」
長谷川が駄々っ子みたいな口調で言いました。しかし、長谷川がこんなナンパ男だったとは夢にも思いませんでしたよ。
「いえ、男二人の世界を邪魔しては悪いので。ではっ」

――――――ピョンッ

「えっ、飛び降りた!?」(長谷川)

――――――スタッ

「おぉ~」
感心している長谷川。僕は昨日の出来事で慣れているので、全然気にしませんでしたけどねっ。
「ごゆっくり~」
そう言った立花さんは、こっちに手を振るとドアを開けて行ってしまいました。
「あ~あ~…、行っちゃったぁ…。残ったのはむさ苦しい男だけかぁ…、はぁ~…」
「女の子じゃなくて悪かったな。はぁ~…」
同時に二人はため息をつきました。長谷川は、立花さんが行ってしまったことによる残念感で。僕は長谷川に嘘がばれなかったことによる安堵感でため息をつきました。

「おい新谷!」
「ど…どうした?」
長谷川がイヤに真剣です。
「お前に先は越されたが、俺がすぐに追いついてやるからなぁ!」
“ビシッ”と、指を指されながら言われました。
「何の話だ…?」
「いや、気にするな! そっちの方が俺にとっては好都合だ!」
食事を終えた長谷川は、すくっと立ち上がり、
「とうっ」
その掛け声と共に、先ほど立花さんが飛び降りたようにジャンプしました。。

――――――ダンッ

「~~~~~~ッッ!」
普通に痛そうです。
「くぅ…! お前には負けないからなぁ~!」
その捨て台詞を残して、長谷川もドアを開けて行ってしまいました。
「何だって言うんだよ、全く…」

僕は背中を後ろに倒し、ゴロンと横になりました。
「いい天気だぁ…」
コンクリートの地面はひんやりと冷たく、頬に当たる風はほんのり暖かいです。しばらく横になっていると眠気がじわりじわりと忍び寄ってきましたが、妙な音で眠気が逃げていきました。
「何の音だろう…?」
耳をすましてみます。

――――――シュィ~ン…

「お~イ、かずヤ~!」
この声は…、
「ヴぇス君!?」
「そうだヨ~」

――――――シュィ~ン…

「どこ!? どこにいるの!?」
「わかんなイ~?」
ヴぇス君の声はするけど、肝心の姿がどこにも見当たりません。モーター音が聞こえるだけです。
「じゃア~、ヒント~」
「ヒント?」
「えイッ!」
刹那、
「ッ!? ギャァァ~~~!! 耳っ、耳が痛い!!!」
激痛です! 
「痛い! 痛すぎる!! いったい今のは何!?」
右手で自分の耳を急いで触ります! しかし、その痛みは外部からではなく、僕の耳の中、すなわち内部からの痛みでした!
「僕は今ネ~、かずやの耳の中にいるノ~」
「なっ、なんだってぇぇぇ~!?」
意味が良く分かりません!
「どういうこと!? ヴェス君、ちゃんと説明して!!」
「わかっタ~」
僕の耳の中では相変わらずモーター音が響いています。

「僕の“バリティー”の“チャラック”でモデルテェンジしたんだヨ~」
「え!? “チャラック”って、昨日みたいに飛行機やダンプカーに変形するアレ?」
「そうだヨ~」
「一体何に変形したの!?」
「聞いて驚くなヨ~」
「早く言ってよぉ!」
ヴェス君にジラされると、何だか興奮してしまいます!

「しょうがないナ~。僕は今ネ~、小さくなって体内に侵入できる“ナノマシン”に変形したんだヨ~」
「おぉ~、何だかカッコイイね!」
「そうでしョ~」
「あははっ」っと笑い合う僕達。穏やかな空気が場を包み込まれていきます…、がっ!

「ごめんネ~、かずヤ~」
「ん? どうしたの、急に謝ったりなんかして?」
ヴェス君の様子がおかしいです。
「先に謝っておくネ~」
「何が!? とっても嫌な予感がするんですけど!!」
空がどんどん黒ずんでいきます。
「僕は渚に命令…、頼まれただけだからネ~」
「やめて! よく分からないけど、とにかく止めてぇぇぇ~~~!! 僕とヴェス君の仲でしょ!?」
僕の右耳から、微かな虹色の光がこぼれ始めました。
「乗り物するだけじャ~、つまらなイ~。たまには乗り物に乗りたいナ~」
次の瞬間、僕の目、耳、鼻、口から虹色の光が放射されました。(ピカァァァ~~~っと)
「運転するバリティー“ルマニカル”!!!」
「うぎゃぁぁぁ~~…」

――――――バタッ!

(後日談)
痛みは無かったです。僕の体が温かい水の中に浸されているような…、そんな気持ちい感覚が僕を包み込みました。そして、子守唄を歌われて、安らかに眠りにつく赤ん坊のように、僕の意識はゆっくりと遙か彼方へと飛ばされちゃったんだよね~。


”自分に厳しく、地球に優しく” 第13幕

第13幕  冷たい水の中で



びっくりしました。
何故かというと、体育館の外側の壁から突然「シュパ~ン!」と変なケーブルが飛び出て、またそれが「シュルン!」と出てきた穴に吸い込まれたからです。しかし、この光景には身に覚えがありました。
「おはようさん~。いや~、昨日は大変だったですなぁ~。なぁ~っはっはっはっ~~!」
どこからともなく変な大阪弁の声が聞こえてきます。僕は神経を集中させ、どこに本体がいるか探ります。
「(ピキーン) そこだぁッ~~~!」
僕が蹴った場所は体育館の外壁のある一部。するとどうでしょうか。その場所が微妙にへこみました。
「アイタァ~!!! いつの間にそんな能力を身につけたんや、あんさん!?」
僕の目が赤く光り。
「我の、ち、カラ、の、源、は、憎し、ミ」
「怖いわぁ! もう怒らんといてぇなぁ~! ホンマすいませんでしたぁ~~~!!!」
優しい僕は、これぐらいで勘弁してあげます。
「ところで、何しに“ソム”へ行くんや?」
「さっきも言ったでしょ。…BDMを和也君にやらせようと思ってね」
「なんやてぇぇぇッッッ~~~!!!」
わざとらしい驚き方が僕をムカムカさせます。それにしても、

「BDMって何?」
その言葉に立花さん達は“ピクッ”と動揺しましたが、僕の問いに別に答える様子もなく、何故か、遠くを見ながらわざとらしく口笛を吹き始めました。
「えっ、なに!? みんな急にどうしたのッ!?」
「BDMって言うのわな」
「シパン!!」
説明しかけていたシパンを、立花さんの大きな声が遮りました。
「ケーブルを引きちぎるわよ?」
「ひぃぃぃッ~~~!! なんでもあらへんよ、あんさん!!!」
とっても怪しすぎるので、僕はこの場から速攻で逃げようと思いました。外に置いておいた鞄を手に持ち、いざダッシュで逃げようとした時、
「ワイは悪くないでなぁ~~~! 怒らんといてぇなぁ~、あんさん~~~!」
先ほど出現した穴から、ケーブルが“ニュルンッ”と出てきて、逃げようとしていた僕に向かって襲い掛かって来ました! シパンの仕業です!!

「ふっ、シパン…。今の僕にはコレぐらい難なくかわせる!」
このぐらいの攻撃は簡単にかわせると思いました。しかし、
「ふっ、甘いぞ和也! 惑わすバリティー! シシルチエ(木の葉牢獄)!!」
エシナの体が虹色に光ったかと思ったら、エシナの口から落ち葉が“ドバーッ”と出てきて、僕の周りを囲みました。
「うわぁッッ~~! 何も見えない~~~!」
「エシナはん、ナイスサポートやで!!」
「さっさとヤレ!!!」
「おおきに!!」
僕の微かな抵抗も虚しく、何気にタッグを組んだエシナとシパンには敵いませんでした。
ソムへの入り口であるケーブルに無抵抗で吸い込まれていく僕。薄れていく意識。そして、眩いばかりの光。

――――――シュッポ~ン!!

「うわあぁぁああぁぁッッ~~~!!」
「ええぇぇええぇぇぇッッ~~~!?」

――――――ドカッ!…ドスッ!

前にもあったようなこの展開。
痛みに苦しんでいる僕の体の下で、僕と同じように悶絶していたのは、立花さんのお父上である“まもるさん”でした。
「いたたた…、おぉッ! 君は和也君じゃないか! おはよう!!」
「おはようございます、まもるさん! 今日も元気ですね!」
はっ! 僕は気が付いちゃいました。今の状態は僕がまもるさんを芝生に押し倒しているということに! そして、僕と同じ様なことを感じ取ったのか、まもるさんの顔も赤くなっていきました。
とってもいいムードで見つめ合う僕とまもるさん。そして、二人の瞳は潤んで行き、
「キモイんだよボケェがぁッ!(ドゴッ!)」
「ゲフゥッッッ~~~!!!」
いつの間にか、僕の横にいたエシナに横からアッパーを食らった僕は、血反吐を吐きながら空に向かって飛んで行きました。僕は、かろうじて目を見開いて僕の着陸予定地を見ました。でもそこは、
「プール!?」

――――――バッシャァ~~~ン!

「ばんばぶぅーぶばっ!?(なんでプールが!?)」
でも、そんなことを考えている場合ではありません! 
「ぶはぁ! さぶっ! 寒すぎるぅ!!!」
あまりの寒さにガチガチと体を震わせてしまいます!
不運にもプールの底はとても深く、足を動かさなければ沈んでしまいます! あまりの寒さに体が急速に痺れてきたので、僕の体は溺れるまでの、ワン! ツー! スリー! っと、カウントダウンを開始してしまいました! 
プールのそばでは、そんな僕をせせら笑うエシナがいます。そして、その隣で興奮しているまもるさん。さらにその横で、いつの間にかこっちに来ていた立花さんが、何故かプールの反対側を向いてヴェス君と遊んでいます!!
「みんな助けてよぉ! 凍えて動けない!!」

僕が叫んだその時です。
「てりゃ~~~っ」
突然現れた可愛い声。変ですね、僕の気のせいじゃなければ、今の声は僕の頭の上の方から聞こえたような気がします。僕はその声の主を確かめようと顔を上げ、

――――――ドッバシャァ~~~ン!!!

「うわあぁぁぁッッ~~~!!」
すぐ横で突如発生した大波に、飲み込まれてしまいました。状況がつかめない僕は、そのままプールの岸に“ドッパ~ン”と打ち上げられました。
「た、助かった…」
少し飲んでしまったプールの水で気持ち悪くなったけど、僕は大丈夫です。たくましく生きていますよ。プールに全てのエネルギーを奪われ、よぼよぼのおじいちゃんみたいになったけど、僕を死の境地から救ってくれた波が発生した場所を恐る恐る見ました。

「大丈夫ですかぁ~?」
プールのほぼ真ん中にいたのは、僕に向かって大きく手を振っているとても小さくて可愛らしい女の子でした。僕は何が起こったのかわからず“ポカーン”としていると、その子は茶色のショートへアーをかきあげ、それからこっちに向かってバタ足で泳いできました。

「汐(うしお)ちゃ~ん、いい飛込みだったよ~~~!」
まもるさんは嬉しそうにその女の子に手を振りながら、プールの傍までやってきました。
「ぷはぁっ、ねぇ、パパッ!」
その女の子はプールの端まで泳いでくると、顔を水面から上げました。見た感じ、まだ小学5年生ぐらいでしょうか。
「僕、この人の命を救ったのよっ! すごいっ? すごいっ?」
「うん、でも今の場合は助けなかったほうがウケルけどねっ」
「もうっ、パパったら!」
まもるさんが手を差し出すと、その女の子はその手を掴みプールから上がりました。
「えっ? まもるさんがパパって…」
全く状況を掴めていない僕の顔を覗き込んだその女の子は、
「初めまして! 僕の名前は、立花 汐(うしお)って言います! 渚お姉ちゃんの妹ですっ! 今日はいい天気ですねっ!」

清々しい挨拶をしました。その時の、汐ちゃんの満面の笑顔といったら、世界中のどんな悪党の心をも癒してしまうことこと間違い無しです!
「こちらこそ初めまして! 僕は立花さんのクラスメートで新谷 和也って言うんだよ! 汐ちゃんっ! 僕のことは“和也お兄ちゃん”って呼んでねっ!」

――――――殺気ッ!?

気が付いた時には、僕は立花さんとエシナによる合体攻撃“局部一点集中攻撃”を受け、まるで人間大砲で発射されたかのような凄まじい勢いで空中へ飛んでいきました!
「和也君。死んでぇっ~!」(立花さん)
「わぁっ、和也お兄ちゃんが飛んでる~っ!」(汐ちゃん)
「飛べない和也はただの和也だ」(エシナ)
「エシナさんって本当に面白いですよねっ!」(汐ちゃん)
「汐ちゃ~ん! 和也お兄ちゃんって呼んでくれてアリガトォ~!? って、またプールだぁ!!」(僕)

――――――ドッバッシャァ~~~ン!

「だぁぶはぁっ! たっ、助けてぇっ~! 汐ちゃ~ん! プリーズゥ!!」
また、先ほど味わった凍え死にそうな寒さに襲われました。
「サブイよ~! 何で汐ちゃんは平気だったの!?」
こんな南極の極寒の海のようなところで、汐ちゃんは何故ケロッとしていられるのでしょうか!? 鈍いんでしょうか!?
「だって、僕は“人命保護執行人”になるために、あらゆる状況でも人命を救うことが出来るように修行したんだもんっ! すごいでしょっ?」
「こらっ、汐! まだ汐は“人命保護執行人”になるための修行中でしょ! まだ見習いよ、あなたは」
立花さんがちょっと怒ったような、ちょっとお姉さんみたいな、そんな感じで汐ちゃんの柔らかそうなほっぺたを軽くつまみました。
「はぅぅぅ…、ごめんなさい渚お姉ちゃん」
汐ちゃんが「えへっ」と自分のおでこに、丸めたコブシをコツンと当てました。

「“人命保護執行人”!? それはたいしたもんだよ汐ちゃん! だから、さっさと僕を助けに来てもらえないかなっ!?」
そろそろ僕は限界です。もうプールの底に沈みそうですよ! 死んじゃいますよ!!
「ごめん和也お兄ちゃん…、僕もう疲れちゃった…」
「えぇっ!?」
汐ちゃんはその場にペタリと座り込んでしまい、突然泣き崩れてしまいました。
「うっうぅ…、体が動かないよぉ…! もう誰も…、死んでほしくないのにぃ…! そう、アレは…、まだ僕が6歳のとき…」
「ちょっと待って! 何で今この緊急事態に回想シーンに突入するの!? 僕がもうすぐで汐ちゃんの回想シーンの1場面に追加されちゃうってのにッ!?」
「和也お兄ちゃんって面白い人ですねっ!!」
元気良く飛び跳ねる汐ちゃん。
「うん、ありがとっ! って、早く助けて!! 汐ちゃん元気じゃんっ!」
「和也~、助けてやろうか~?」
「えッ!?」
エシナが、にこやか~な笑顔でこちら見ています! くそっ!
「本当に!? 本当に助けてくれるのッ!?」
もう助けてくれるなら誰だっていいです!
「条件があるがな」
「わぁ~、エシナさんが悪人の顔になってるぅ~」
汐ちゃんが「キャッ、キャッ」と嬉しそうに騒いでいます。

「でもエシナさん…」
あれ? 急に真剣な口調になる汐ちゃん。
「和也お兄ちゃんは僕が助けるから大丈夫だよっ」
汐ちゃんはそう言うと、プールの中に飛び込みました。あっという間に僕のところまで泳いで来た汐ちゃんは、僕の腕を自分の肩にまわしました。
「遅れてごめんねっ、和也お兄ちゃん」
「汐ちゃん~…」
僕は汐ちゃんの優しさに涙してしまいました。
「余計なことをっ!」
向こうでエシナの悔しそうな声が聞こえました。

「エシナ」
「ん? どうした渚?」
立花さんは何故かエシナを抱きかかえました。
「上」
「上?」
僕もその言葉に顔を上げ、上を見ました。
目に映ったもの…、それは、とっても高い飛び込み台…。なるほど、さっき汐ちゃんはあんなに高いところから飛び込んだのですか。
「ん? アレは…」
良く見ると、その飛び込み台には黒い影が。
「あぁ…!」
突然、震えだす汐ちゃん。
「汐ちゃん、どうしたの!?」
「怒られる…」
「えっ!?」
そして、

――――――「何をやっているのですかっ!!!」(?)

遙か上空で轟く轟音。僕と汐ちゃんは同時にビクッと肩を震わせました。

――――――「今、そちらへ参ります!!」

黒い影が空中へ身を投げ出し、こっちに落下してきました!
「また新キャラかッ!? いいキャラでありますように!!」
僕は心の中の神様に心から祈りました。

――――――ドッバッシャァ~~~ン!

「うわあぁぁぁあああぁぁぁ~~~」
「きゃあぁぁぁあああぁぁぁ~~~」

落下してきたソレは、僕達の横に墜落し、その衝撃によって発生した波に、今度は僕と共に汐ちゃんもプールの岸に、「ばっしゃぁ~~~ん」と打ち上げられてしまいました。
「ごほっ、ごほっ、一体何が?」
プールの中央を見てみました。
「あぁっ! あれはっ」
なんと! プールの中央にはエシナとは違う、白い色のぬいぐるみが水面の上に立っていました!

「汐さんッ!」
その声は汐ちゃんに向けられたものでした。
「はいぃ…」
自信なさげに返事をする汐ちゃん。
「自分が今、何故怒られているか分かりますかッ?」
そう言いながら、水面を歩いてこっちに向かってくる白いぬいぐるみ。
「それは…、僕がすぐに和也お兄ちゃんを助けなかったから…」
「その通り!!」

そのぬいぐるみは倒れている僕達の前に来ると、じっと僕を見ました。
「見なさい! この一般市民がこんなにも衰弱しているのを! もう一歩遅かったら凍死していたかもしれないのですよッ!」
「だって、和也お兄ちゃんが助けなくてもいいって…」
「いや、言ってないから! 突然何を言い出すのッ!?」
「と・も・か・く、減点1点です!」
「えぇ~~~」
がっくりとうなだれる汐ちゃん。
「汐さん…、あなたは“人命保護執行人”になるのでしょう? だから、この私が貴女を立派な“人命保護執行人”にするために、厳しい修行を受けさせているのですよっ」
「まぁまぁ“ドトロちゃん”…」
まもるさんが会話の中に入ってきました! 
そして、僕はふと気が付きました。今、まもるさんが言った“ドトロ”というある有名なキャラクターのことを! 良く見てみると、このぬいぐるみはそのキャラクターにそっくりです! 色は違いますが…。

「汐だって真面目にドトロちゃんのキツイ修行を受けているんだろう? だったら、もうちょっと汐のことを信じてやってもいいじゃないか。それに汐は、ちゃんと和也君を助けようと頑張ったじゃないか」
まもるさんがまともな事を言っているッ!? ありえないぃッ!!
「それもそうですが…」
まもるさんの言葉にそのぬいぐるみは言葉を詰まらせました。

「汐ちゃん、僕は期待して待っているからね。頑張って立派な“人命保護執行人”になってね」
汐ちゃんの頭を撫でるまもるさん。そして、まもるさんの胸に抱きつく汐ちゃん。なんて微笑ましい家族の光景なのでしょう! 僕は感動して胸がときめいています!
「さて…、私はこの一般市民を治すとしますか」
ドトロと呼ばれるそのぬいぐるみは、凍えて動けない僕の体の上に両手をかざしました。
「えっ、何をするの!?」
「大丈夫だよ、和也お兄ちゃん。じっとしていて」
その汐ちゃんの言葉に安心した僕は、何が起こってもこの場を動かない決意をしました!

パアァァッッっと微かに虹色に光っていく僕にかざされた両手。
「暖かな光と共に…。治療するバリティー“アータート(癒しの光)”!!」
かざされた手から、虹色の光が僕に向かって照射され、僕の体を虹色の光が包み込みました。
「うわぁぁぁ…、なんだかとってもいい気持ち…」
温かい湯船に浮かんでいるような感覚に包み込まれました。僕の体と心が徐々に温かく癒されていくことを感じます。
「いいなぁ、和也君…」
立花さんが何故かぼやいています。
「そろそろいいでしょう」
ドトロさんは僕にかざしていた両手を引っ込めて、僕の顔を覗き込みました。
「気分はどうですか?」
まるでお医者さんに診断されているようです。
「はい、大丈夫だと思います…」
ゆっくりと立ち上がり、そして自分の体を軽く動かしてみました。
「全然だるくない…、むしろ体が軽いくらいだよっ! こんな気分は初めてだッ~!」
服も乾いています! 僕は「あはは~」とその場でクルクルと回転してしまいました。
「ありがとうございます、ドトロさん!」
「礼には及びません。当然のことをしたまでです」
なんてドトロさんはクールなのでしょうか! 惚れてしまいそうです!

「おい、ドトロ」
「その声は…、エシナさんですか」
エシナがドトロさんに話しかけています。
「相変わらず、そのお節介な性格は治っていないんだな」
「大きなお世話です」
エシナの言葉に少しムッとなるドトロさん。何だか仲が悪そうです。
「それにしても、何故、一般市民が“ソム”にいるのですか?」
「えっ!?」
僕は、今ドトロさんが言った言葉があまりよく理解できませんでした。
「ここが“ソム”だって? でもここ、空だってあるし…」
そうなのです。ここが“ソム”な訳がないです。ソムと言うのはあの研究所のことではなかったのですか?
「和也君。あの空はただ天井にモニターが貼り付けられていて、そこから空の映像を流しているだけなのよ」
僕は立花さんのその話が信じられなくて…、
「じゃあ、ここはどこなの!?」
まもるさんに答えを求めました。
「ここは間違いなく“ソム”だよ。“ソム”と言うのはだね和也君…。萩原山の内部にある“町”のことを言うのだよ」
「えぇぇぇッッ~~~! ここって、山の中なの!?」
仰天びっくり摩訶不思議です! ここが山の中だとはッ!
「びっくりした? すごいでしょ」
立花さんが「にこっ」と微笑みました。
「うん、すごいよ。本当にすごいっ」
僕はたび重なるすごい出来事に驚きっぱなしです! 

「じゃあ、あの大きなの家は立花さんの家?」
「そうよ」
今、気が付きましたが、僕達がいるこの場所はとても大きな庭だったのです! 大きなプールがあり、しかもきれいな芝生に覆われていて、さらにパラソル付きの寝られる長い椅子まであります。そして、向こうに見えるのは、真っ白な大きな家。
「まもるさんってお金持ちだったんだぁ…」
「いや、違うよ和也君」
まもるさんが僕の肩を掴みました。
「これは全部…、タダだ!」
「タダッ!?」
この、誰もが憧れるような凄い家がタダですと!?

「全部、“創造”担当の“カリス”に作ってもらったんだよ、えっへん!」
また新キャラ登場ですか!?
「“アート”って何でもありですね!」
「僕が天才だから成せる業だよ! はっはっはっ」
「その“カリス”って言う“アート”も誰かのパートナーなんですか?」
「そうよ」
立花さんが僕の前に歩み寄り、
「和也君が無断で借りていたその白衣の持ち主がカリスのパートナーよ。名前は石川 勇人(いしかわ はやと)さんと言って、私は「いしかっちょ」って呼んでいるわっ。ちなみに、いしかっちょは“文明開発執行人”でもあるんだからっ!」
何故か立花さんは誇らしげです。
「えっ、そうなの! すごい偶然!? それに文明開発執行人っていうのもスゴそう!」
僕は、今持っている袋を空け、中に入っている白衣を見てみました。そして思いました。
…ということは、ここにいる人たちはみんな“アート”のパートナーがいるってことですか!? いいなぁ~! 羨ましいよッ! 僕もほしいですっ!!

「汐さん、そろそろ学校に行く時間ですよ」
ドトロさんが腕に付けている腕時計を見て言いました。
「あっ、いっけな~い! もうそんな時間なんだ!」
汐ちゃんは駆け出し、
「じゃあね~、和也お兄ちゃん。またね~」
「それでは失礼します」
ドトロさんと一緒に向こうの家まで走って行ってしまいました。
「汐ちゃんって、何年生なの?」
「小学5年生よ」
「和也君、汐ちゃんには手を出したらダメだからねっ」
その意味ありげなまもるさんのお言葉に、
「大丈夫ですよ、まもるさん。汐ちゃんには絶対に手を出しません! 任せてください!」
はっきりと自分の意思を示しました。
「期待しているからねっ」
ぎゅっと握手を交わす僕とまもるさん。
「二人とも…、変なことを考えているんじゃないでしょうね?」
立花さんが僕とまもるさんの肩をガシッと掴みました!
「ん? 何も考えていないよ渚ちゃん。それよりも、ほらっ」
立花さんの握力から“スルッ”と抜け出したまもるさんは、自分の腕時計を立花さんに見せ、
「そろそろ渚ちゃん達も学校に行く時間じゃないのかな?」
と、僕達にとって重要な情報を提示してくれました。
「そうだよっ、早く学校に行かないと!」
僕はシパンが恐れた“BDM”という意味のわからないモノから逃れるために、立花さんの説得を試みます。
「でも、和也君の修行が…」
立花さんは何だか悲しそうです。
「学校が終わってからでもできるぞ、渚」
オイッ! なんて事を言ってんだよツ! このぬいぐるみがぁ!!(心の叫び)
「ん? 何か言いたそうだな、和也」
さすがエシナです。僕の訴えを第6感で感じ取ったのでしょう。
「そうよね。学校が終わってからでも、修行なんていつでも出来るわねっ。そうと決まったら、早く学校に行くわよ!」
「よかった! 僕の寿命が少しだけ延びた!!」
気合いを入れなおした立花さんは、ポケットから携帯を取り出すと、

――――――ピッ、ポッ、パッ、トゥル~、トゥル~、ガチャッ

「もしもし、シパン? えっと…、さっき繋いだゲートの学校側の出口をちょっとズラしてもらえないかな? うん…、学生に見つからないようなところにね。じゃあ、よろしく!えっ? 和也君? いるわよ…、話したい? 分かったわ。和也君、はいっ」
僕に手渡される立花さんの女の子らしいピンク色の携帯。
「もしもし…?」
僕は恐る恐る携帯に耳をつけました。
「おおぉぉッッ~~~! 生きとったかぁ~、あんさん! いや~、すごいで~、ホンマにすごいでぇ~。まさか生きとるとは夢にも思わなかったで! さすがワイの相方や!!…えっ? まだ“BDM”をしていない!?……………」

――――――ガチャっ…、ツーッ、ツーッ…

「ちょっと待てや! 何で切るんだよっ! せめて“BDM”が何の事かだけでも言えよ! 不安で死にそうぅ~~~!」
ちょっぴり涙で視界が見えづらくなりましたが、僕はちゃんと立花さんに携帯を返しました。
「さぁ、学業学業~」
「渚…、もう自分の力で答えろよ」
「わっ、分かっているわよ! ふんだっ」
そう言うと、立花さんはさっき僕達が出てきた穴に飛び込んでいってしまいました。
「まっテ、まっテ~」
その後を追うヴェス君。
「エシナ…、何のこと?」
僕は立花さんの様子がおかしくなったので、何かあるなぁと思いエシナに尋ねました。
「ん? 秘密だ♪」
そして、エシナも穴に飛び込んでいってしまいました。
「もう! 秘密が多すぎるよっ!」
僕もみんなの後を追いかけようとしましたが、
「あっ、まもるさん」
「なんだい、和也君?」
そういえば、洗濯した白衣を持ってきているのを忘れていました。
「コレを“石川さん”に返しておいてもらえないですか? それと、“勝手にお借りして申し訳ございません”と」
「わかったよ。絶対にコレも言葉も届けるよ」
「ありがとうございます。では」
ペコリとお辞儀をして、僕も学校へと繋がっている穴へ飛び込みました。



――――――「礼を言うのは僕の方だよ…」(まもるさん)


”自分に厳しく、地球に優しく” 第12幕

第12幕  朝練



2009年5月24日は、僕にとっては最低の日でしたよ…。これが本当の「最低」だと僕は思います。昨日も最低だったけど、今日も最低だったよ。最低レベルをランク別にすると、今日は17最低だったね。あっ、ちなみに昨日は15最低だったよ…。

僕の名前は新谷和也。私立萩原中学校の2年生です。5月24日のAM:6時に起床しました。

――――――全身、汗だくで!

まぁ…、理由は簡単ですよ。何故なら、美鈴がわざわざ早起きして僕の腰の上に大量のお灸を置いていったからだぁッ~~!(キレ気味)
全身汗だくで、ものすごく熱いですが、それを除けば腰の筋肉は喜んでいることでしょう。
何故、美鈴が犯人だと分かったのか。理由は簡単です。何故ならドアに、

バカ兄貴の健康法

というお札が張ってあったからだァァッッ~~~!!(マジ切れ)

「美鈴ゥゥッ~! ナニさらしとんじゃいぃぃッッ~~!!」
さすがの僕も堪忍袋の緒が切れましたね。ブチキレマシタネ。
急いで立ち上がろうとしたけど、腰に大量のお灸が置いてあるので無理でした。もし、今立ち上がると、お灸の火がベットとかに引火する可能性があります。
「さすが僕の妹だ。なんてトラップを考えるんだ」
何気に感心してしまいましたよ。って、この状況をどうやって脱出すればいいのでしょうか? 火が消えるまで待たなければいけないのでしょうか?
ふと、携帯に目が行きました。時間を確かめると6時2分でした。そして、メールが来ていることに気がつきました。
「あっ、立花さんからだ」
心臓の鼓動が急に早くなりました。女の子からメールが来たのは僕の人生で初めてだったからです。
「ふぅ…、落ち着け僕。…よし、見るぞ」
気持ちを落ち着けてから、メールを見ました。メールには次のような内容が書かれていました。

和也君へ
明日の6時30分から学校の体育館で修行をするので、遅れずに来てね。
                                       」
この時はまだ寝起きだったので、このメールの意味が良くわかりませんでした。しかし、それから時間が経つにつれて徐々に意味が分かってきました。
「修行ッ!? っていうか、このメールに優しさのカケラも感じねぇ!!」
このメールで立花さんがどんな女の子かがよ~~~く分かりましたねっ。
「6時30分って…、早く行かないと間に合わない!」

とりあえず、どうやって起きればいいんでしょうか? 腰のお灸をどうにかしなければ!
「くっそ~、美鈴め! 覚えてろ!」
僕はゆっくりと体を動かし始めました。そして、お灸を落とさないように気をつけてベットから降りて、ホフク前進で移動しながらドアを開けました。
「うぅっ、熱いよぉ…」
必死に熱に耐えながら、階段を猫みたいに慎重に降りて、靴も履かずに外に出ました。
玄関先の道路まで出るともう安心です。

「うおぉッ~~りゃぁぁぁッ~~~!!」
一気に立ち上がり、腰にあったお灸を道路にぶちまけました!
「僕だって、やれば出来るんだよぉぉ~~~!!」
空に向かって叫んだあと、急いで家の中に戻りました。リビングに向かうと美鈴がテレビを見ながらご飯を食べていました。
「美鈴ゥゥゥ~~~!!!」
「あっ、バカ兄貴おはよう。って、朝からうるさいっ!」

――――――プッチ~ン…!

第46次新谷家大戦の勃発です!
「これほどお前を憎んだことは、今まで一度もないぜ!!」
「お褒めに預かり光栄であります、バカ兄貴ィィィッ~~~!」

今日は武器を使わずに、素手での戦闘が続きました。しかし、素手では分が悪く、遂に僕は美鈴のアッパーを食らってしました。
「グフゥッ!」
「トドメよ~~~!」
その時、僕の頭の中で何かがはじけました。(パァァァ~ンと)
迫ってくる美鈴の正拳。僕はとっさにあるツボを押してしまいました。
「きゃあぁぁッ~~~! う…腕が痺れて動かないわ! 何をしたのよ!?」
美鈴は腕を抱えて一歩後退しました。
「何、たいしたことではないさ、ちょっと軽く“褒章”を突いただけださ」
美鈴は今の僕には敵わないことを本能的に悟ったのか、
「くっ…、卑怯よバカ兄貴! 最低っ~~~!!!」
という捨て台詞を残して、家を飛び出していきました。
「勝った…!」
しかし、勝利の美酒に酔いしれている暇はありませんでした。
「あぁ! もうこんな時間だ!」
時計の針は6時20分を刺していました。僕は急いでご飯を口に注ぎ込み、歯を磨いて、顔を洗って、昨日洗って干しておいた制服を着て、同じく干しておいた白衣を袋に入れて、それを持って家を飛び出しました。

学校の体育館には、もう立花さんが腕を組んで立っていました!
「遅いわよ和也君! 3分の遅刻よ!!」
激しく疲れている僕に、立花さんは容赦ない言葉を浴びせます。
「そんなことを言っても、僕だって頑張ったんだから…」
学校までの道のりを、自転車に乗ってノンストップで走ってきたので、もうクタクタです。
「言い訳は無用よ。さぁ、さっそく始めるわよ!」
「え? 始めるってまさか」
「何を想像してるのよ! 修行よ! しゅ・ぎょ・う!!!」
立花さんに腕を引っ張られて、無理やり体育館に入らされました。

広い体育館の中の中央に、何か記憶に新しいぬいぐるみが一体立っていました。
「よく怖気づかずにここまで来たな和也!」
ここまで堂々としているむいぐるみは他に例がないでしょう。
「エシナ…、今日も偉そうだね」
ピクっとエシナの頬に“怒りマーク”が浮かびました。
「そうかそうか、和也はそんなに厳しい特訓を受けたいのか。うんうん…」
「いや、そんなこと一言も言ってないから!」

視線を体育館の隅に向けると、そこにはラジコンカーが壁を横走りで走っていました。
「お~い、ヴェス君~!」
それがすぐにヴェス君だとわかったので、僕の心の友であるヴェス君をこっちに呼びました。
「わーイ! かずヤッ~~~!!」
ものすごい爆音を轟かせながら僕の方に突っ込んでくるヴェス君!
「ちょっ…、ちょっと待っ、グエフゥッッ~~~!!!」
よりにもよって、ヴェス君は僕の命よりも大事なプレイスに突っ込んできました。僕はその場にうずくまり、この世のものとは思えない痛みにしばらく悶え苦しみました。
「かずヤ~、どうしたノ~?」
人の気も知らないで! でも、ヴェス君には悪気は無いんだということは僕には、よ~く分かるので、許しちゃいます!
「次からは普通に挨拶してね、ヴェス君」
「は~イ」

こんな感じで昨日のパーティーがまた編成されました。ピスタさん(黄色いヘルメット)を除いて。
「さぁ、早速特訓を始めるわよ!」
どこから取り出したのか、立花さんは竹刀を振り回していました。
「つかぬ事をお伺いしますが、その振り回している竹刀で、立花さんは僕に一体どんなことをするおつもりですか?」
立花さんの口元がニヤリと微妙に動きました!
「私が今からこの竹刀で和也君を襲うから」
「ストップ! ストップ! その続きストップ!!」
危ない危ない、もうちょっとで大惨事が起こっていました。
「じゃあ、私が和也君をボコるから」
「さっきとあんまり変わってないし!」
「じゃあ、どうしろっつんだよっ!」
「逆ギレ!? そうやって君は、自分の都合のいい方向に話を持っていこうとするんだねッ!」
「口答えしないでぇ!」

――――――ピッ!

僕の鼻の数ミリ先を、立花さんが横に振った竹刀が通過しました。
「かすった! 今、空気の刃が僕の鼻をかすったよ!」
「特訓って楽しいぃ…」
「目がすわっているよ立花さん! エシナ何とかしてぇッ~!」
しかし、そんな僕の悲痛な叫びも、
「はははっ、追いついてみろ~」
「ま~テ~」
と、追いかけっこをしているエシナには届きませんでした。

「くそっ! こうなったら…、こうなったら…!」
僕は一歩下がってUターン。
「逃げる!!」
そして、体育館の出口のドアまで一目散にダッシュ! 後ろからは「あははっ」と立花さんの声が近づいてきます。僕は急いでドアに手をかけました。すると、

――――――ガラッ!

っと、ひとりでにドアが開きました。
ドアを向こう側から開けたヤツ。それは、
「おっ、なんだ新谷か。こんな朝っぱらからどうしたんだ?」
長谷川でした。
「どどどっ、どうして長谷川がいるの?」
動揺しまくった僕の声を、少し疑問に感じた長谷川でしたが、
「ん? あぁ、俺はバスケの朝練だよ」
長谷川が持っているものを見てみました。なるほど、長谷川はバスケットボールを大事そうに抱えています。

「それよりもお前は何で、…ん? 新谷の後ろにいる女の子は…」
その時、僕の心臓を流れる真っ赤な血液が一気に激流と化し、足に集中してなだれ込んだので、僕は一瞬クラッと目眩がしました。
「あらっ、おはようございます。えっと…、長谷川さんですよね?」
僕はロボットみたいに首を“キリキリ”と後ろに回転させ、後ろで微笑んでいる堕天使さんを見ました。
「こんなに朝早くから練習なんて大変ですね(にこっ)」
立花さんの微笑みアタックに免疫のない長谷川は、あっという間にデレ~と鼻の下を伸ばし、
「いや~、そんなことないさぁ~、はっはっはっ」
と、自慢げに立花さんの術中にはまってしまいました~。
「バスケットの試合頑張ってくださいね」
僕の横を通過して、長谷川の元を訪れた立花さんは、長谷川の手を握り、嘘丸出しのエールを長谷川に送っていました。
「いや~、俺頑張っちゃうよ~。はっはっはっ」

あれ? 立花さんがさっきまで握っていた竹刀は?
その時、僕の頭に何かがパラパラと落ちてきました。何かなっと、ふと上を見上げてみると、
「えぇ!?」
体育館の天井に竹刀が突き刺さっていました!
「どうしたんだ新谷?」
「なななっ、なんでもないよ!」
「くすっ、変な新谷さんですね」
お前のほうが変だよ! っと言いたいですけど、そんなことを言ったら僕は原子レベルまで分解されてしまいそうです!!

「では、私達はそろそろ失礼しますね」
ペコリと長谷川にお辞儀をすると、立花さんは僕の腕をグチッと強く握って、体育館の外へ僕を連れ出しました。体育館の中からは、
「うおぉぉッ~! 練習ッ練習ッッ~~!!」
と、バカの声が響き渡っていました。
「どうするんだ、渚?」
いつの間にか外へ抜け出していたエシナとヴェス君が、立花さんの肩に飛び乗りました。
「う~ん、この場所はあの“ゴミクズ(長谷川)”に取られちゃったから、“ソム”で特訓しよっか?」
「それがいいな」
「そうだネ、そうだネ!」

早速、立花さんの頭の中で長谷川はゴミクズの地位を獲得したようです。しかし、今からソムに行くとなると時間がかかりすぎるような気がします。
「え? 今からソムに行くの? ちょっと時間が足りなくなるんじゃないかな」
僕は特訓を断る口実を見つけました。
「だからさ、今日の特訓はこのぐらいで終了ってことで…」
その時、立花さんは自分のポケットに手を突っ込み、携帯を取り出しました。

――――――ピッ、ポッ、パッ、トゥル~、トゥル~、ガチャッ

どこかに電話しているみたいです。
「もしもし、シパン?」
シパン…。その言葉を聴いたとき、僕の心は、憎悪。嫉妬、殺意、復讐と言った負のエネルギーに満たされました!
「うッ、ぎゃッ、ぎゃッ~~~!」(僕)
「和也が変な言葉を発し、且つ、変な黒いオーラを放っているぞ!」
「ん? とりあえず殴っといてエシナ。 それでねシパン…」
「正気に戻れ! オラァッ!!」
「ハブゥッ~~!!」
するとどうでしょうか。僕の体から黒い禍々しいオーラが抜け出し、それは空に向かって昇天していきました。
「危なかった! もうちょっとで僕は僕じゃなくなっていたところだった!! おのれシパンめ!!!」
人の憎悪とは、これほどまで恐ろしいものかということを、我が身を持って体感しました。
「そういうわけだから、さっきの座標にゲートを作ってね。もし、万が一にでもミスったら、ケーブルを思いっきり踏みつけるからね。うん…、そんなに怖がらなくても良いじゃない。じゃあね」

――――――ピッ!

「よかった、これで特訓が出来るわね!」
本日、最高の笑顔の立花さんがそこに居ました。
「エシナ…、僕が今日という一日を無事に過ごすことが出来る確率は?」
「0%だ」
涙が出てきました。



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